テルアビブで最初の路面電車開通:安息日運行せずでデモ・バス走らせる 2023.8.21

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テルアビブの渋滞解消期待:やっと開通の路面電車

テルアビブでは17日、何十年にもわたる論議を経て、建設開始から8年後、かつ開通が2年遅れたという問題の路面電車が、ようやく開通となった。

テルアビブ南部のバット・ヤムから、市内を通過し、ペタフ・ティクバまでをつなぐ24キロの路線で、「レッドライン」と呼ばれる。

停車駅は、34で、6-8分おきに乗車できる。毎日23万5000人が利用するとみられ、渋滞で有名なテルアビブ市内の様相を変えると期待されている。

17日の開通式の後、18日(金)に運行が始まった。最初の運行に乗ろうと集まった人は、10万人を超えた。

安息日に運行しないと言う問題

路面電車の開通は、テルアビブ住民には、大変よろこばしいことであったが、100%とはいかなかった。安息日には運行しないとされたからである。

GPO

17日の開通式には、ネタニヤフ首相や、ミリ・レゲブ運輸大臣も出席していたが、その横では、市民の激しい反対デモが行われた。前政権は、レッドラインを安息日にも走らせることを約束していたが、先月、レゲブ運輸大臣が、これを覆したからである。

テルアビブのロン・フルダイ市長もこれに反対を表明するとして、開通式に出席しなかった。

安息日の運航を認めないとした理由は、この路線が、超正統派の町、ブネイ・ブラックを通過しているからである。ブネイ・ブラックの超正統派たちは、安息日の運行には反対していた。

それでも前政権は、運航を約束していたのであるが、今の強硬右派政権は、ユダヤ教政党にも頭が上がらないので、彼らの要望を尊重したということである。レゲブ運輸大臣は、「安息日を守りたい人の思いも尊重すべき。イスラエルは、ユダヤ人の国だから。」と言っている。

しかし、テルアビブは世俗派の町であり、安息日でもビーチは賑わっており、レストランは開業しているところも多い。安息日だからといって運営しない路面電車は、テルアビブ住民にとっては、不満ということである。

レッドライン止まる間は市バス運営を開始へ

世俗派の町テルアビブでは、安息日の公共交通をずっと待っていたのであった。このため、ラマット・ガンのハコーヘン市長は、安息日に、止まっている路面電車のコースに近いコースを走る市営バス、レッドラインを運行すると発表した。

Times of Israelによると、この同じルートには、すでに、シャトルバスが走っており、それに加わる形で、バスのレッドラインが開通する形である。

www.timesofisrael.com/ramat-gan-to-launch-shabbat-shuttle-service-along-tel-aviv-light-route/

要するに、イスラエル社会は、ユダヤ教をアイデンティティとする中で、世俗派と、宗教派が対立を深めているということであり、この路面電車問題も、それに関係する一面があるということである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。