エルサレムから車で40分ほどのところにあるユダヤ人入植地ベテル。このコミュニティーには、土地がパレスチナ人個人の土地の上に建てられているとして、問題になっているビルが2つある。
そういうわけでこのビルにはだれも住んでいないのだが、国と対決するベテル住民にとっては、象徴的な意味がある。このビルは、昨年、最高裁からいったん撤去処分が決まったものの、入植地側では、「法的な所有権を得ている」との訴え、そのままになっていた。
その建物について、今回、最高裁が改めて、「これらの建物は、違法に建てられている。撤去を命じる。」との判決を出したのである。
これを受けて、入植者の若者らが建物に立てこもり、28日、撤去作業前にやってくる治安部隊と衝突となった。
翌日は、住民を巻き込むデモが発生。負傷者の報告はないが、衝突は暴力的となった。
その29日、治安部隊は、こもっていた若者たちを引きずり出し、2つの建物はイスラエル政府の派遣したブルドーザーで破壊された。
また、これに平行し、サマリア地方北部のサヌールでも右派入植者勢力と治安部隊が衝突し、催涙弾を使用するに至っている。
ネタニヤフ首相は、入植者たちの怒りを鎮めるため、補償として、ベテルに住宅300軒の建築許可を与えると発表した。しかし、ネタニヤフ首相の場合、同様の約束をしておきながら、アメリカの圧力が来るとすぐに約束を反古にすることが何度かあった。
そのため、ベテル住民は、もはや、ネタニヤフ首相を信用できないと語っている。そのため、ベテル住民は、ネタニヤフ首相の300軒建築許可の話が来ると、即刻、300軒建築のための礎石を設置したと伝えられている。
ベテル在住の友人によると、こうした微妙な政治状況ではあるのだが、ベテル住むことを希望する人は順番まちで、もし本当に300軒が建てば、すぐにでも入居者はいるとのこと。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/198770#.Vbtg_6UWnA8
<社会学者ヤイル・シェレグ氏の分析>
今年は、2005年に、イスラエル政府がガザからユダヤ人コミュニティ9000人を強制撤去させてからちょうど10年になる。ベテルでの様子は当時を彷彿とさせる光景だった。
ガザのユダヤ人コミュニティにいた人々の中には、まだ仮設住宅にいる人も少なくない。農園を手放し、農業に戻れるとの政府の約束も守られないままになっているという。
この10年の間に、住宅の価格は2-3倍に跳ね上がった。もともと家を買うには少なすぎる政府からの補償金である。もはや、トレーラーハウスとよばれる仮設住宅から出て行く希望は持ち得ない状況となっている。
この人々は、政府の奨励を受けてシナイ半島、続いてガザで開拓を行った宗教シオニストのパイオニアたちである。政府に奨励されて0から開拓したにもかかわらず、政府に撤去を命じられたことは、理由はなんであれ、まさに「裏切り」以外のなにものでもなかった。
そのため、宗教シオニストたちが、このガザ撤退を境に、政府への信頼を失い、政府へのデモが徐々に暴力的になってきている。今後、その傾向は悪化し、パレスチナ人との衝突もエスカレートするとシェレグ氏は分析、懸念していると語った。