バーレーンのパレスチナ経済ワークショップ:クシュナー大統領補佐官 写真出展:ynet
24,25日と、バーレーンで、アメリカが主導による、パレスチナ人の経済に関する2日間のワークショップが行われている。アメリカは、むこう10年間で、ガザと西岸地区の経済を改善するとして、総額500億ドルやインフラプロジェクトを募る予定である。
このワークショップは、トランプ大統領がもったいぶらせて言い続けてきた世紀の中東和平案の第一段階にあたる。
経済が、政治外交に敵意に大きく関係することから、まずはパレスチナ人の経済を回復させてから、政治の話に入ろうという流れである。本命の和平案自体は、まだ公示しないことになっている。今回のワークショップを取り仕切るのは、トランプ大統領の婿でもあるジェレッド・クシュナー大統領補佐官。
バーレーンでの会議には、元中東特使のトニー・ブレア氏や、IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド氏が出席した。ビジネス上がりのトランプ大統領らしく、会議はワークショップとの位置付けで、政治家だけでなく、民間のビジネスマンなども参加している。
しかし、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、いわばこのワークソップの主人公であるにもかかわらず、トランプ大統領が、親イスラエルであることは明白なので、後出しする肝心の和平案は、パレスチナに不利なものになるとして出席を拒否した。しかし、数人のパレスチナ人ビジネスマンは出席している。
イスラエルについては、ぎりぎりまで政府関係者が出席する、しないでもめていたが、政治的なタブーからか結局、政治家どころか、ビジネス関係者すら出席しないことになった。こうしたワークショップはイスラエルの得意とするところなので、イスラエル抜きというだけで、すでに残念なイメージではあった。
余談になるが、イスラエルのカッツ外務相(5月末に外相に就任)は、以前にもガザ沖にパレスチナ人のための空港を作って、ガザの出入り口を作るという案を提案していた。今の所それが実現するといった情報はない。
そのカッツ外相は、昨年から、湾岸諸国から地中海を結ぶ鉄道を提案している。これにより、湾岸諸国の石油は、ホルムズ海峡を通過せずに世界へ運搬できる。政治的にも実現は難しそうだが、案といえば案。トランプ大統領も賛成だという。
あらゆる状況にも絶望せず、突飛もないことを含め、なんらかの解決をさがそうとするのが、イスラエル・ユダヤ人根性である。
www.timesofisrael.com/rail-from-israel-to-gulf-makes-sense-says-transportation-minister-in-oman/
<蓋をあけてみれば・・・落胆するアラブ諸国>
先週、40ページにわたる世紀の取引の第一段階が公示されたが、パレスチナ人はもとより、アラブ諸国、イスラエルからも落胆の声があがった。予告されていた通り、政治をいっさい含めずに、経済にのみ焦点をあてていたのだが、それはやはり無理ということを皆が実感したようである。
たとえば、パレスチナ人は、今、西岸地区とガザ地区に分裂・敵対し、一つになる気配がまったくない。その中で、トランプ政権は、両者の間に通路を設けることを計画している。これは、パレスチナ人だけでなく、イスラエルにとっても、ありえないことである。
湾岸諸国にしても、いくらトランプ大統領との関係や、イランという共通の敵があるとしても、最終的には、パレスチナ国家設立という大義から離れることはない。結局のところ、経済を改善したとしても行き着くところがないということなのである。
政治的な解決というゴールを明示せずに、まずは経済支援をと言われても、当事者たちとしては、困惑するのみということである。結局のところ、トランプ大統領は、この問題がどれほど困難なのかということがわかっていないとも言われている。
2日間のバーレーンでのワークショップは、まもなく終わるが、何か結果が出るとはほとんど期待されていないようである。
www.timesofisrael.com/bahrain-confab-set-to-kick-off-with-loaded-schedule-but-meager-expectations/
<UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業期間)が同じ日に1億1000万ドル>
バーレーンでパレスチナ人の経済活性化に向けた投資が呼びかけられた同じ日、UNRWAが、ニューヨークで、全世界のパレスチナ人540万人を支える資金として、1億1000万ドルの献金の約束をとりつけることに成功した。主な出資者はEUである。
UNRWAによると、2019年に必要な額は12億ドルで、今回の献金を入れてもまだ1億ドル不足している。ガザへの食料配布だけでも年間8000万ドル必要なのだが、毎年不足しているという。
国連でのこうしたパレスチナ難民への献金は毎年行われているが、アメリカが、資金がテロ組織に流れているなどで、UNRWAから撤退して以来、資金不足で、組織の存続すら疑問視されるほどになっている。
こうした現状なのに、アメリカの500億ドル経済支援の申し出を断るというのも、誇り高く、必ずしも論理的ではない中東のアラブ人らしいといえばらしいといえるかもしれない。
<イスラエルとパレスチナ人との現実>
バーレーンで当事者不在の状態で、パレスチナ人経済活性化ワークショップが行なわれているのだが、イスラエルとパレスチナ、両者の現状は以下の通りであった。
1)パレスチナ市民のバーレーン抗議デモ
24日、バーレーン会議開催の日、西岸地区では、ナブルスなど各地で、パレスチナ市民たちが、「パレスチナは売り物ではない。」と叫びながら抗議デモを行った。平和的なデモではなく、石や燃えるタイヤをイスラエル兵らに投げつけるなどの行為があり、イスラエル軍も催涙弾で対処した。
ガザでは、「我々は腹が空いているのではない。尊厳を求めているだけだ。」とのデモを行った。こちらもイスラエル軍と衝突し、パレスチナ人12人が負傷した。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5536133,00.html
2)ガザ;火炎蛸で火災:イスラエルは燃料搬入差し止め
また、ガザからの火炎蛸によりイスラエル南部13箇所で火災となり、200ディナムが焼失した。これを受けて、イスラエルは、ガザへの燃料搬入を停止した。
両者の関係は、バーレーンとはまったく無関係にいつもの通りの様相である。