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ソフトバンクグループがイスラエル企業への投資に着手
日経新聞によると、ソフトバンク傘下の投資ファンド「ビジョン・ファンド」が、7月、イスラエルへの投資を増やす中、イスラエル諜報機関モサドの前長官ヨシ・コーヘン氏をアドバイザーとして招聘したことがわかった。コーヘン氏は、イスラエルだけでなく、アメリカの情報筋にも顔が効く大物である。
www.nikkei.com/article/DGXZQOGR28EJG0Y1A720C2000000/
近年、世界的にもイスラエルの、特にハイテク系のスタートアップ企業への投資が激増している。イスラエル経産省によると、イスラエルのハイテク企業への世界からの投資は、2015年は、34億3500万ドルであったが、2020年には、101億7800万ドルだった。GDPにおける投資の割合は、イスラエルが世界一である。
スタートアップ企業とは、農業技術、水技術、医療技術、自動車の自動運転など様々な実用性のある技術を開発する数人の天才技術者からなる会社で、その会社への株を買う形での投資を募ることで研究をさらに発展させ、やがて、大手企業に会社を売却することも多い。
イスラエル貿易事務所によると、イスラエルでは、こうしたスタートアップの会社が、毎年1000社ほど生まれており、現時点でも9000件ある。
イスラエルでは、国をあげて、こうした企業を支援しているので、研究しやすい環境も整っている。このため、Googleやマイクロソフトを含む世界の大手300社が、R&D(研究開発拠点)をイスラエルに置いている。これがまたスタートアップを育てる環境にあるともいえるだろう。
日本は、イスラエルへの投資には遅れをとっており、「眠れる巨人」などと言われていたが、近年、日本の大手企業からの投資が急速に増え始めた。日本からの投資は、2016年から20%も増えて、2020年の投資額は11億ドル(約1300億円)と、全世界のイスラエルへの投資の11.1%にのぼるまでになった。
こうした流れのなかで、ビジョンファンドが関わった投資では、センサータグを扱う会社ウィリオットが、2億ドル(220億円)と調達。また、AIの顔認証技術のエニービジョンは、ビジョンファンドからの投資を含め、2億3500万ドル(約250億円)を調達した。日経新聞は、ソフトバンクもイスラエルに照準と報じている。
東北・イスラエル:スタートアップ・グローバルチャレンジプログラム
こうした中、28日、東北地方とイスラエルが、スタートアップ・グローバルチャレンジプログラムが始まった。このプログラムは、東日本大震災の時に、イスラエルが医療部隊と世界に先駆けて派遣してから10年を記念して立ち上げられたもので、これからは、イスラエルの起業精神を学びながら、東北地方に、イスラエルのようなスタートアップの拠点を作ろうとするものである。
参加企業は、日本からはMAKOTOキャピタル、宮城県、東北大学、イスラエルからは、世界的に天才で有名な8200部隊の関連組織、MIT関連組織なども協力していくとのこと。主なプログラムは、イスラエルをメンターとして、セミナーが行われていく予定である。
28日のキックオフイベントでは、在日イスラエル大使館から、ベンアリ大使はじめ、イスラエルからはラピード外相、日本の茂木外相が、メッセージを送り、このプログラムへの期待を語った。また、イスラエルからは、起業のメンタリティのヒントとして、次のようなことがあげられた。
①柔軟に構えてあきらめないこと、②常に2段階先をみて考えること、③問題ではなくその解決に目をむける、④人を最も大事な財産を考え、人への投資を惜しまないこと。
参加していた日系企業からは、④について、予算をどのように捻出するかが課題だなどとの質問が出たりしていた。イスラエル人のメンタリティは、日本の文化とかなり違っているが、津波という大きすぎる苦難が、ある意味で、大きなリセットになり、新しく再スタートができるとも語られていた。
東北を訪問中の在日イスラエル大使館のベンアリ大使は、宮城県県庁も訪問。村井知事や、東北大学の大野総長とも会談している。
起業精神を、イスラエルから学ぼうとするプログラムが、東京ではなく、高齢化が問題となっている東北で始まっていることもまた新時代を表しているようである。