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西岸地区紛争悪化
世界がガザ地区に注目する中、ヨルダン川西岸地区と東エルサレムでの紛争が急速に激化している。西岸地区では、パレスチナ自治政府(PA)指導者の高齢化と汚職で求心力は著しく低下している。
これに伴い、ハマスやイスラム聖戦などが頭角。武器の密輸を続けている他、若者独自のテログループも登場するなど、混乱、危険きわまりないカオスになりつつある。
イスラエル軍は、もはやPAに治安維持を任せられなくなって、自らテロ事件を未然に予防する方策を続けてきたが、10月7日のハマスとの戦争が始まって以来、両者の衝突は悪化している。
アルジャジーラによると、イスラエル軍は、ジェニンやラマラなどに入って、テロリストの摘発を続けているとのこと。
当然、衝突になるため、10月7日以降に死亡したパレスチナ人は314人。負傷者は3800人。4800人が逮捕された。イスラエルの刑務所にいるパレスチナ人は7820人となっている。
こうした中、パレスチナ人たちのテロも発生。西岸地区ヘブロン南部の検問所で、車がイスラエル兵たちに突っ込んできて、イスラエル兵5人が負傷(1人は重症)した。運転していたパレスチナ人は、その場で射殺された。
別の地区では、イスラエル軍に爆発物を投げつけた男がおり、射殺された。その前日には、エルサレムに近い入植地、グッシュ・エチオンの検問所でナイフテロが発生。国境警備員2人が負傷した。
www.timesofisrael.com/4-wounded-one-in-moderate-serious-condition-in-west-bank-car-ramming-attack/
こうした動きの中、ここ数日、特に西岸地区のツルカレムで起こっていることが続けて報じられている。
パレスチナ人地区ツルカレムに警告
1)ツルカレムでロケット弾など武器応酬:パレスチナ人2人死亡・7人逮捕
イスラエル領、テルアビブにもかなり近い西岸地区のパレスチナ人の町、ツルカレム(人口約6万5000人)に隣接するヌール・シャムス難民キャンプに26日、イスラエル軍が突入し、手製のロケット弾はじめとする武器を押収した。
ツルカレムは、ユダヤ人密集都市テルアビブに非常に近いため、ここからロケット弾が発射されることは、非常に危険である。
この戦闘で、パレスチナ人2人が死亡・7人が逮捕された。
IDF reservists and Border Police officers operated overnight in the Nur Shams refugee camp near the West Bank city of Tulkarem, detaining wanted Palestinians and seizing weapons, the military says.
Troops located an explosives lab in the area, with dozens of primed IEDs and… pic.twitter.com/SHr1id7tmn
— Emanuel (Mannie) Fabian (@manniefabian) December 26, 2023
この翌日27日、イスラエル軍は再度ヌール・シャムス難民キャンプに、軍用車両とブルドーザーで突入し、さらに武器を押収するとともに、指名手配中のパレスチナ人3人を逮捕した。この時、ドローンを使った空爆も行われて、パレスチナ人6人が死亡した。
ブルドーザーで突入したのは、道路脇に仕掛けられた爆発物や罠を破壊するためであった。実際、爆発物などを発見。破壊したとのこと。
הפשיטה על טולכרם. pic.twitter.com/g4KTC0wfAY
— Asslan Khalil (@KhalilAsslan) December 26, 2023
www.timesofisrael.com/6-palestinians-said-killed-in-idf-drone-strike-near-west-banks-tulkarem/
2)ツルカレムからユダヤ人地区へトンネル設立疑惑
ツルカレムに近い、ユダヤ人の町バッド・ヘイファーの住民マタン・ブフナーさんが夜中に、自宅下でなにかを掘る騒音が続いていると、その音の録音も共に、地方評議会に報告した。
これを受けて、3回の調査が行われたが、今の所、問題となるものは発見されていない。
しかし、この訴えがなされるのは、これが初めてではない。マタンさんとその他の住民も同様の騒音を聞いており、ここ何年か、評議会に訴えて続けてきたという。ガザのトンネルが暴露される中、マタンさんたちが改めて、警告を発したということである。
同じく18ヶ月前から騒音を聞いているガド・オハヨンさんは、騒音とともに、ツルカレム周辺からは、町に向けての銃撃もあったとして、イスラエル軍は、この問題に対処すべきだと訴えた。
過激ユダヤ人入植者ヒルトップユース部隊を活動停止処分へ
西岸地区では、極右で過激なユダヤ人入植者たちの暴力も問題となっている。特に問題になっているのが、ヒルトップユース(丘の上の若者たち)と呼ばれるグループは、これまでからも、前哨地とよばれる西岸地区の土地を認可前に開拓し、パレスチナ人に暴力を振るうことでも問題となってきた。
イスラエル軍部隊の中で、「スファル・ハミドバル(砂漠の前線)」とも呼ばれる部隊は、ベドウィン村での麻薬や武器の取引を取り締まってきたが、2020年からは西岸地区でも同様の任務にあたていた。
この部隊が積極的にヒルトップユースを隊員に勧誘しており、パレスチナ人にひどい暴力を振るうようになっていたと言われていた。パレスチナ人を捕まえ、縛り上げた上に衣類を剥がすといった証拠も上がっている。
これを受けて、イスラエル軍は、この部隊の行動を停止したとのこと。
これに先立ち、ヘブロンの南に位置するパレスチナ人の村、ザヌータと、アニツアンでは、住民に対するユダヤ人入植者から殴られたり、ソーラーパネルや貯水タンクを破壊されるなどの嫌がらせや暴力で、そこから出ていかなければならないほどであった。
入植者たちがこういう行動をとったのは、西岸地区はユダヤ人のものであるという考えのもとに、パレスチナ人たちが、違法に家を建てている地域であったからとしている。
10月末から住民がいなくなったこの2地域は、今では、軍事地帯とされ、イスラエル軍以外のユダヤ人もパレスチナ人も入れないようになっている。これが法的に正しいことかどうか、物議が続いている。
西岸地区パレスチナ人が入植地での職場復帰へ
このようにパレスチナ人のイスラエルへの憎しみは増すばかりのようではあるが、生活もしなければならない。またイスラエル側も、戦争で、著しい人手不足にある。
Times of Israelによると、イスラエル政府は、8000人から1万人のパレスチナ人が入植地での労働に戻れるようにするとのこと。パレスチナ人労働者たちは、10月7日以降、職場に入れなくなっていた。