ホルムズ海峡でのアメリカとイランの対立が緊迫を続けており、ヨーロッパ諸国や日本や韓国などアジア諸国も巻き込み始めている。こうした中、イランの傀儡であるヒズボラが、レバノン南部やシリア東部に部隊を増強し、イスラエルへの攻撃に備えるとも見える動きに出ているという情報がある。
今後、ホルムズ海峡での情勢によっては、ヒズボラがイスラエルを攻撃してくるのではないかと懸念されている。
<ホルムズ海峡をめぐる緊張>
ホルムズ海峡でのアメリカとイランの緊張拡大の経過については、この記事の最後にまとめたので参照いただければと思う。
最も最近では、19日、イギリス船籍(乗組員は全員イギリス人以外)タンカーがイランに拿捕された。イランは、このタンカーが、海峡通過時のルールに反していたとし、警告に従わなかったためと主張している。
しかし、イランは、先月、イギリスがジブラルタル海峡で、違法にシリアに原油を搬入しようとしていたイランのタンカーを拿捕したことへの報復とも言っている。これを受けて、イギリスはじめ、フランス、ドイツがイランを非難する声明を出した。続いてサウジアラビアも、イランを非難する声明を出した。
www.jpost.com/Middle-East/France-Germany-and-Britain-ban-together-to-condemn-Irans-actions-596261
www.timesofisrael.com/saudi-arabia-urges-global-action-against-iran-after-uk-tanker-seized/
続く22日、イランは、CIA(アメリカの中央情報局)のためにイラン国内でスパイ活動をしていたイラン人17人を逮捕し、一部には死刑宣告をしたと発表した。トランプ大統領は、ただちにこの17人と、CIAとの関連を否定する声明を出した。
www.bbc.com/news/world-middle-east-49074162
<アメリカの「有志連合」呼びかけで世界規模の対立へ>
アメリカは、ホルムズ海峡に部隊を派遣しているが、中東からの原油を必要としているわけではない。そのため、基本的に、タンカーを守るのは、アメリカではなく、それぞれの国であるべきとの姿勢を表明している。
アメリカは19日、ホルムズ海峡を経由して原油を輸入している60カ国の代表者を集め、アメリカとともに「有志連合」を結成し、地域の安全を監視するシステムを呼びかけた。外交的にもイランに圧力をかける目的があるとみられている。
日本も、この枠に入るため、19日の会合に出席。さらに今、ボルトン米大統領補佐官が来日しており、この件について話し合われたもようである。
日本は、イランからの原油を必要としていることからも、あまりイランを逆なでするようなことはしたくないところだが、日米有効関係からもこの構想に参加しないという選択肢はないと思われる。自衛隊派遣になるかどうか、安倍政権にとって非常に難しい決断になる。
*便宜置籍船システム
ホルムズ海峡を通過するタンカーだが、ややこしいのは、日本を含む先進国が、「便宜地船籍」というシステムを導入している点である。
便宜置船籍とは、自国のタンカーと自国民の乗組員ではなく、パナマなど、海運業により有利な条件を持つ国のタンカーと乗組員を雇うことである。大幅な節税や人件費削減ができるため、昨今、日本を含むほとんどの先進国がこれを採用している。
これにより、たとえば、日本のタンカーであっても、船はパナマの船であって、船員はパナマ人やフィリピン人などである。今回拿捕されたイギリスのタンカーも、スェーデン船籍で、乗組員は、インド人やロシア人、フィリピン人などの外国人でイギリス人はいなかった。
それでもイギリスのタンカーということになり、守るのはイギリスの責任ということになる。
www.jsanet.or.jp/seminar/text/seminar_047.html
元タンカー乗りのベテラン、片寄洋一氏は、ホルムズ海峡の危険性が高まれば、雇われ船員が、船を降りてしまう可能性を指摘する。すると原油が各国に届かなくなり、世界が混乱に陥るが、特に日本は、中東の原油に依存しているため、大きく影響を受けることになると警鐘を鳴らしている。
news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20190720-00134950/
<ヒズボラが南部(イスラエル国境)へ部隊を増強か>
Times of Israelが報じたところによると、複数のヒズボラ司令官が、イスラエルとの戦争に備え、レバノン南部、シリア西部のイスラエルとの国境に部隊を増強しているという。
アメリカの雑誌Daily Beastが伝えたところによると、ヒズボラの司令官”サミール”が、万が一イランが攻撃されたら、ヒズボラが、イスラエルへの攻撃を開始するといっていたということである。
イスラエル軍北部担当アミール・バラム大佐は、ヒズボラは、レバノン南部に武力設備を建築中だと指摘。ヒズボラは、レバノン住民の安全には興味がないので、イスラエルとの戦争になった場合、ツケを払うのはレバノン市民になると警告している。
www.timesofisrael.com/as-sanctions-choke-iran-hezbollah-said-deploying-for-war-on-israels-border/
*イラン・ホルムズ海峡危機の経過
(A:アメリカ陣営 I:イラン陣営)
5月2日:A)アメリカのイランの原油禁輸を発動
5月12日:I)サウジアラビアのタンカーをイランが攻撃か
6月13日:I) ホルムズ海峡近辺で、日本企業のタンカー含む2席が機雷による攻撃(イランか?)
6月21日:I) イランが、アメリカのドローンを撃墜。トランプ大統領、直前でイラン攻撃見送り
7月1日:I)イランが濃縮ウランの貯蔵量超過を発表
7月4日:A) イギリスが、ジブラルタル海峡でイランのタンカー(シリアへ原油密輸)拿捕
7月7日 I) イランがウラン濃縮上限を(3.67%)を超過 (20%に達すると核兵器に急速に到達)
7月9日 A) アメリカが有志連合(対イラン連合組織)結成を宣言
7月10日:I) イランが、イギリス船籍タンカー拿捕未遂
7月18日:I) イランがパナマ船籍タンカー拿捕 アメリカのドローンをイランが撃墜とアメリカが発表(イランは否定)
7月19日:I) イランが、イギリス船籍タンカー拿捕(2隻拿捕して1隻解放) アメリカが、ホルムズ海峡を監視する有志連合をよびかけ
7月20日:A) イギリス、フランス、ドイツがイランへの非難声明 サウジアラビアも。
7月22日:I)イランが国内にいるCIAのイラン人スパイ17人を逮捕(一部死刑宣告)したと発表 アメリカはCIAスパイについては否定
<石のひとりごと>
ホルムズ海峡の様子を見ていると、皆が戦争にはしたくないと言いながらも、後戻りできない状況に進んでいるようにみえる。
世界は大きく動いている。政治指導者の決断により、日本もまた国際的な対立や、戦争に巻き込まれていく時代である。国内だけでなく世界においても日本をうまく舵取りのできる人物が必須になっている。
こうした中、日本での参議院選挙での投票率は、50%を下回った。せっかくの選挙権を無駄にする有権者が半数以上にのぼったということである。また今回、れいわ新撰組が大躍進し、日本でも左派ポピュリズムが生まれたと注目されている。ますます内向きになっていくのではないかと懸念される。
あまりにも平和で、若干、過ぎたる個人主義が通る社会。超豊かな生活に慣れきっている私たち日本人が、次なる国際的な戦争に耐えうるだろうかと思わされる。