戦闘30日目:ガザ南北分離で作戦順調か:IDF報道官がハマスの人間の盾証拠提示 2023.11.6

ハマス拠点で応酬した武器 IDF HPより

11月5日は、ハマスとの戦闘が始まってちょうど30日目となった。地上戦が始まってからは1週間である。

戦闘30日目・ガザ地上戦開始から1週間

イスラエル軍は、ジャバリア難民キャンプを制覇した後、ガザ氏を包囲し、空爆と同時に本格的に地上軍を派遣。ハマス指導者らを殺害するとともに、拘束したハマス戦闘員から諜報情報を獲得して、ハマス拠点やトンネル、インフラ、武器貯蔵箇所など、5日だけで450箇所、計2500箇所を破壊したことになる。

www.idf.il/en/mini-sites/idf-press-releases-regarding-the-hamas-israel-war/battle-plans-maps-and-communication-equipment-found-in-the-hamas-stronghold-in-jabaliya/

この一連の攻撃で、ハマスの軍用拠点を制覇したとみている。特に海岸地域を制覇したことで、ガザ地区を北部と南部に分離できた形で、いよいよガザ市を包囲して、その中にいるハマスの殲滅にとりかかるとみられる。

戦場にいる兵士たちによると、地上にハマスはほとんどみることがなく、みな地下のトンネルにいるとみられている。ガザ北部にいると30万人いると推定されている民間人もほとんどみないという。

イスラエル兵たちは、地雷や罠の中、突然地上に飛び出してくる武装ハマスとの戦闘になっている。

www.ynetnews.com/article/hjfoqdh76#autoplay

空爆については、ジャバリア難民キャンプから、ガザ市、南部のラファ市やカンユニス難民キャンプにも拡大している。

人質に関する情報はない。ただ、キブツ・べエリにいたアイルランド系イスラエル人のエミリー・ハンドちゃん(8)が死亡したとみられていたが、人質として生存している可能性が高いとの情報がある。

www.timesofisrael.com/emily-hand-8-irish-israeli-said-killed-on-oct-7-now-believed-to-be-gaza-hostage/

国際社会からは、ただちに人道休戦するべきとの圧力が高まっているが、イスラエルは、240人の人質の解放がない限り、休戦はないということを明確にしている。こうした中、ヨルダンは、イスラエルとアメリカの合意を得て、ガザ市内のヨルダン関連の病院に、上空から医療物資を落下させたとのこと。

www.timesofisrael.com/jordan-sends-medical-aid-into-gaza-via-airdrop-coordinated-with-israel-us/

しかし、膨大な破壊の様子や、病院への攻撃が報じられており、イスラエルへの批判は高まる一方である。また人道的一時休戦への声も高まる中で、イスラエルは、人質の解放なしに、休戦には応じないと明確にしている。これについても非難が高まっている。

激戦地北部からは、110万人のうち推定80万人が避難したとみられていたが、戻った人がおり今も数十万人が激戦地にいるとみられる。

国連によると、ガザ地区の150万人が、自宅を追われて、域内難民になっており、学校や病院に避難している状態にある。

www.timesofisrael.com/idf-launches-widespread-strikes-in-gaza-as-ground-troops-divide-strip-in-two/

これからの焦点は、ガザ市最大のシハ病院地下トンネル拠点への攻撃だろう。これについては、何ヶ月もかかるとみられており、今後も、イスラエルの攻撃で、民間人の犠牲は避けられない状況である。

なお、ガザ周辺や、テルアビブ周辺、ベエルシェバ周辺などへのロケット攻撃はいまだに続いている。

イスラエル兵1人戦死:公園やプールからロケット弾を発射するハマス

日曜の戦闘で、イスラエル軍は、また一人兵士を失った。戦死したのは、ナハル旅団のヨハナタン・マイモン軍曹(20)である。もう1人も重傷。これでガザ地上侵攻以来の戦死者は29人。10月7日以来では346人となった。

しかし、この部隊は、子供のプールからわずか5mの地点や、民間人居住地から30mの地点にあるハマスの攻撃拠点を発見。証拠を残していた。

www.timesofisrael.com/idf-says-troops-found-hamas-rocket-launchers-near-playground-swimming-pool-in-gaza/

イスラエル軍報道官:ハマスに盾にされるガザ民間人の実情を発表

こうした状況の中、イスラエル軍は、ハガリ報道官を通じて、イスラエルが民間人を標的にしているのではないと強調する発表を行った。

1)ハマスがパレスチナ人の害になっている

①ハマスが市民の非難を妨げている

昨日は、13―16時の間にサラ・アルディン・ルートを人道開設するとして、市民らにこのルートを通じて南部へ避難するようにとアラブメディアなどを通じて呼びかけていたことを明らかにした。ところが、ハマスは、この回廊設置の作業をしていたイスラエル軍兵士を対戦車砲などで攻撃し、これを妨害したという。

ハガリ報道官によると、イスラエル軍は、これまでに、安全なへ避難するようにと呼びかけるアラビア語のビラ152万4000枚を巻いている。3色3種類、逃避回廊の新情報などを伝えるもので、色を変えることで、どれが最新かがわかるようになっているとのこと。

また電話回線を通じての録音メッセージは599万8382回。特に、民間人が多くいるジャバリア難民キャンプにむけては、ワジ・ガザより南へ避難するようにということと、武装ハマスや、その施設にいる人には危険が及ぶとの警告を、数週間前から伝えていたという。以下のクリップの中には、その録音が提示されている。

また、直接、ガザの住民と対話できる電話を通しても避難の呼びかけが行われていた。その回数は、1万9737回。「ガザ市全部か!?」と確認するガザ市民と対話する担当官の様子も紹介している。

②ハマスが病院を拠点にして市民を盾にしている

ハマスが、ガザ市民を盾にしている証拠として、病院、学校、国連施設、モスクなどの近くにあることを強調。特に病院の利用は最悪の戦争犯罪だとして、すでに発表した、ガザ最大のシハ病院地下のハマス拠点に加え、2つの病院に関する情報を公開した。

ガザ市北のビーチ近くにあるシーカ・ハメッド病院。この病院はカタールの出資でできた病院である。イスラエル軍は、この病院の建物を出たところに開口するトンネルを摘発した。このトンネルは病院地下に続いているだけでなく、ここからイスラエル軍への攻撃があったという。

さらに、この病院の建物の中からイスラエル軍を攻撃するビデオクリップも見せている。

ジャバリア難民キャンプとベイトハヌンの間にあるガザ北部のインドネシア病院。インドネシアの複数のNGOによって建てられた病院である。2010年の航空写真では、ハマス司令インフラが確認できる場所、その上に現在の病院が建てられている。最初から病院を盾にする目的があったということである。

その今はインドネシア病院が建っている、その下にあるインフラは、①(トンネルを作るための)セメント置き場がある。そこにあるセメントは、アーチ型になっており、地下トンネルに特化した形である。病院建設に不要な形である。②病院地下にある司令室へ続くトンネルへの穴

病院から75mの地点からイスラエル軍への攻撃を行う様子。これに反撃すると病院が被害を受ける形である。

③ハマスがガザ内部の燃料を搾取している

11月2日の電話からハマスが燃料を持っていることを改めて提示した。「ガザ北部の燃料1000リットルはここにあるが、明日までになくなる。これまでは、通信オフィスから取っていたが」というと、相手は、「○○病院から取っていると思ったが」と言っている。すると、「もうない。インドネシア病院が取って行った」と言っている。

2)ハマスはガザ市民の命は気にしていない。

①ハマスの発射したロケット弾約800発は、ガザ内部に着弾し、多くのパレスチナ人が死亡している。

②ハマス政治部門のモウサ・アブ・マルズークは、地下にトンネル500キロも作っておきながら、市民の防弾シェルターを作らないのはどうしてかと聞かれると、トンネルはハマスメンバーのものであるとし、ガザ住民の75%は難民だとして、彼らを保護する責任は、国連と占領者(イスラエル)であるとはっきりと言っている。

石のひとりごと

以前病院で働いていた時、パレスチナ人看護助手の男性が、旅行に行くといっていたことを思い出す。一人で行くというので、」奥様はつれていかないのかを聞くと、「へ?妻はいつも家にいるじゃないか。旅行に行く必要はない。」と普通に言っていた。

要するに、ハマスのメンタルは、私たちのものとは全く違うのであり、イデオロギーのために、市民を犠牲にすることに対して、悪いという意識は全くないということである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。