<中国政府:イスラエル最大の食品会社を買収>
22日、イスラエルの乳製品をほぼ単独で販売するイスラエル最大の食品会社テヌバの株56%を、中国政府が86億シェケル(2580億円)で買収したことがわかった。これは、日本でいえば、雪印の経営を中国政府に握られたようなもの。
中国では、国産の農産品に農薬や毒が検出されるなどで信頼が失われており、海外からの食品輸入が急激に伸びているのである。
しかし、テヌバは、これまでイスラエルの食料の中心的な役割を担ってきた会社である。元諜報機関長官のエフライム・ハレビー氏は、「食品は、常に自国で管理すべきで、外国にゆだねるべきではない。」と、イスラエルの治安問題に関わる問題だと警告している。
最大野党労働党のヤキモビッチ氏は、国の将来に関わるとして、この取引のキャンセルを求める発言をしている。
<ばく進する中国との貿易> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4522954,00.html
イスラエルの技術力を求める中国と、中国の膨大な市場を求めるイスラエルは利益が合致する。
19日、中国・北京の精華大学が、3億ドルを出資して、テルアビブ大学と共同の研究機関を設立することが決まった。すでに両国共同の産業パークも設立されており、計画は着々と進んでいるようである。
国レベルでも、昨年、ペレス大統領、ネタニヤフ首相が中国を訪問し、今年に入って、今週火曜、中国の経済関連の代表団がイスラエルの国会を訪問し、経済サミットを開催した。
ところで、中国とイスラエルが正式な国交を持つようになったのは1992年。以降、両者の関係は急速に接近し、両国の貿易は、ここ3年の間に0から40億ドルにまで跳ね上がった。
中国に市場が開かれれば、ヨーロッパのボイコットなど何の問題でもなくなる。ベネット経財相は、今後の経済政策について、「これからのイスラエル経済は、バンガロー(インド)、アフリカ、中国、中国、そして中国に移行する。」と、中国を強調する形で語っている。
<世界の先手を行く中国!?>
2003年、イラク戦争関連で日本を含む世界各国が、イラクに対する石油採掘停止などの措置をとっていた。その間に、中国とロシアはイラクの石油開発権をとりつけ、戦争が落ち着いたときにはかなりの利権を中国とロシアにさわれていたことがわかった。
今回も、イスラエルとパレスチナの和平交渉が頓挫したことを受けて、ヨーロッパがイスラエル(特に農産物)のボイコットを呼びかけている間の、テヌバの買収である。中国にとっては、パレスチナ問題などどうでもよいことなのだ。
今後についてだが、イスラエルの経済成長には効果が期待される。しかし今回、テヌバが買収されたことで、イスラエルの食料事情を中国に操作される可能性の他、重大な農業技術が、中国に流れる懸念も指摘されている。
以前、最新式のレーダーシステムを開発した企業が、中国に売却されようとして、アメリカ政府があわてて差し止めるという事態も発生したが、イスラエルの会社が、利益を優先しすぎて、国の存続に関わる契約を結ばないよう、とりなしが必要である。