石のひとりごと:目的のない殺人 2015.10.15

今日、ダマスカス門で、一人のパレスチナ人の若者が、その命をあっけなく終えた。

アラーのためと思っていたのだろうが、そのアラーのために何事をもなしとげなかったのに、一瞬にして治安部隊に射殺されてしまった。ひろい石畳の上に、ただ一人でころがっているその姿に、あまりのむなしさに悲しくなってしまった。

20年近く生きた彼の人生はなんだったのか。彼は英雄扱いしてもらえるのか。親はどう思うのか。

一方で、ユダヤ人の友人が昨日テロの犠牲になったラビについて言ったことが忘れられない。「考えてみて。あのラビは朝、コーヒーを飲んでいたのに、夜には墓に入ったのよ。」

このテロの波を見ていると、実にむなしいことの連続である。

パレスチナ人は、ユダヤ人が神殿の丘にあるアルアクサモスクを破壊しに来ると言って、ユダヤ人殺しに走っている。しかし、イスラエル政府はもちろん、強硬右派の第三神殿組ですら、今あるモスクを破壊するとはいっさい主張していないのである。

また、パレスチナ人がいかに占領だと怒っても、いかんせん、イスラエルは、国としてすでに確立してしまっている。パレスチナ人がたとえ100人のユダヤ人を殺しても、この国がどこかへ消えて、そこにパレスチナの国ができるのかといえば、そんなことはまったくあり得ないことである。

その目的のない、むなしいことに、まだ考えが浅く、感化されやすいパレスチナ人の子供たちが巻き込まれ、その若い命が失われているのである。

今日も明日もパレスチナの若者は嘘を信じ、目的のない戦いで命を落とす。そのむなしい殺人で、ユダヤ人が命を落とす。恐ろしいことだが、死んで行くパレスチナ人も、殺されるユダヤ人も救われていない・・・。サタンが背後で大笑いしているのが見えるようである。

さらにこのむなしい殺人は、それだけで終わっていない。ユダヤ人の中に、パレスチナ人への怒りを生み出し始めている。こうしたテロ行為により、今後、パレスチナ人だけでなく、イスラエル国籍のアラブ人も、この国で働きにくくなるだろう。ユダヤ人過激派が殺人を始めるかもしれない。

見れば見るほど、サタンが背後で笑っているのが見えてきそうである。このむなしさと暴力のサイクルを主が打ち破ってくださるようにとりなそう。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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