エルサレムのテロ・5歳児と重傷7歳児も死亡 2023.2.13

テロの犠牲となったヤコブ君(5・右)と後で死亡が確認された兄のアシャー君(7)

エルサレム・テロで5歳と重傷7歳兄も死亡

(AP Photo/Mahmoud Illean)

10日、安息日入り前に、エルサレム北部ラモットで発生した、バス停への乗用車つっこみテロ。ヤコブ・イスラエル・パーレイ君(5)と、シュロモー・レデルマンさん(20)が現場で即死したと伝えられていた。

ヤコブ君の兄、アシャー・メナヘム・パーレイ君(7)は重傷で、病院に搬送されたが、病院到着時にはすでに心肺停止状態であった。必死の蘇生が行われたが、戻ることはなく、死亡と宣言された。

2人の少年の父親アブラハム・バーレイさん(42)も重傷で、まだ挿管され、鎮静剤で意識レベルを抑えて、呼吸器依存の状態である。

以下は、テロリスト、フセイン・カラカの車が、バス停に高速で突っ込む様子。フセインはこの直後に、付近にいた市民が射殺された。

フセインは、東エルサレム在住でイスラエルの在住権を持つパレスチナ人だった。精神疾患を持っており、入院先からたいいんして数日後であったが、ファイスブック等の書き込みによると、テロを称賛しており、警察はテロ事件として捜査している。ガザではこの事件後、またテロの“成功”を祝う様子も伝えられていた。

敬虔なユダヤ教正統派バーレイさん一家を安息日直前に襲った悲劇

父親アブラハム・バーレイさんは、安息日の祝いのために家族で、両親の家に行こうとしていた。しかし、車に、夫婦と子供3人が全員が乗れないので、息子3人はバスに乗せようと、ヤコブ君とアシャー君、もう一人10歳になる息子の3人をバス停へ連れて行った。

テロ事件発生時、この10歳の長男は、父親と2人の弟に少し遅れをとっていたため、軽症だった。事件後、長男が母親のデボラさんに電話をかけ、デボラさんがテレビで事件を知り、現場にかけつけたという。

しかし、家族はもう現場におらず、病院にかけつけると、情報もまだ十分にないまま、死亡した少年の確認のために呼び止められ、息子たちの死亡を知ることとなった。デボラさんは、4人目の子供を妊娠中である。

神は愛を持って2人を与えたが愛をもって2人をとられた:2人の母デボラさん

二人の息子を失った母でボラさん

夫も不在の中、デボラさんは、先に死亡が確認されていたヤコブ君を、安息日前に葬儀、埋葬をしなければならなかった。安息日が終わって、土曜夜には、もう一人の息子アシャー君と、もう一人の犠牲者シュロモーさんの葬儀が行われた。

今デボラさんは、ユダヤ教に基づく7日間の喪の期間に入っている。

デボラさんは、「死と生は同居している。2人は今、天に一緒にいる。神は、愛をもって2人を与えてくださったけれど、今はまた愛をもって取られた。」と語った。また、夫のアブラハムさんが、目覚める時に、このことに耐える力が与えられるようにと願うと語っている。

デボラさんの元には、一緒に喪に服している女性たちがいる。またデボラさんによると、多くの人々から支援の声や手が差し伸べられているという。「2人は、社会全体の子供だったと感じている」と語っている。

www.timesofisrael.com/now-they-are-together-in-heaven-mourns-mother-of-boys-slain-in-jerusalem-ramming/

石のひとりごと:「主は与え、主はとられる」になぐさめはあるか・・

安息日前のあまりにも悲惨すぎるテロ事件が、また発生してしまった。“また”と書かざるを得ないというのが、イスラエル人として生まれた人々の異常な日常なのである。

5歳、7歳というかわいい盛りの息子たちを突然に失い、夫も重傷・・・。母親で妻のデボラさんの痛み苦しみ、また10歳長男のショックは想像を絶する。しかし、デボラさんも、多くのテロ犠牲者家族のように、「主は愛をもって与え、今、愛をもって取られた。」と言っている。これは聖書の以下の聖句からきている。

「私は裸で母の胎から出て来た。また、裸でかしこに帰ろう。主は与え、主は取られる。主の御名はほむべきかな。」(ヨブ記1:21)

世界一長い苦難の歩みをして来たユダヤ人、ホロコーストの不条理も経験したユダヤ人が、徹底的に学んだことは、この世界の絶対的に完全な主権は彼らの神、主にあるということである。

それは私たち人間の理解を全く超えているものであるから、理解できなくてもそう受け取るしかない。しかし、それは諦めではなく、そのわからないことの背景にも必ず良い理由があると信じるというのがユダヤ人なのである。

しかし、今回のデボラさんの言葉の中に、「愛をもって」と書かれていることに感動した。この言葉が入ってい他のは初めてだった。

写真を見る限りだが、無論、デボラさんの顔には深い苦悩が見える。しかし、この「主は与え、主はとらえる。」という考えかたが、もしかしたら、神なしの人間の世界にのみ生きている人々にはない、なぐさめがあるのではないかと思ったりする。

これがあるからこそ、犯人に対する憎しみに支配されることからも守られるかもしれない。夫であり、父親であるアブラハムさんの早い回復と、目覚めた時の支えのために、デボラさんと10歳の長男、祖父母や家族、地域の人々の心が守られ、支えられるようにと祈りたい。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。