日本UNRWAへ4億円支援署名:パレスチナ難民75万人から今570万人 2021.8.23

日本からパレスチナ難民へ4億円を約束

17日、日本の茂木外相は、パレスチナ自治政府を訪問した際、自治政府日本政府代表事務所の馬越正之大使、自治政府のマリキ外相とUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)のパートナーシップ・ディレクターのアマール氏が同席する中、UNRWAを通じて、370万ドル(4億円)の支援を約束する文書に署名していたことがわかった。

reliefweb.int/report/occupied-palestinian-territory/japan-contributes-us-37-million-food-assistance-palestine

OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、続く紛争とコロナ禍により、ガザ市民の68%以上が食料の調達に困難を覚えているという。日本の支援は、UNRWAがガザの19万人に配布している3ヶ月ごとの食料支援と医療支援に使われるとのこと。

UNRWAに対する日本政府の支援は1953年に始まり、その後大きなウエイトを占めるようになっている。昨年中、日本のパレスチナ難民への支援額は世界5位。

今回の4億円支援の約束は、今年に入ってから2回目で、日本は、6月にも530万ドル(5億5000万円)を支援していたとのこと。つまり、今年に入ってからだけで、日本はパレスチナ難民に10億円近い支援を行うことになる。

アメリカは、トランプ前大統領が、支援金がハマスに搾取されているとして、2018年、UNRWAへの支援を停止した。世界ダントツ1位の支援国であったアメリカが、支援を停止したことで、UNRWAの活動は著しく縮小を余儀なくされていた。

しかし、2021年にバイデン大統領に交代すると、まもなくの4月、アメリカは支援を再開すると表明。1億5000万ドル(約165億円)を拠出すると発表したのであった。

アメリカからの支援金は、おもにパレスチナ人の子供たち50万人の教育に使われるという。*UNRWAの活動は、西岸地区、ガザ地区だけでなく、レバノン、ヨルダン、シリアなどにいるパレスチナ難民も対象になる。

www.unrwa.org/newsroom/press-releases/united-states-announces-restoration-us-150-million-support-palestine

イスラエルとしても、アメリカや日本の支援が、テロ組織に流れることがないのであれば、歓迎するところである。茂木外相は、この署名の後に、イスラエルを訪問し、この件も報告していると思われる。

石のひとりごと:70年たっても難民ということ

UNRWAが設立されたのは、イスラエルが建国した後の1949年で、活動はその翌年1950年からであった。この当時、支援対象となるパレスチナ難民は75万人と記録されている。それから71年、当時の難民から子、孫、ひ孫までが加わって、現時点で、UNRWAの対象になっているパレスチナ難民の数は、570万人、発足当時の8倍にのぼっている。

これは、日本で言えば、終戦後から今にいたるまで、その孫、ひ孫の代になってもまだ、まだアメリカや世界のお世話になっている形である。なぜこの支援がこれほど長く継続できるのか。それは世界がまだイスラエルが、パレスチナ人たちを“占領”しているという理解からであり、パレスチナ人が独立できていないからである。

この事態を打開するため、イスラエルはパレスチナ人の自立を支援しようと、パレスチナ政府の前身となる自治政府の立ち上げに協力しようとした。それからもう30年近くになろうとしているが、まだ実現の見込みはたっていない。

結局のところ、パレスチナ人は、イスラエルにすっかり立ち退いてもらうことを望んでいるのであり、これでは解決がない、完全な自立にもつながらないという事態なのである。

結果的に、パレスチナ自治政府は、ただただイスラエルを非難し、イスラエルが自立を妨げていると世界に訴え、その同情をかいながら生き延びてきたということである。

世界の支援が、結果的に、依存を生み出してしまっているとも考えられるが、しかし、今となっては、それを止めてしまうと、人々は生き残れない、だからテロで訴えるという悪循環になってしまっている。

一方、ユダヤ人は、ホロコーストという、不条理中の不条理を通っても、それを怒りや不服という形で世界に訴えることはしなかった。立ち上がりに世界の支援は期待しなかった。期待できないということをよく知っていた。

そうして、70年たった今、ユダヤ人の国イスラエルは、世界に支援を送る立場に立っている。この違いはいったいどこからくるのだろうか。

選民、選ばれた民ということばを、ユダヤ人は、他より優位とか、常に特別に祝福されたというイメージではとらえていない。ある使命のために神が一方的に選んだと理解している。それは苦しみを伴うもので、世界を修復する(ティクーン・オラン)、世界を祝福するという働きのためと思っている。

だから、イスラエルの場合、絶滅を避けるために防衛に妥協はなく、防衛の範疇で先制攻撃もあるのではあるが、単なる怒りや恨みから攻撃に出ることはない。

敵の様子を見ながら、最終的にはなんとか支援する側に立とうとしている。実際のところ、それこそが最高の防衛であること、それなしに本物の防衛もないからである。

しかし、難しい点は、イスラエルを憎む者たちは、いくら支援の手を差し伸べても、それが、感謝と和解に繋がっていかないという点である。

それはそうすることが、当たり前なのであり、和解のしるしと受け取られることはないということである。

また敵からのほどこしと考えてしまうと、それは逆になお深い怒りに変わってしまう。今回もガザへのカタールの現金搬入が始まったところで、国境での衝突となり、ガザの人々によって、イスラエル国境警備退院が負傷したのであった。本当に難しい問題である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。