カタールからの支援金が、ハマスの意向に反して(?)貧民に行き渡り、今週金曜には、これまでのような大きな国境での暴動が発生しなくなったという新局面とも見える動きになっている。以下はその経過である。
<カタールからの支援金を断ったハマス:パレスチナ内部事情>
ガザ地区のハマスにカタールからの支援金1500万ドルが、キャッシュでこれまでに2回(昨年11月、12月)搬入されたことはお伝えした通りである。資金は、ガザで公的に雇用され、未払いになっていた市民へ給与(パレスチナ自治政府が支払いを拒否したため)として支払われた。
イスラエルは、このキャッシュの搬入を認めることで、毎週のように行われているガザ国境での市民による暴動と、それに対応する中でパレスチナ人に死者が発生するといった悪循環が解消されることを期待した。
ところが、ガザ国境での暴動はいっこうにおさまらず、イスラエル軍への攻撃もあり、イスラエル軍がガザ内部への攻撃を行わなければならなかった(パレスチナ人1人死亡)ため、ネタニヤフ首相は、1月分として、ガザへ搬入する予定であったキャッシュにストップをかけた。
しかし、その翌日イスラエルが、資金搬入再会を認めると、そのまた翌日の1月24日、カタールの使者がガザへ来た際に、今度はハマスの方で、カタールの支援を断ると発表した。
ハマスは、エジプトとカタール、国連によって、(この支援金が入ることで毎週金曜のデモを沈静化しようとする)なんらかの合意に持ち込もうとすることに反対するとし、デモは、目標(イスラエル領内への”帰還”)を達成するまでこれからも続くと発表した。
また、現金搬入を黙認しているイスラエル政府が、これを総選挙の選挙対策の一つに利用することを避けたいとも言った。
しかし、実際には、カタールからの支援金を受けることについて、ハマスは、ファタハやPFLPなど他のパレスチナ組織から、「パレスチナ人の誇りを売っている」とか、「アメリカとイスラエルにパレスチナを分断させることに加担している」などと、批判を受けていたのであった。
<カタールの1000万ドルが国連へ:国連から貧しい家族に配布>
ハマスが支援金を断ったため、カタールは、約1000万ドルの国連に資金を搬入。国連は、ガザの貧しい94000家族に、それぞれ100ドルを配布した。
これに加えて、カタールは、ガザの貧民への人道支援として、ハマスではなく、国連に2000万ドルを引き渡すとの覚書にサインした。この署名が行われたのは、エルサレムの国連本部であった。
カタールは、今後の3ヶ月、2月から4月まで毎月1000万ドルの貧民への配布を継続する予定だという。
国連の中東和平プロセス担当のニコライ・ミラデノブ氏は、ツイッターにて、これをガザの経済復興にとって大きな一歩と評価するコメントを出している。
カタールは、ガザ市民の人道危機に対し、1億5000万ドルを約束しており、これまで1500万ドルづつ2回、ハマスへ搬入された資金に続いて、これからの貧民へ国連から貧民へ配布される資金も、この約束支援金の中から配布されることになっている。
この配布の後の金曜2月1日、毎週の暴動に関する報道がない。ということは、少なくとも特記すべき大きな衝突がなかったということである。
ハマスが資金を断ったことで、イスラエルにとっては、よりよい結果になるという皮肉な流れになっているようにみえる。Yネットのエキスパートイシャイ氏もこれをイスラエルにとっての好転になりうると注目している。
<石のひとりごと>
ガザでは、食糧が不足しているのではないが、市民に資金がないために、食糧が買えないだけである。このために、ガザの人道支援においては、食糧ではなく、資金を市民に配布しているのである。
このほか、ガザの問題は、電気の不足により、水道、下水が十分に機能しておらず、衛生状況も危機的となっている。これは明らかにガザを支配するハマスの管理不備による人災である。
しかし、それでも人道危機であることには違いなく、そこからテロなどの暴力が発生するため、国際社会が支援に乗り出さなければならない。なんとも不条理なことである。
しかし、今回、ハマスが資金を断ったことで、最も貧しい貧民家族に資金が行き渡るシステムができ、金曜に暴動も報じられていないことは幸いであった。
イスラエルという国は、失敗も多く、神の裁きももっとも厳しく受けてきた。しかしその一方で、最終的には、守られ愛されている国であり、決して侮れない国であるということを再三思わされている。