壮絶なイスラエル人犠牲者の報告続く:軍から捕虜確定の120人の家族に報告 2023.10.14

terrorists from the Gaza Strip, in Ramla, Israel, October 13, 2023

袋詰めの遺体

イスラエルの犠牲者は1350人だが、襲撃されたガザ周辺地域から、遺体の回収もすすんだのか、数の増加は、一応の落ち着きをみせている。

写真は、身元はまだはっきりしていない人で、今回のガザへの侵攻で発見された遺体たち。故人がだれかわかるまで、ラムレに保存される。袋にいれて積み上げている様子が痛々しい。

あまりの痛々しさにユダヤ教ラビも、重苦しい表情である。ほんの1週間前まで、このだれもが、まさかこんなことになるとは思っていなかっただろう。

捕虜に関する情報:120人あきらかに

ガザ国境をイスラエル軍が解放するにつれて、被害の実情や、捕虜になっているとみられる人の名前も特定されている。13日、イスラエル軍は、ガザへの地上軍進軍の前に、捕虜になっているとわかった120人の家族にその連絡を行った。

www.jpost.com/breaking-news/article-768111

ハマスは、「キブツ・ホリットの子供たちをあわれむ」と題したクリップを発表。写っているのは、捕虜になったとみられるイスラエル人の幼児たちである。子供たちの親の姿はみえない。このキブツは、7日、ハマスに襲われ、後で13人の遺体が見つかっている。

テロリストそのもののハマス

ハマスが、キブツ・べエリに入ってきた時のクリップがSNSに出回っている。以下は、キブツ・べエリでのハマスの様子。ハマスは、こんな恐ろしいギャングのように、まさにテロ集団のように、一般市民の間に入ってきたということである。

犠牲者たちが最後に残したメッセージ

犠牲者たちが、緊迫の中でwhat’s upのグループチャットで交わしていた緊張感あふれるやりとりなどが紹介されている。

1)キブツ・べエリのメンバー200人の最後のチャット(伝えたのはBBC)

キブツ・べエリでは、100人が殺され、多くが捕虜として連れて行かれたキブツである。捕虜の中には、同じ家族からの10人(3-12歳の子供3人含む)全員が、ハマスに捕虜として連れて行かれたとみらている。

このキブツでは、約200人がWhatsAppのグループチャットで、それぞれの住居の中から対話していた。3人が公開に同意したとのことで、BBCが紹介していた。

テロリストはこの家族の家周辺に20時間も止まっていた。家族たちは隠れながら、連絡をしあっていたようである。「入ってきた」「家をこわしてる」「お願い、助けて」「外で銃撃してる」「外でアラビア語が聞こえる」・・・

最終的に、イスラエルの治安部隊が来たとの連絡があったが、それが本物かどうかわからず、確認してから開けなさいとか、非常にリアルである。なかなか来ない治安部隊に「軍はどこにいるの!」などといった会話もある。

最終的に母のミハルさんから「お父さんが殺された。だめみたい」と来て、連絡は途絶えた。

www.bbc.com/news/world-middle-east-67105618

2)19歳女性兵士ナアマ・ボニさん

ナアマ・ボニさん(19)は、7ヶ月前に従軍したばかりで、戦車部隊第77大隊に配属されていた。ナアマさんも「ここにテロリストが居座っている。叫びが聞こえる。怪我人がいる。」などと友人に送っていた。

また隠れ場所から撮影した映像には飛来するロケット弾と、ナアマさんが震える声で「お母さん、お母さん」と泣いている声も聞こえる。ナアマさんは、その後、殺され、家族は病院で遺体と対面することになった。

www.ynetnews.com/article/hkqr3qlbt#autoplay

エルサレム近郊に住むイスラエル人の友人によると、とにかく葬式が多いとのこと。墓地には新しい墓と鮮やかな花輪があふれるばかりになっている。

以下の記事には、これまでに戦死した兵士たちの名前が全部あげられている。

www.ynetnews.com/article/s1rxsrj11a

石のひとりごと:日本の報道と日本の外交に超違和感

13日夜のNHK、TBSのイスラエル・パレスチナ情勢に関する報道を見て、超違和感で腹立ちすらあった。(あくまでも地上波テレビ、14日夜のニュースのみについて)

どちらも、イスラエルが空爆したガザ地区や、レバノンの側の様子は時間をかけ、TBSは特にガザの人々のコメントも複数紹介していた。それは悪いことではないが、被害にあったイスラエルの町の様子はおろか、人々のコメントもまったくみられず、あきらかにアンバランスであった。

また、イスラエル人に対して行われた、ISIS(イスラム国)なみの恐怖の暴行や、ホロコースト並みとユダヤ人自身が言うほどの恐ろしい虐殺や拷問が行われていることは全く伝えられていない。その現場も取材したはずだが、流されないのである。

イスラエル人も家族を残虐の殺されただけでなく、拷問状態でレイプされ、残虐に殺された娘を、一家全部焼き殺された現場、ベビーベッドで赤ちゃんが斬首され血まみれになっている姿、それらをハマスがSNSにアップして、家族自身が発見するのである。心が壊れてしまわないはずはない。

なぜイスラエルがここまで徹底的にハマスを壊滅させようとするのかといえば、彼らがあまりに悪であり、そのまま放っておくと、イスラエルの存在にまでかかわってしまうからである。その深刻さを世界、特に日本はまだあまり理解していないのだろう。

イスラエルが選びの民であるとうことの背景にある霊的な脅威は、イスラエルでないとわからないのかもしれない。

この点について、アメリカはキリスト教の国なので基本的に聖書の価値観は、かなり崩れたとはいえ、全くなくなったわけではないだろう。

バイデン大統領は、ずばっと的があたったかのように、ハマスを悪と明言し、イスラエルの現状を理解しているかのメッセージを発し、イスラエル人の大きな慰めになった。

ブリンケン国務長官は、自身がユダヤ人であり、ホロコーストサバイバーの家族であることを明らかにしている。スラエル人で家族を残酷に殺された犠牲者家族に面会し、涙すら流していたのであった。

ブリンケン国務長官がイスラエルに来た目的について、日本のニュースは、人質の解放への交渉かなどと言っていただが、そうではない。最大の目的は、アメリカがイスラエルの痛みを十分に共有し、イスラエルと共に立っていることを世界にアピールすることであった。

日本の報道は、この点については、ほとんど報じていないように思う。要するに、ハマスの悪と、イスラエルの痛みは全く隠された状態にあるということなのである。

このため、今後、イスラエルが、ガザへの大規模な地上戦を開始すれば、相当な死者がでてしまうが、この報道を受けている日本の視聴者には、どうみてもアンバランスにイスラエルだけが悪いという印象しか残らない。

もう一点。就任したばかりの上川外相が、パレスチナ自治政府のマリキ外相と会談し、早期沈静化で一致したそうだ。自治政府がハマスに、沈静化させる立場にあるとでも思っているのだとしたら、本当に何も知らないのですねと言わざるをえない。

まず第一に、ハマスは異常なほどのテロ組織であり、自治政府はもはや太刀打ちできない存在である。次にハマスは、ガザを支配しながら、ガザ市民のことなど全く考えない、すべての経済をミサイル製造に費やしてきたような、残虐なテロ組織でしかない。

その証拠が今回の大規模イスラエル攻撃である。イスラエルが反撃しないはずはなく、ハマスは、ガザ市民たちにこれほどに大きなツケを払わせることも厭わなかったということである。それでも、日本の外務省は、ハマスと、外交的解決ができると思うのか?

凶悪きわまりない犯罪組織と、正式に国連にまで認められている政府が、対等に立って、話し合いが交渉するべきとでもいうのか。イスラエルはもう長年すでにそれをやったあげくに、今回の大惨事にいたったのである。

失礼とは知りつつ、あまりにも現実離れの報道、外交であると驚いてしまった次第である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。