ネタニヤフ首相の国民へのメッセージは逆効果?:バハラブ・ミアラ司法長官は違法性を指摘 2023.3.24

バランス再考も最高裁任命法案については続行:ネタニヤフ首相のメッセージ

これまでネタニヤフ首相があまり全面に出てこないことが不思議であったが、それが昨日明らかになった。ネタニヤフ首相は、現在、汚職で起訴されている身の上にあることから、司法制度改革に、直接関わることを制限されていたのだという。

しかし23日早朝に可決された法案で、最高裁が首相を不適格として辞任させる権限を失うことが決まると、その数時間後に、ネタニヤフ首相は、デモを行なっている市民に対するメッセージを発表した。

その中で、ネタニヤフ首相は、司法制度改革については、両陣営に正論があるとして、バランスを再考すると述べた。しかし、同時に、これまで、最高裁が、国民の益となるはずだった、さまざまな法案を却下してきたこと、また、今現在のシステムでは、最高裁裁判官選出において、最高裁に拒否権があるので、結局は、最高裁内部がその暗闇の中で決める形になっていると指摘した。

そうして、ロズマン氏を通して出された最高裁選出に関する改正法案は、バランスよく与野党、司法からの意見を取り入れる形だとして、来週日曜日から採択が予定されている、この法案に関する審議と採択は、予定通り決行すると発表した。

これを受けて、代表野党ラピード氏は、審議をいったん全面的に停止しない以上、交渉には応じられない。デモはさらに拡大するだろうと述べた。

www.timesofisrael.com/pm-ill-intervene-to-make-overhaul-balanced-but-judge-selection-bill-will-pass/

バハラブ・ミアラ司法長官がネタニヤフ首相が司法制度改革に関与は違法と指摘

ガリ・バフラブ・ミアラ司法長官(ウィキペディア)

ネタニヤフ首相が、司法制度改革に関する件で、国民に対してスピーチを行ったことについて、バハラブ・ミアラ司法長官(司法側)は、違法に当たるとの考えを表明した。

ネタニヤフ首相は、汚職で刑事裁判を受けることになった2020年、当時まだ担っていた首相のポジションにとどまることを最高裁に認めてもらう代わりに、首相自身の判決にかかわるかもしれない司法問題や、司法関係者の辞任など、司法関係にいっさい関わらないことを約束していた。権力で、自分の裁判に有利な形を導きださないよう、校正を帰すためである。

このため、ネタニヤフ首相は、これまで、司法制度改革で国がどんなに混乱しても、不思議に前に出てくることがなかったということである。しかし、23日に、最高裁が首相に辞任を要求する権限をなくす法案が可決となり、もう最高裁を恐れる必要がなくなると、すぐに前に出て、国民にメッセージを送ったということであった。

しかし、バハラブ・ミアラ司法長官は、まだ裁判が終わっていない以上、ネタニヤフ首相が、司法制度改革に直接関わることは違法に当たるとの考えを表明した。また、23日に国会で可決した法案の目的は、ネタニヤフ首相が自身の立場を守ることが目的の法案であったと指摘した。

これを受けて、Movement for Quality Government of Israel(政府の質を維持するための団体)は、ネタニヤフ首相が違法行為を行っている可能性があるとして、裁判所に嘆願書をを出すと表明した。

ネタニヤフ首相とバハラブ・ミアラ司法長官は、1ヶ月後の4月24日までには、この嘆願書になんらかの対処をしなければならないという。

www.timesofisrael.com/ag-says-netanyahu-is-breaking-the-law-and-in-violation-of-conflict-of-interest-deal/

石のひとりごと

これまでネタニヤフ首相が、いっこうに前に出てこなかったことが不思議に思えていたが、これからは、もしかしたら、もっと前に出てくるかもしれない。まだわからないのではあるが。。もし出てきたら、その指導力で、状況も変わるかもしれないとも思う。

ともかく、過越までの10日ほどの間が、非常に激動になると予想される。しかし、いったん過越休暇に入れば、それぞれはどう動くだろうか、興味深い。いい意味でのリセットになればとも思うが、事態はなかなか深刻で複雑。これまでにおこったことがないような混乱にもなりつつある。(理解して記事にするのに必死)

しかし、おくらデモが大きいとはいえ、50万人。総人口からすれば、まだまだ一部が騒いでいる感じで、町の様子も観光客も普通に歩いているのだろうとは思う。アラブ系市民たちは、ラマダンでそんなことには、いっさい耳も傾けてないだろう。

ところで、この司法制度だが、日本では、自分を含め、なーんにも知らないまま、国民は、ほぼ全部政府まかせなのではないかと思わされた。政府がいろいろと操作しているのに、なーんにも知らないままで平和に暮らしている私たちは、幸せなのかなんなのか・・。確かに岸田首相の独裁とはだれも懸念してないだろう。

ひょっとしてネタニヤフ首相がいいたいのはこのことであり、政府を信頼して、司法のしばりをちょっと和らげてほしいと言っているのかもしれないとも思う。このイスラエルの混乱。大きなことにならないうちに、なんとか収まる道がみえてくればと願う。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。