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ロックダウン回避:今年は家族とともに新年を
イスラエル、また全世界のユダヤ人たちは今夜日没からローシュ・ハシャナ(新年・またはらっぱの日)を祝う。通常なら、家族親族、友人たちが集まって、ともに特別な食事をとる日である。昨年に続き、今年もまだコロナ禍での新年である。
まだ油断はならないものの、3回目接種がすすむにつれて、重症者が少しづつ減少に転じ、新規感染者も24時間で1万1000人を連日超える日が続いていたところ、1万人を切るようになってきた。
www.timesofisrael.com/health-minister-optimistic-as-daily-covid-infections-fall-below-10000/
一時はロックダウンの危機も視野に入れ始めていたベネット首相だったが、今回もぎりぎり、ロックダウンせずに、新年を迎えることを決めた。以下は、新年を前にしたマハネイ・ヤフダマーケットやスーパー、買い物をする人々の様子。
空港も、イスラエル人には閉じられていないので、ギリシャなどイスラエル人の入国を閉じていないギリシャやイタリアなど、海外に出ていく人々の様子もみられる。
国内での主なルールとしては、嘆きの壁は、カプセル一つにつき15人までで、全体では8000人まで。マスク着用のこと。これを監視するアッシャーを置く。
新年が終わると賑わい始めるのが、仮庵の祭りの4種の植物の売り場である。毎年、かなりの満員になるので、安全認証のパープルバッジを受けた店だけが販売を許される。
シナゴーグなどでは、屋外は100人、室内50人までとし、それ以上になる場合はグリーンパス(ワクチン接種か陰性証明)提示を義務付ける。ただし、2回ワクチンを受けていても、3回目接種を受けないまま6ヶ月以上経過している人は、ワクチン未接種として扱われる。
また、政府は市民それぞれが責任をもって検査を行い、安心して家族と新年を祝うようにと呼びかけた。なお、イスラエルでは、PCR検査の結果が有効とされるのは、3日間に限られているが、新年に合わせて、特別に4日間は有効とされた。祭日直前の5日に検査を受けると、新年の9日までは自由に、シナゴーグもいける。この日、全国のPCR検査場には9万人が押し寄せたとのこと。
www.jpost.com/israel-news/israels-covid-19-rosh-hashanah-rules-the-full-details-678716
新学期前一斉検査で陽性者発見:感染拡大防ぐ
イスラエルでは、9月1日の新学期開始にあたって、全児童への迅速抗原検査が実施された。結果、8000人の子供たちが陽性であることがわかった。また隔離措置となった子供たちは3万3000人。閉鎖となった幼稚園や学校クラスは2000件にのぼっている。もし、検査せずに、そのまま登園、登校させていたら、今頃、18万人が隔離措置になっていたと推測されている。
その後、学校が始まってから5日までの間に新たに、1万7000人が陽性となった。この子供たちを含め、5日の時点で陽性とされた子供は、全国で4万3000人。残念ながらこれらの子供たちは、新年に祖父母に会えないが、感染の有無がわからないままで、ウイルスを持っていく心配はない。
秋の例祭で、日曜から子供たちはまたほぼ9月いっぱいの長期休暇に入っいるが、ベネット首相は、再び学校へ戻る際には、一斉検査を行うことを示唆している。
集団免疫への希望:ブレークスルー感染で最強の抗体獲得か
イスラエルでは、多くの市民が、ワクチン接種しているにもかかわらず、感染拡大が続いていた。しかし、イスラエルの専門家たちからは、ワクチン接種の拡大と並行して、感染はしても回復して抗体を獲得する人も増えているので、逆に、イスラエルでは、この2週間ほどの間に、集団免疫達成の状況になるのではないかとの希望を語っている。
それによると、イスラエルでは、3回目接種(感染予防率96%)を受けた人は262万人を超え、総人口の28%。接種2回終えて6ヶ月以内(予防率42%)の人と、少なくとも1回の接種を受け、まもなく2回目を受ける予定の人を加えると、国民の65%が、ワクチンによる、ある程度の保護を得たことになる。
これに加えて、ブレークスルーや、自然に感染して回復した人を加えると、コロナに対する抗体を得た人が国民の80%になるという計算である。この結果から、集団免疫への希望が見えてきたということである。
興味深い結果は、ここしばらく2回目接種を完了した人だけでなく、3回目接種を終えた人にもブレークスルー感染が発生することが問題となっていた件。今年初頭1-2月中のデータによると、ワクチン(ファイザー)接種を2回終えていた人は、ワクチンなしで感染し自然の抗体を得ていた人より感染する可能性が6倍も高いという結果が出ていたことである。
この結果から、ワクチン接種に消極的になる人が出たわけだが、バルイラン大学の免疫学シェリル・コーヘン教授は、これに警鐘を鳴らしていた。ワクチンせず、あえてウイルスに自分を暴露した場合、どの程度の感染になるか、わからないからである。重症化して死ぬかもしれない。
また、重い後遺症が残る可能性を考えると、自然免疫をめざすことのリスクは大きすぎると言っていた。また、別の調査では、コロナに感染した人の中で、重症になった人より軽症で終わった人の方が、臭覚の異常を残しているケースが多かった。
さらに、後になり、ワクチン接種後にブレークスルーで感染して回復した人が得た抗体は、防御率もその継続率も最も高いという結果が見えてきたということである。マカビー研究所のシェリル・コーヘン教授によると、獲得抗体で、感染に強いものから弱いものに並べ替えると以下のようになる。
まず、最も最強は、ワクチン接種完了後にブレークスルー感染して回復した人。次に、自然に感染して回復した人。次に、ワクチン接種を終えた人。最後がワクチン接種をしていない人である。*この結果は、3回目接種が始まる前の2回目までのデータなので、3回目接種がどう影響してくるかはまだ不明。
www.timesofisrael.com/study-covid-recovery-gave-israelis-longer-lasting-delta-defense-than-vaccines/
これをみると、ワクチンなしで自然に抗体を得た人の防御率は、なお、2番目に高いということであるが、それでも、ワクチンをしていることの効果は、その後に感染したとしても、その益は、ワクチンをしないことのリスクより高いということになるだろう。
いずれにしても、昨年はロックダウン下で、厳しい新年であったが、今年は、ワクチン接種と検査の活用もすすんだことで、家族揃っての新年、また嘆きの壁前でも、祈りがささげられそうである。
外国人の訪問はまだ不可:嘆きの壁に届く“神様への手紙”
イスラエルでは一時期、ワクチン接種を終えたグループの観光客の受け入れを開始した時期があったが、第4波を受けて、再び停止となった。今でもまだ単独の訪問(B2ビザ)の受け入れは始まっていない。労働ビザや学生ビザのある人とその家族については、各国の大使館の長い審査を受け、入国が認められているケースもあるが、かなり時間がかっている。
このため、例年なら、この時期のエルサレムの旧市街は、どこも観光や、巡礼で超満員になるが、今年も観光客は来ることができていない。嘆きの壁では、壁に願いを書いたメモを挟みに来ることができない人々のために、神様へのメールボックスを設置。
新年祭りに先立ち、海外から来た“神様への手紙”を嘆きの壁のラビたちが壁に投入していた。その数は、昨年に続き、今年も30%増であったという。コロナの終息や健康を祈るものが多いとのこと。