アメリカ政府は、これまでの借金がかさみ、とうとう借金額の限界に達している。この事態を受けて作成したオバマ政権の予算案が、先週、議会を通過しなかったため、アメリカ政府からの支払いができなくなった。そのため部分的な政府の休業状態が今も続いている。
もしアメリカ議会が10月17日までに、政府の経済活動をフルに再開できなければ、アメリカがいわば「破産」ということになる。するとアメリカ株(国債)を持っている国々が大きな打撃を受けて、世界経済が大混乱に陥る。
オバマ大統領は、先週、インドネシアでのAPEC(アジア太平洋経済協力)でロシアのプーチン大統領と会談する予定だった。しかし、これをキャンセルし、対処にあたっている。*APECにはケリー国務長官が代わりに出席した。
<どうすれば、アメリカの破産は回避できるのか>
回避の方法としては、議会が借金の上限額を上げて、さらに国債を発行して現金を得ることができれば、借金の支払いに充てることができ、とりあえず破産を回避できる。
実は、アメリカ政府が、借金の限界に達するのはこれがはじめてではない。実は歴代大統領の時代からもう40回以上も限界に達し、そのたびに、借金の上限を挙げてしのいできたのである。
オバマ大統領は、今その上限を上げるためにはどうしたらよいのか、議会、特に対抗勢力である共和党との交渉を行っているのである。しかし今回は、借金の上限問題だけが予算案が通らなかった理由ではないと言われている。
<アメリカの国内事情:オバマ大統領の新しい医療保険制度をめぐって>
予算案が議会を通らなかった背景には、オバマ大統領が提唱する国民皆保険制度、いわゆる「オバマケア」を実現させたくないという共和党の思惑があるという。
アメリカには現在、日本のような国民皆健康保険制度がない。そのため貧しい人は医療を受けられないという課題がある。オバマケアでは、こうした人々を救済する一方、これまで雇用主からの社会保険を受けていたり、自腹で高い医療保険に加入していた人々にとっては様々な不都合が生じることになる。
つまり、共和党は、「政府の破産」を切り札に、オバマ大統領にオバマケアをあきらめるなら、予算案に合意するという、取引のような形となっていたのである。
ところが、オバマ大統領がなかなか譲らず、本当にアメリカ政府が休業に入ってしまった。このままだと本当に国が破綻するかもしれない危機的状態になりはじめている。
そのため、共和党議員らが、オバマケアを止めることはできないとして譲歩する方向で動いているという情報がある。
<アメリカがエジプトへの軍事支援を停止へ>
お金がなくて、てんやわんやのアメリカだが、昨日、アメリカ政府は、エジプトへの軍事支援を停止すると発表した。理由は、エジプト軍と、ムルシ派の衝突で50人以上が死亡するという事態になっているからだと言っている。
しかし、エジプトが今のところ内戦に発展しないでいるのは、エジプト軍が強大な力でイスラム主義勢力を押さえているからである。エジプト軍が弱体化することは、イスラエルの治安にも関わることになる。
また、アメリカとエジプトの関係が悪化することは、イスラエルとエジプトの和平条約が危うくなるという可能性も否定できない。これらのことから、アメリカのエジプトへの軍事支援停止は、様々な論議を呼んでいる。