どうなるアメリカとイスラエル 2012.11.9

アメリカでオバマ大統領の再選が決まった。今後アメリカはどうなるのか、イスラエルとの関係はどうなるのか、専門家の間で憶測がとびかっている。

<オバマ大統領再選、イスラエルへの影響>

オバマ大統領はこれまでの大統領より、相対的にイスラムに理解、イスラエルにはやや厳しい大統領だった。最近、オバマ大統領とネタニヤフ首相の関係が、冷え込んでいるということは内外に明らかになっている。また異例のことだが、ネタニヤフ首相は、ロムニー候補への支持を対外的にも明らかにしていた。

そのため、オバマ大統領再選のニュースは、ネタニヤフ首相の本音としては”残念”また少々”まずい”状況になったと言われる。閣僚の中には実際に落胆のコメントを出した者もいた。

ネタニヤフ首相は、オバマ氏に祝辞を出し、両国の協力関係強化を確認するコメントを出す一方、アメリカとのさらなる関係悪化を防ぐため、閣僚らに「独自のコメントを控えるように。」との指示を出した。

再選されたオバマ大統領が、来年1月のイスラエル総選挙控えたネタニヤフ首相に対し、パレスチナ問題などでイスラエルに圧力をかけるといった”復讐”をするのではとの声もあるが、専門家たちは、両首脳の個人的な不仲が、両国の関係悪化にはつながらないと分析している。

とにかく、アメリカとの関係修復が重要であることは、どの専門家も同じ見解。

<アメリカのイスラエルへの関心が今後低下していく見通し>

今回のオバマ氏再選は、黒人はじめ、スペイン系や女性票など、いわば社会のマイノリティと思われる人々の支持が基盤となった。

今後、オバマ大統領を支持したマイノリティの人々が、アメリカの伝統的なイスラエル支援の方針を継続維持するかどうか、イスラエルはみきわめていかなければならないとクリーマン教授(テルアビブ大学)は警告する。

また今回、ユダヤ人の票70%が、イスラエルには厳しいとみられるオバマ大統領に流れていたことも注目された。最近、アメリカの若年層ユダヤ人たちにとっては、アメリカのイスラエル対策は、優先順位の4から5番目にまで転落しているのだという。

アメリカの次世代ユダヤ人層のイスラエルへの関心が薄くなっているということである。これもまた今後、アメリカ世論がイスラエルから離れていく兆候のひとつである。

<オバマ大統領の中東政策はどうなる?>

オバマ大統領は、2008年、先の任期の初期、中東諸国をめぐってイスラム社会との和解をめざした。またイスラエルとパレスチナの和平推進に絶大な力を入れた。

しかし、その後、中東ではアラブの春が勃発、予想に反して親米政権が次々に倒れ、反米感情はこれまでにないほど高まってしまった。イスラエルとパレスチナの和平も頓挫して、再開の見通しすらない。大統領の中東政策は苦々しい経験しか残っていない。

今後オバマ大統領は、中東政策にはきわめて慎重になるとみられる。しかし、中東には現在棚上げ状態で、大統領の決断を待っている問題が山積みだ。緊急を要する課題とは以下の通り。

①シリア問題に介入するのかどうか②エジプトのイスラム主義政権へどう対処するのか。これに加えて、春夏までには、イランに対する軍事介入に関しても決断せざるを得なくなるだろう。

アメリカで21年間、外交に携わってきたツビ・ラフィア氏は、「もしロムニー氏が大統領に就任していれば、大統領オフィスに落ち着くまで最低1年はかかると思われる。しかしオバマ氏なら、明日にでもイランを攻撃しようと思えば可能だ」と語る。ただしオバマ大統領は軍事行動にはかなり慎重。 

*先週、イランがペルシャ湾の国際空域において、アメリカの無人探査機に向かって発砲していたことがわかり、問題となっている。

<今が分岐点:これからアメリカはどうなる?>

アメリカの借金は、40兆ドル(約3200兆円)に上ると報じられている。これ以上進むとアメリカ経済が崩壊する可能性もあり(財政の崖)、今期の大統領が少しでも改善できるかどうかで今後アメリカがどこへ向かうかが決まってくる。

またアメリカは、イラクやアフガニスタン攻撃、様々な中東政策で明らかな成果を出すことができず、権威とリーダーシップを失いつつある。そのため、中東はじめ、アジアでも地域独自の勢力が立ち上がりはじめている。

テルアビブ大学のクリーマン教授は、これはアメリカに、世界のリーダーとしての自信と熱意が落ちているからだと分析する。それは実際に力を失うよりも深刻な傾向だと教授は考えている。

また、クリスチャンの視点からすると、オバマ大統領が「同性結婚容認」「中絶容認」であることは決して小さなことではない。

オバマ大統領が当選してから、コロラド州とワシントン州でで”医療において”大麻の使用が合法化された。
また本日8日、ワシントン州では同性結婚の合法化を可決したとの報道が入ってきている。

アメリカの道徳が急速に落ちていく可能性がある。今回の結果を多くのアメリカ人クリスチャンの多くが危機感を持って受け取っている。

<日本との関連>

アメリカの国債を最も多く抱えるのが日本である。アメリカがこれほどの借金をかかえながらまだ破綻しないのは日本が借金の徴収をしていないからともいわれる。もしアメリカが破綻したら、日本も共倒れということになる。

また、アメリカの勢力が落ちると言うことはアジアでのアメリカの勢力が落ちることも意味する。すると今上昇気流に乗っている中国がいよいよ進出してくるだろう。まずは台湾がとりこまれ、日本にもせまってくるかもしれない。日本がアメリカの後ろ盾を失った時の、北朝鮮の動きも気になるところだ。

中国の指導者も来週、交代となる。世界はいよいよ新しいステージにすすんでいるようである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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