機能不全の国連がハマス非難なしで即時停戦で可決:ハマスが歓迎を表明 2023.10.28

Friday, Oct. 27, 2023 at UN headquarters. (AP Photo/Bebeto Matthews)

<機能不全の国連安保理:解決案出せず>

国連安保理(15カ国)は、唯一兵力をも動かせる機関だが、近年、アメリカとロシア、中国の対立の結果、そのいずれかの国が拒否権を行使するので、なにも可決できないという、機能不全に陥っている。

イスラエルとハマスの戦争では、イスラエルでは1400人、ガザでは7000人(ハマス主張)を超える死者が出、ハマスに捕虜になっている人は、子供30人を含む220人以上にのぼっている。しかも捕虜たちは二重国籍なので、イスラエルだけでなく、少なくとも25カ国が関係する国際問題になっているのだが、なにもできない状態におかれている。

25日、アメリカは、人道的な支援を行うために、戦闘の「一時停止」を行うことを提案した。ブリンケン国務長官は、これが「一時停止」であって、「停戦」を意味するものではないと強調した。これについては、理事国15カ国中、日本を含む10カ国が賛成票を投じたが、ロシアと中国が拒否権を発動して否決となった。

続いて26日、ロシアは、ガザの封鎖を非難(つまりはイスラエルを非難)し、人道目的の「即時停戦」を求める決議案を出した。これについては、アメリカの拒否権ではなかったが、賛成がロシア、中国、UAEなど4カ国だけで、アメリカとイギリスが反対。9カ国が棄権であったことから、これも否決となった。

www3.nhk.or.jp/news/html/20231026/k10014237861000.html

安保理非常任理事国提案:ハマス避難なしで即時停戦要求で可決

安保理理事国が結果を出せないことを受けて、27日、安保理理事国ではない、非常任理事国10カ国が発起人となり、即時停戦などを盛り込んだ解決策を国連総会(193カ国)で決議を行い、賛成120票の圧倒的多数で可決した。

反対を投じたのはアメリカ、イスラエルと、オーストラリアなど14カ国。日本を含む45カ国は棄権票を投じていた。

この決議案は、ヨルダンが提起したもので、イスラエルもハマスもいずれも名指しで非難はしていない形での即時停戦と、民間人の解放、民間人と国際機関の保護、ガザへの人道支援の安全な通過を求めるとなっている。

これでは、被害国イスラエルと、犯罪者テロ組織が同等に並べられているだけでなく、第一恐ろしい犯罪を犯したハマスを非難していないという決定的な問題を含むということである。イスラエルとアメリカも反発を表明した。

安保理ではないので、この決議に拘束力なく、実質的にはなにもできないのではあるが、国際社会の意思としての方向性を示すものになる。この案を提示したヨルダンの国連大使は、「これで、イスラエルのガザでの残虐行為を止められる」と述べた。

ハマスが歓迎:イスラエルは「人類の最も暗い日」と激怒:アメリカも非難

これを受けてハマスは、歓迎を表明。ただちにこの決議を実行することを求めるとの声明を出した。

イスラエルのコーヘン外相は、「イスラエルは、世界がナチスやISISを排除したのと同じことをしているだけだ。」と怒りを表明。エルダン国連代表も怒りを表明し、「これは国連と人類にとってもっとも暗い日だ。イスラエルは、あらゆる手段で、ハマスと戦うしかない。」と述べた。

アメリカのグリーンフィールド国連大使は、ヨルダンが、この決議案にハマス非難を入れていないこと、またイスラエル人の人質のことが含まれていないことを指摘。非難した。

イスラエルのガザ侵攻は、このすぐ後のことであった。

<石のひとりごと>

なんということか。世界中が、あれほどの悪魔的な犯罪を犯し、実際にガザのパレスチナ人たちの生活を壊す源になっているテロ犯罪組織ハマスが歓迎を表明するような決議案を下しているのである。おかしすぎる。あまりにも不条理すぎる。

結局のところ、イスラエルが最終的に世界に攻め込まれ、その時にメシアが来るという預言が聖書にはあるが、まさにそういうありえないようなことが、将来起こってくる可能性があるということを示されているような気がする。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。