パレスチナの深刻な経済危機・コロナ危機とイスラエルの対処 2021.8.23

パレスチナ人労働MUSSA QAWASMA/REUTERS

切っても切れないパレスチナ自治政府の経済とイスラエルの関係

パレスチナ自治政府の経済は破綻に直面している。自治政府が民間銀行から借りられる資金はもう底がついており、政府関連で働くパレスチナ人への給与の支払いが滞るという事態になっている。自治政府の破綻は、そこへハマスやイランなど何者が入り込んでくるかわからず、イスラエルとしては、そのまま放置するわけにいかないというのが現状である。

経済危機陥った理由はいろいろあるが、自治政府が指摘するのは、イスラエルが自治政府の代わりに徴収した税金の支払いが一部保留にされている点である。イスラエルは、通過税や、物流にまつわる税金などを、自治政府に変わって徴収しており、そこから、自治政府に供給している水道代などを差し引いている。

また、最近では、自治政府が、イスラエルへのテロ行為などで死亡したパレスチナ人の家族に対して支払われている報奨金を不当として、その分をこの代理徴収税から差し引いての残りだけを、自治政府に支払っているのである。

しかし、当然ながら、パレスチナ人の経済危機の原因はそれだけではない。実際のところ、パレスチナの経済はイスラエルなしにはありえない。現在、イスラエルでの労働許可を持つパレスチナ人は10万人を超えている。このうち、約8万7000人はイスラエル国内の農業や建設業に、約3万5000人は西岸地区のユダヤ人入植地に工場などでの労働に従事し、生活の糧をえている状態にある。

www.ynetnews.com/magazine/article/bkwn00btky

パレスチナ人の経済危機は、対処しないと、またテロ活動になっていく可能性がある。パレスチナ人への労働許可は、経済的な支援策の一環、テロ対策の一環としても、これまでからも実施してきた対策であった。ガザとの衝突は、こうした努力にもかかわらず、発生したということも覚えておきたい事実である。

1)イスラエルで働くパレスチナ人1万5000人に労働許可

イスラエル内閣は、8月1日、パレスチナ自治政府の経済危機に対処するため、パレスチナ人のイスラエル国内での労働許可を新たに1万5000人に出すことを決めた。

これに先立ち、イスラエルのイサウイ・フレッジ地域担当相は、パレスチナ自治政府の担当者らと交渉を何度か行なってきたとのこと。フレッジ氏は、将来は、1000人ほどのパレスチナ人をホテル業界で働いてもらうことも考えている。こうした市民レベルの交流から両者の関係回復に意欲を語っている。

ガンツ防衛相も、パレスチナ自治政府をできるだけ強化し、ハマスに主導権を握らせないことだと5月の戦闘の後に語っていたが、こうした市民レベルでの協力が、自治政府を助けることになるとして、この案を合意したとのこと。

www.timesofisrael.com/ministers-okay-granting-15000-more-work-permits-to-palestinians/

2)カタールからガザ地区へのキャッシュ搬入に合意

前の記事にも書いたように、イスラエルは国連も介入する中で、ガザへの支援金を歓迎する声明を出した。

西岸地区とガザ地区のコロナ情勢

パレスチナ人のワクチン接種はかなり遅れている。Times of Israelによると、ワクチンを少なくとも1回は受けた人数は、ガザで5.5%、西岸地区で18%にとどまっている。

自治政府の保健省によると、ファイザーと400万回分の契約を行なっているが、これまでに届いたのは100万回である。(西岸地区人口:256万人、ガザ地区:165万人、東エルサレム:19万人)

このほか、国連のCOVAX、中国製ワクチン、ロシアワクチンなども受給しているが、配送の遅れなどで接種がすすんでいないとのこと。また、イスラエル国内のアラブ人と同様、ワクチンに消極的な人も多いのが接種がすすまない原因とみられる。

今のところ、感染者数は、少なく経緯しているが、これは単に検査数が少ないという可能性もある。パレスチナ自治政府保健省は、9月に入って、子供たちの学校が始まってからの感染拡大に懸念を表明している。

www.timesofisrael.com/with-millions-unvaccinated-palestinians-fear-school-year-coronavirus-surge/

世界最速で3回目のワクチンを行なっているイスラエルの横で、パレスチナ人がこの様相なので、世界のイスラエルに対する目は厳しいといえる。イスラエルは何度か、ワクチンの供給を提案したのだが、期限切れ間近であるなどして、これを断られてきたのであった。

その後、様々なところから、ワクチンが入るようになると、自治政府ももはやイスラエルからのワクチンを期待しなくなったようである。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。