アッバス議長は、4月23日、ファタハとハマスの統一政府を発足させると発表していたが、予定より1日遅れて昨日2日、ハマスメンバー3人を含む統一政府がラマラで発足した。
アッバス議長はそのままだが、ガザのハニエ首相は退任し、ファタハの現ハムダラ首相が、統一政府の首相となる。
この政府は6ヶ月以内(年末ごろ)に、議長選挙、ならびに総選挙を行って、正式な政府が発足するまでの暫定政権、または評議会である。
ハマスがパレスチナ自治政府に反旗を翻したのは2007年。以来、パレスチナ人は西岸地区とガザ地区に分裂した歩みをしていた。しかし、今回、アッバス議長、ガザのハマス指導者ハニエ”元首相”も機嫌良く、「パレスチナ人は一つになった。」と語っている。
しかし、ハマスがイスラム原理主義をやめたわけではない。首相という肩書きはなくなるが、ハニエ氏がガザの実質的な支配力を持つことに変わりはない。逆に”正式なパレスチナ人地区の一部”として、パレスチナ自治政府や海外からの資金が入ってくるようになったというだけのことである。
イスラエルは、この統一政府が発表される前夜、緊急治安閣議を開き、次の3点を確認した。
①治安問題での協力以外、ハマスを含むパレスチナ自治政府との交渉はしない。②今後はガザからのロケット攻撃など、すべてはパレスチナ自治政府の責任とする。イスラエルはこれまで通り、攻撃には対処する。③ネタニヤフ首相に新たな経済制裁の権限を認める。
<アメリカ:暫定政権支持方向> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4526629,00.html
暫定政権発足後、アメリカは、新政権の動向を注意深くみながらとしながらも、今後もパレスチナ自治政府への支援*を継続すると発表した。*年間約5億ドル(500億円)
EUも統一政府を受け入れる趣旨と報道されている。
<今後どうなるのか>
アメリカがイスラエルと歩調をあわせて、厳しい立場をとらなかったことは、イスラエルにとっては、かなりショックだったといえる。アメリカに続いてEUはじめ、国際社会は、おおむねこの統一暫定政権を受け入れる流れになっている。
今後、国際社会がパレスチナ暫定政権を受け入れた上で、年末の総選挙でハマスが勝利し、西岸地区までハマスに支配されることにならないという保障はない。これはイスラエルにとっては大きな懸念である。
しかし、同時に、ハマスが完全にアッバス議長(PLO)の傘下に入ったとは考えにくい。またハマス以外の原理主義組織がおとなしくしているはずもない。
アッバス議長が、パレスチナ人の統一政府と言っている以上、今後、イスラエルに対するロケット攻撃、テロ行為の責任は、すべてアッバス議長とこの暫定政権が負うということを意味する。
イスラエルにとっては、大きな懸念の中にも、利点もあるということである。また、アメリカがイスラエルと一緒に厳しい経済制裁を決行した場合、パレスチナ人が暴力に訴えるようになるだろう。
したがって、今、ヒステリックにさわぎたて、かつきびしい経済制裁を行うことは控えた方がいいという意見もある。
ネタニヤフ首相と政府が今、知恵をもって対処することが必要である。
<西岸地区で銃撃戦:兵士負傷、パレスチナ人1人死亡>
さっそくだが、暫定政府が発足したその夜、西岸地区の入植地近くのタプアハ交差点で、治安部隊に近づいたパレスチナ人が発砲し、銃撃戦となった。この戦闘で、イスラエル兵1人が負傷、反撃でパレスチナ人一人が死亡した。
タプアハでは、先週金曜、自爆テロの爆弾を体に巻き付けたパレスチナ人が逮捕されたばかりだった。