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サウジアラビアとアメリカが、パレスチナの国などと持ち出しているが、今のパレスチナ人の様子は、混乱を極め始めている。国際的には一応、パレスチナ人の代表と目されているアッバス議長(87)の求心力は、著しく落ちており、パレスチナ市民はもはや、アッバス議長を信用していない。
そうした中、ハマスやイスラム聖戦といった過激派が西岸地区にも台頭を始めており、イスラエル軍が、テロ組織やその計画、密輸される武器の摘発を毎日のように行っている。衝突の中で、死亡したパレスチナ人は、今年に入ってからだけで186人となった。
最近では、ライオンの巣といった、パレスチナ自治政府と、過激派組織両方に反発する次世代若者のグループが出ている。また、あらたなグループが、「自治政府は、パレスチナを(内戦中の)シリア、イエメン、イラクのようにしたとの声明を発表する事態になっている。
イスラエルとの対立エスカレート中
パレスチナ自治政府の治安管理があいまいなので、イスラエル軍は、ほぼ毎日のように、西岸地区に入り、テロ組織の摘発と密輸武器の押収を行っている。当然、衝突が発生し、ほとんどの場合、パレスチナ人に死者が出ている。
1)ジェニンでIDFと衝突:パレスチナ人4人死亡・その後また1人死亡
19日(火)西岸地区ジェニンで、武装したパレスチナ人とイスラエル軍が衝突。イスラエル軍が、自爆型ドローンを使った本格的な戦闘になった。この戦闘で、パレスチナ人4人(マフムード・アリ・ナアフィ・アスーサーディ(23)、マフムード・カレッド・アララウィ(24)、ラアファット・オマル・ハマイシュ(22)、アタ・ヤセル・アタムーサ(29))が死亡。30人が負傷した。
www.timesofisrael.com/at-least-2-palestinians-killed-in-clashes-with-idf-in-jenin-refugee-camp/
20日(水)、西岸地区各地では、イスラエル軍が計12人のテロ容疑者を逮捕し、武器弾薬も多数押収した。その際にパレスチナ人たちは、爆発物を投げつけるなどして衝突。アカバット・ジャブルでの戦闘で、ダルガム・アル・アカラス(19)が死亡した。
2)ガザ国境衝突
ガザ国境ではここ数週間、特に5日連続で、パレスチナ人とイスラエル軍の衝突が発生。
タイヤに火をつけて転がしたり、発泡してきて、逆に撃たれたパレスチナ人もいた。
ガザ国境では、先週、自分たちで仕掛けた爆弾が爆発して6人が死亡するという悲惨な事件が発生したこともあり、最近の国境での衝突で死亡したパレスチナ人は7人となった。
3)散発するエルサレム近辺でのテロ
エルサレム近辺では、テロが散発している。幸い、どれも重篤な死傷者は出ていないが、24日からは、ヨム・キプール、仮庵の祭りと大勢が、エルサレム旧市街にも出回る時期なので、緊張は高まっているといえる。
21日、エルサレム郊外のカランディア検問所で、東エルサレム在住のパレスチナ人(38)の車両が、警察につっこみ、逮捕された。このパレスチナ人は、車の中が血まみれになっていて自殺を試みたあげくに、検問所に来たとみられている。係官が近寄った時に車を急発進させて、警察官(32)に警鐘を追わせた。おそらく、自殺目的でテロを試みたとみられる。
www.timesofisrael.com/security-guard-lightly-hurt-in-suspected-ramming-at-jerusalem-checkpoint/
同じく21日夜、東エルサレムの路面電車のギブアット・ハミブタル駅で、パレスチナ人(19)がナイフで警備員を刺そうとして乱闘となり、別の警備員に撃たれた。パレスチナ人は重症。警備員は乱闘の際に手に負傷して病院で手当を受けた。
今年に入ってからテロで殺されたイスラエル市民は27人。イスラエル兵は3人である。
www.timesofisrael.com/security-guard-lightly-hurt-in-stabbing-attack-at-jerusalem-light-rail-stop/
内部混乱の様相:シーア派イランと共謀している過激派グループを非難
西岸地区ではハマスやイスラム聖戦が進出し、イスラエルへのロケット攻撃の準備も始まっている。こうした中、先週火曜からSNS上で、親ファタハ(アッバス議長所属)の分派でタンジムというグループが、興味深い声明を出している。
それによると、ファタハに対立している、過激派イスラム聖戦は、ジェニンで、イスラエルとの衝突を頻発させ、パレスチナ人の生活に混乱を呼び込んでいると非難している。
また、パレスチナ人は、スンニ派であるのに、過激派は、シーア派のイランと共謀し、スンニ派の勢力ファタハ(パレスチナ自治政府)をも弱体化させ、パレスチナをシリア、イエメン、イラクのようにしてしまったと訴えている。
このタンジムという組織は、30年近くも前の1995年に、ヤセル・アラファトが、新たな過激派組織を阻止する目的で立ち上げたファタハの分派とされる。現在の代表は、イスラエルで今も投獄されているマルワン・バルグーティである。このグループは、同じファタハでも、汚職にまみれたアッバス議長には同調せず、批判する組織である。
もうなにがなんやら、わからないほどに混乱しているのが、今のパレスチナ自治政府のが実情である。その長であるアッバス議長が、普通に国連総会で、パレスチナ人の代表としてスピーチを行い、サウジアラビアとアメリカが、真剣に国家にすることを話し合っている。
どう考えても無理・・・。実際のところ、サウジもアメリカも、パレスチナ人のことなどどうでもよいのであり、ただ政治的なからくりに利用しているだけなのである。この超難しい局面に立っているのが、ネタニヤフ首相だということである。