先週、ネタニヤフ首相夫妻がインドを訪問し、4日間も滞在した。国内状況、首相不在自身の身辺ざわついていた中で、イスラエルを離れ、手厚い歓迎を受けて、首相夫妻にはちょっとした休憩になったのではないかと思われる。
インドは、先の国連総会で、エルサレムはイスラエルの首都と言っているアメリカに、日本と同様に反対する票を投じた。イスラエルとしては、残念なことであった。
しかし、インドのモディ首相は、ネタニヤフ首相夫妻を、自身で空港に出迎えるというサプライズ歓迎をした他、相当な国賓の歓迎式典を行い、タージマハールなどのツアーにも案内している。
インドとしてもイスラエルとの関係は維持したいところなので、機嫌をとったということかもしれないが、今回のネタニヤフ首相のインド訪問で、両国の関係は、かなり深まったといえる。
1)貿易拡大へ
今回のネタニヤフ首相のインド訪問の大きな目的は、両国の貿易を成長させることである。ネタニヤフ首相は、ビジネスマン130人を同行し、イスラエルの産物200のリストをモディ首相に手渡すなど、貿易の促進を図った。
イスラエルとインドの貿易収支は、現在50億ドル程度で、その中身はほとんどが武器関係とダイヤモンドだという。
訪問に先立ち、インドは、イスラエルの武器会社ラファエルに、5億ドルの対戦車砲の注文をキャンセルすると申し入れていたが、ネタニヤフ首相の訪問後、キャンセルを取り消し、再交渉を始めることとなった。
www.timesofisrael.com/netanyahu-says-500m-israel-india-arms-deal-back-on-the-table/
2)ムンバイ・テロ現場に遺族モイシェ少年訪問
インド訪問の最終日、ネタニヤフ首相は、2008年にムンバイで発生した同時たてこもりテロ事件の現場の一つとなったユダヤ教ハバッド派の施設を訪問した。
この事件は、インドのイスラム主義者らが、ムンバイの10箇所で人質を取り、最終的には170人以上の犠牲者と出した重篤なテロ事件で、ハバッド・ハウスでは、ラビ・ガブリエル・ホルツバーグとその妻リブカが犠牲となった。
この時、2歳であった夫妻の一人息子モイシェ君は、死亡している両親のそばに立っているところを、インド人ナニーのサンドラさんに発見され、救出された。両親を失ったモイシェ君は、サンドラさんとともにイスラエルの祖父母のところで暮らし、今に至っている。
今回、ネタニヤフ首相は、ムンバイのハバッドハウスを訪問する際、モイシェ君(現在11歳)を同行した。モイシェ君にとっては、両親が死亡した現場への9年後の訪問である。
モイシェ君は、現場で、命が助けられたことを感謝すること、ネタニヤフ首相が、約束を守って、ムンバイの現場に連れてきてくれたことを感謝する祈りを捧げた。現場には記念碑が準備されていた。
今回の訪問は、モイシェ君とその祖父母、サンドラさんも一緒であった。
<インド:モディ首相2月にアッバス議長訪問へ>
ネタニヤフ首相が帰国してまもなく、インドのメディアが伝えたところによると、モディ首相は、2月、パレスチナ自治政府のアッバス議長を訪問するという。
アラブ側との”バランスをとる”ことが目的とみられているが、イスラエルとの関係が深まったとしても、インドとしては、それとパレスチナ自治政府やアラブ諸国との関係とは別であるというスタンスである。
パレスチナ自治政府を訪問するということは、イスラエルを通過しなければならないのだが、その時にネタニヤフ首相との再会談があるかどうかは不明。
国連での動きも含め、いったいどこまでインドは友人なのか・・・と思わされるが、イスラエルはおそらくその上手をいっている。そんなことは、まったく驚きではなく、すべて計算積みであろう。
実直マジメ過ぎる日本人の頭には理解しがたい国際社会事情である。