過激ユダヤ人入植者暴動は「ポグロム」とIDF司令官も非難:対処に追われるイスラエル政府 2023.3.1

This picture taken on February 27, 2023 shows an aerial view of a scrapyard where cars were torched overnight, in the Palestinian town of Huwara near Nablus in the occupied West Bank. - Two Israelis living in the Har Bracha settlement near Nablus were killed on February 26 in a "Palestinian terror attack", officials said, sparking violence in which a Palestinian man was killed, while settlers torched homes in revenge. (Photo by RONALDO SCHEMIDT / AFP)

26日の過激ユダヤ人暴動は「ポグロム」とイスラエル軍司令官も非難

24日、過激ユダヤ人たちが、西岸地区でパレスチナ人村で放火に及んだあと、25日には、西岸地区ナブルス南部のパレスチナ人の村フワラで、ユダヤ人のハレル・ヤニヴさん(21)と、ヤゲル・ヤニヴさん(19)が射殺された。2人を射殺したパレスチナ人は、イスラエル軍が追っているが、まだ捕まっていない。

その26日には、極右ユダヤ人入植者の400人とも言われる一団が、ナブルス南部のパレスチナ人の村フワラに入って家や車に放火する暴徒と化した。一団は、15軒、車両30台に放火する暴行に及び、翌朝には、その生々しく恐ろしい焼け跡が報じられている。(被害の数字はイスラエルとパレスチナで違いあり)

www.bbc.com/news/world-middle-east-64757990

イスラエルの治安部隊は、暴動の中、火災現場からパレスチナ人住民たちを救出したが、負傷者は20人(重傷含む)。また、銃撃で、サメア・アクタシュさん(37写真)が死亡した。イスラエル軍は、サメアさん死亡の責任を否定しているが、家族は、イスラエル軍の銃撃だったと主張している。

また、暴動を起こした過激なユダヤ人入植者たちは、暴動を止めようとしたイスラエルの治安部隊に対しても投石。隊員を車でひき殺そうとした入植者もいた。車輪を銃撃して、狙われた隊員は無事だった。

過激な入植者たちは、一時丘の上のエヴヤタルに集結した。国境警備隊が撤去を試み、3回目の試みで解散させた。しかし、その後また戻っている者もいるもようである。エヴヤタルは、土地の持ち主が明確でない点もあり、2021年に一旦撤退させられたが、入植者たちは、必ず戻ると主張しつづけている。

この夜の暴動で、過激ユダヤ人8人が逮捕されたが、ハアレツ紙によると、5人は事情聴取の後に釈放され、3人は、自宅で4日間の軟禁とされた。しかし、その後、別の6人(未成年2人含む)が逮捕されている。

www.haaretz.com/israel-news/2023-02-28/ty-article/.premium/out-of-hundreds-of-rampaging-israeli-settlers-only-one-remains-in-custody/00000186-993b-dbb2-ab96-b97b91a10000

西岸地区担当のイスラエル軍中央司令官ヤフダ・フッチス大佐は、過激入植者のしたことを、違法な「ポグロム」と呼び、イスラエル軍にはこれに対処する準備が足りてなかったと語った。

フッシス大佐は、入植者と治安部隊というユダヤ人同士が争っただけでなく、隊員があやうく殺されそうになったことへの懸念を表明。イスラエルとパレスチナ自治政府の間に、本当に治安維持の協力がなかったことを指摘し、今後、今後、暴力がエスカレートすることへの懸念を表明した。

www.timesofisrael.com/settler-extremists-sowing-terror-huwara-riot-was-a-pogrom-top-general-says/

*ポグロム
かつてロシア各地では、暴徒がいっせいにユダヤ人居住地を襲い、恐ろしい拷問と殺戮を行った。これをポグロムという。

イスラエル政治家らから暴動への非難:国連安保理も緊急会議

過激ユダヤ人入植者たちの暴動を受けて、ヘルツォグ大統領は「これはイスラエルのやり方ではない」と暴動を非難し、自分で復讐しないようにとの声明を出してたいたが、ネタニヤフ首相も、「今日起こったことは大変ひどい」とし、イスラエル軍と治安部隊が、ユダヤ人2人を殺したテロリストを追っているとして、彼らにまかせるよう、要請する映像を出した。

西岸地区でのテロや、過激ユダヤ人たちの暴動を受けて、国連安保理では、この地域に関する緊急会議を、本日1日に行うことになっている。イスラエルを取り囲む問題での緊急会議は、今年に入ってから3回目である。

Times of Israelによると、今回は、イスラエルを非難するだけでなく、テロで殺害されたユダヤ人2人の件、イスラエルの入植地拡大政策など広く全体を通しての審議になるみこみだという。

イスラエルから被害パレスチナ人地域への献金100万シェケル

イスラエル国内では、左派労働党が中心となり、ユダヤ人入植者たちによって被害を受けたパレスチナ人たちのために、クラウドファンディングで、献金を募ったところ、数千人から24時間以内に、100万シェケル(約3800万円)が集まった。

これを実施した労働党のヤイル・フィンク氏には、右派からの脅迫もあったという。寄付金がどのように被害者に届くかについては、イスラエル軍担当者を通じて、フワラ町関係者と連絡をとっているとのこと。間違ってもテロリストに届いてはならないからである。

www.timesofisrael.com/israelis-donate-over-nis-1-million-for-palestinian-victims-of-settler-rampage

石のひとりごと:ネタニヤフ首相大丈夫?

ネタニヤフ首相のビデオクリップ。ネタニヤフ首相の顔がいつもと違うように思う。左目が下がっているようでもあるし、顔からいつもの気力が消えているようにもみえないだろうか。

指導者としての本来の力が発揮できるよう、気力を失わないようにと祈る。

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。