2014年、シリア、イラクでは、ISISが登場し、イラクでは、バグダッドに次ぐイラク第二の都市モスルを含む広大な領域を奪っていった。これに対し、イラク軍とアメリカ、有志軍も加わって ISIS撃滅をすすめたことから、これまでにISISの支配域はかなり小さくなってきた。
この戦いの最前線で戦ったのが、イラク北部の自治区を持つクルド人勢力ペシャメルガである。クルド人たちは、最前線で戦うことで、クルド人勢力の支配域と影響力を拡大し、最終的にはイラクからの独立も目指していたとみられる。
しかし、クルド人は、イラクの他、シリアやイランなど多数の中東諸国に散らばって住んでいる。そのクルド人の国が独立するということは、中東全域に影響を及ぼしかねない事態である。
9月、クルド人たちが、独立への国民投票を行うと発表すると、イラク中央政府は、これを違憲だとして反対した。またクルド人とは歴史的に敵対してきたトルコ、イランがこれに反対する立場を表明した。
こうした中、9月25日、クルド自治区は、イラクから独立するかどうかの歴史的な国民投票に踏み切った。結果、92.7%が賛成票を投じ、クルド人たちは喜びに沸いた。
実際には、クルド自治区は、今も経済的にイラク中央政府に依存しており、海がないことから独立した経済の樹立も難しく、実際の独立は、すぐには実現しそうもない。しかし、独立支持者が90%を超えたという事実をもってイラク中央政府に圧力をかけるとみられる。
国民投票の後、イラク、トルコ、イランは、クルド自治区に対する経済の締め付けを始めたほか、軍事的な動きもあり、突発的な戦闘になる可能性も指摘されている。
headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171005-00000539-san-m_est
<クルド人とイスラエルの友好関係>
クルド人たちの多くはイスラム教徒だが、クルド人とユダヤ人とは友好関係にある。クルド人たちは、小さなイスラエルが中東で独立を実現させたことをモデルとしてみているという。
イラクにまだユダヤ人がいたころ、クルド人たちは、迫害にあっていたユダヤ人が自治区を通ってイラクから出国するのを助けた。一方、イスラエルも、ISISと戦っているクルド人勢力に対し、諜報活動など、さまざな分野で支援を行っていたと伝えられている。
イスラエルは、クルド自治区独立の国民投票を支持する立場を表明した唯一の国である。このため、国民投票の結果が出た際、一部のクルド人は、クルド自治区の旗とともにイスラエルの旗を振っていた。
今後もし実際に、イラク北部のクルド自治区が独立すれば、イスラエルは、シリア、イラク、イランという敵対国の中に足がかりを持つことになり、本国防衛の大きな防波堤を持つことになる。
トルコのエルドアン大統領は、「クルド人の独立で益を受けるにはイスラエルとアメリカだ。」と語った。またイランを公式訪問したエルドアン大統領と、イランのハメネイ最高指導者は、「アメリカが、中東にもうひとつのイスラエルを作ろうとしている。クルド人の独立投票は、地域への裏切りだ。」と非難した。
エルドアン大統領は、イスラエルのモサド(諜報機関)が、クルド人の国民投票を操作したとも非難したが、イスラエルはこれを否定した。なお、アメリカは、この独立投票については、地域を不安定にするとして反対する立場であった。
www.timesofisrael.com/us-seeks-new-israel-in-region-khamenei-says-of-iraq-kurd-referendum/
世界は今やどこから火をふくかわからないが、ここにも一つ発火点ができたようである。