ラマラでイスラエル人2人危うくリンチ:パレスチナとイスラエル間の暴力懸念 2021.12.3

A youth jumps on the bonnet of a burnt Israeli car being transported away by Palestinian security forces in the West Bank city of Ramallah on December 1, 2021, after the vehicle was set on fire by Palestinian youths upon it entering Ramallah. (Photo by ABBAS MOMANI / AFP)

ラマラに迷い込んでリンチ寸前に

12月1日、イスラエル人2人が乗った車が、パレスチナ自治政府地域(A地域)の主要都市ラマラに入りこんでしまい、パレスチナ人の群衆にとりかこまれ、リンチ寸前の危機に陥った。

パレスチナ人たちは、投石し、車のガラスを破壊した。イスラエル人2人は、なんとか脱出。2人は自治政府警察に救出され、ベイト・エルの検問所へ移送。イスラエル軍に引き渡した。2人は無傷であった。まさに奇跡の脱出だったと恐怖を語っている。

イスラエル人2人のうち1人は、ミカエル・シャラビさん(20歳代?)。西岸地区入植地シロの住人で、見るからにユダヤ人入植者の様相である。もう一人もエラッド在住の超正統派であったため、パレスチナ人の怒りが爆発したとようである。

しかし、ハアレツによると、パレスチナ人たちが車に放火したのは、2人が車から出た後であったもようである。以下は、車が、ラマラに入り込んだ瞬間。

イスラエルは、市民がパレスチナ側へ入ることを禁止している。シャラビさんらは、ラマラから車で30分程度の入植地ハスモナイに向かっている途中であったと言っている。途中で、ガソリンスタンドで道を聞いたアラブ人に従って走行していたらラマラに入ってしまっと説明しているが、警察は、もう少し調べを進めるとのこと。罰金になる可能性もある。

www.timesofisrael.com/two-israelis-attacked-car-torched-by-palestinians-after-entering-downtown-ramallah/

パレスチナ人によるバス襲撃事件

上記事件の数日前の先月27日、エルサレム北西のヒズマ検問所付近で、パレスチナ人に投石され、運転手が割れたガラスで軽傷を負う事件が発生していた。

この地域では、先週、パレスチナ人暴徒とイスラエルの治安部隊と衝突、乱闘となり、付近にいたバスに火炎瓶が投げつけられていた形である。

この時、パレスチナ人たちは、エルサレム旧市街で銃を乱射して、イスラエル人一人を殺害、4人を負傷させれ殺されたファディ・シャイアイダムに敬意を払うと叫んでいたとのこと。

最近、パレスチナ人によるテロが増えてきている。ハマス関連の拠点や武器庫が50箇所以上も摘発されていたというニュースも聞く。特に、西岸地区では、入植地の住民への投石が多発しているという。

一方で、入植地にいる過激右派のユダヤ人によるパレスチナ人への暴力も報告されている。西岸地区では憎しみのやりとりが多発しているようである。

www.timesofisrael.com/israeli-bus-driver-injured-by-rocks-near-west-bank-checkpoint-near-jerusalem/

パレスチナ人テロ激化の背景にあるもの

パレスチナ人たちの怒り憎しみが、また悪化している背景には、いくつか理由が考えられる。イスラエルが、6つのパレスチナ人権団体をテロ組織と指定したことで、パレスチナ人への支援金がさらに減っているとの情報がある。

最近、イギリスがハマスをテロ組織と指定したことで、特にガザ市民の貧困は、さらに悪化していると伝えられている。

また、ベネット政権は、10月、西岸地区にユダヤ人家屋3000軒を建設すると発表。これと並行して、パレスチナ人住居の建設や、支援も行うとガンツ防衛相が約束してはいるのだが、西岸地区にパレスチナ国家独立という目標からはズレる動きかもしれない。

www.aljazeera.com/news/2021/10/24/israel-to-build-over-1300-new-west-bank-settler-homes

また、東エルサレムにアメリカが、今は閉鎖されている領事館を再開させると言っていることについて、ベネット政権は、まともに反対を表明した。エルサレムは、イスラエルの首都であり、パレスチナ人がアメリカとの交渉に使える事務所が、東エルサレムにオープンすることを受け入れることはできないという主張である。

東エルサレムに近いアタロット(1967年国境よりパレスチナ側)にもユダヤ人の住居を、多数建設予定している。

アメリカのブリンケン国務長官は、2日、ベネット首相に電話をかけ、これにについては、中止すると約束したのではなかったかととつめよったとのこと。

今後もパレスチナ人によるテロが増えてくる可能性はある。バスが襲撃されている様子からは、かつて、バスを爆破する自爆テロが横行した2000年代を思い出す。

治安部隊が押収したハマスの武器の中には、自爆ベルトがあったと聞く。またそのような恐ろしいことをして自らの命を断つパレスチナ人が出てこないように要とりなし。

*最近バスが危ない?

すべてがパレスチナ人によるというわけではないが、最近、イスラエルでは、バスへの攻撃が続いている。

1日夜、イスラエル国内で、ティラからネタニヤに向かっていたカビイム・バス39番が、銃撃される事件が発生した。バスがティラのバス停に近づくと、車がそれを妨害したため、バスが避けようとしたところ、車から顔を覆った男が出てきて、バスに向かって銃撃したという。運転手は、床に伏せて怪我はなかったとのこと。

またその数日前には、南部ネゲブ地方で、テルアビブからエイラットに向かっていたエゲッドのバス790番が、投石を受け、窓ガラスが割れた。負傷者の報告はない。運転手は、投石したのはベドゥインだと言っている。

エルサレムポストによると、バス運転手連盟が通報した暴行事件は2020年だけで3644件であった。しかし、実際には事件ぼ47%しか報告されていないとのことで、実際にはもっと発生しているとみられる。

在イスラエル日本大使館は、在住者に注意を呼びかけている。

www.timesofisrael.com/rocks-hurled-at-bus-heading-to-eilat-smashing-window/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。