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晴天の第73独立記念日
戦没者記念日が明けると一転、15日はイスラエルの73回目、独立記念日であった。昨年は、厳しいロックダウンで式典も全てオンラインであったが、1年たった今、コロナは順調に終息の様相にあり、18日からは、屋外でのマスクの着用義務も解除される。
エルサレムのヘルツェルの丘では、例年のような華やかな国家式典と花火が行われた。人々は、昨年とは打って変わっての開放感の中で、この日を迎えた。
国家式典での恒例のトーチライティングには、コロナで重症となり回復したシンガー、活躍した医師など、コロナ関連の貢献者や、教師、警察官、またテロの犠牲になった家族などが選ばれた。
海外から祝いのメッセージを送った人の中には、ファイザーのCEOで、ホロコーストサバイバーの息子でもあるユダヤ人、アルバート・ブーラ氏も含まれていた。式典では、イスラエルからブーラ氏への感謝がまず表された。
ブーラ氏は、「ファイザーとイスラエルが協力して、ワクチンの集団摂取が新型コロナを撃退し命を救うことができると証明することができた。誇りに思う。
ネタニヤフ首相や、関係者に感謝する。私たちは生活を元に戻す道を作ることができた。これは全世界にとっても喜ばしいことである。」と述べ、イスラエル人たちに、独立の祝いを述べた。(以下ビデオ1:27あたり)まさにコロナへの勝利を宣言するかのような独立記念日のようでもあった。
以下は、独立記念日に入った夜のテルアビブの様子。
翌日は、毎年独立記念日恒例のバーベキューを、祖父母と孫たちも一緒に楽しむことができた。
独立記念日には空軍機が全国の上でエアーショーを行うことが恒例である。昨年は、医療従事者を励ますために病院上空を飛んだだけだったが、今年は、エルサレム、テルアビブ、ハイファ、ベエルシェバと、屋外でピクニックを楽しむ人々の上空でエアーショーを行うことができた。 今年は特に、F16の他、最新式 F35ステルス戦闘機など様々な空軍機も飛んだという。
大統領官邸では、特に良い働きをした兵士たち120人が招かれ、リブリン大統領とネタニヤフ首相、ガンツ防衛相と独立を祝う祝典が、例年のように行われた。
まさにバイバイ・コロナの様相の良い日となった。
現代イスラエル:人口:13万7000人増えて930万人(1.5%増)
独立から73年。イスラエルはどんな国になっただろうか。中央統計局によると、昨年生まれた新生児は16万7000人。移住者として加わった人は1万6300人。亡くなった5万人を差し引いても13万7000人増え(1.5%増)、932万7000人となった。独立当時は80万人6000人だったので、今は、約12倍になった。
このうち、ユダヤ人は、690万人(73.9%)独立以来、イスラエルに移住したユダヤ人は330万人で、このうち半数近い人は1990年代以降にイスラエルに移住したとのこと。73年たった今、今いるユダヤ人のうち78%がイスラエル生まれ、イスラエル育ちとなっている。聖書時代のヘブル人はいなくなったが、現代ヘブル人が形成されつつあるということである。
総人口のうち、アラブ人は196万人(21.1%)。イスラエル人のおよそ5人に1人以上がアラブ人ということで、その割合は増加傾向にある。この他、ユダヤ人でもアラブ人でもない人は46万7000人(5%)
イスラエルは若い国で、総人口の28.1%は0−14歳の子供。65歳以上の高齢者は12%である。日本はちょうど、その逆で、0−14歳が12%、65歳以上が28%である。
世界にいるユダヤ人は、1470万人(2019)で、このうち47%がイスラエルに住んでいる。次に多いアメリカには、全ユダヤ人の38%が住んでいる。それに続くのはフランス、カナダ、イギリスなどとなっている。
www.timesofisrael.com/before-its-73rd-independence-day-israels-population-stands-at-9-3-million/
スタートアップ国:世界の祝福
新型コロナにより、日本でも今やイスラエルという国を知らない人はないまでになった。なんでも新しいものに挑戦するイスラエルは、世界に先駆けて、ファイザーのワクチンで集団接種を実施した。
あれよあれよという間に国民も実験台になってしまったのだが、幸い、これが功を奏し、世界に集団接種の効果を証することになったのである。アバウトが許されず、失敗した場合に責任をとことん追求する日本文化ではありえないことであっただろう。
世界の困ったことに解決し、世界に貢献するというのが、イスラエル人の中に自然にある性質である。このため、コロナに振り回された昨年中も様々な発明が行われていた。
イスラエルには、世界有数のハイテク、スタートアップの国で、世界唯一とされる企業が60社あり、その資産は10億ドルに上る。
特に注目されたものとしては、①20秒で結果を出すコロナ検査システム(シェバ医療センター)②人工角膜の移植で盲目の人が見えるようになる(ラナーナ・コルネットビジョン)、③ドローン・ネットワークによる配送システム(イスラエルのピザ・ハット(北部)がドローンによる配達開始)
④海水淡水化(イスラエルの水85%は海水の淡水化で供給することに成功。ガリラヤ湖の水に依存しなくなった)⑤祖先の写真をビデオにする技術、⑥家庭内医療検査(病院に行かずに肺、心臓、喉、耳の検査を行うシステム)⑦顔認証での支払いなど。
www.jpost.com/israel-news/independence-day-the-technologies-making-israel-proud-in-2021-665109
以下は、4月に行われる医療技術スタートアップイベント。登録が必要だが、日本からもオンライン参加が可能で、登録も無料。
medinisrael2021.israel-expo.co.il/expo
コロナによる経済の縮小は、EUがマイナス6.5%、アメリカはマイナス3.5%、OECD諸国の平均がマイナス5.5%であったところ、イスラエルは、マイナス2.5%と、他国より小さく抑えられていたことがわかった。
その背景にあるのは、ハイテク産業にあると見られている。チャンネル12が計算したところによると、イスラエルの労働人口の10%が、ハイテク関連で働いているとのこと。
www.timesofisrael.com/israel-at-73-by-the-numbers-12th-happiest-in-world-over-10-work-in-high-tech/
こうした中、先月発表された国連によるハッピー度調査において、イスラエルは、11位であった。
石のひとりごと:祖国への敬意
イスラエルと見ていると、健全な祖国に対する誇りが形成されているように思う。みんなでたてあげる母国、世界の祝福になる母国という概念が、子供たちにも健全に引き継がれているのである。このため、祖国を立ち上げてくれた高齢者たちへの敬意もきちんと残されている。
イスラエルはまだ建国73歳と若い。ホロコーストから建国に至るまでの苦難は、まだまだ当事者も生きている。このため、高齢者への社会保障は十分ではないといった課題はありつつも、高齢者には尊敬を払うという社会通念、文化はしっかりと残されている。
ウオルター・ビンガムさん(97)は、ギネスブックに、世界で最も高齢の現役ジャーナリストとして登録されている。イスラエル在住の記者なら知らない人はいないというのがウオルターさん。97歳とは嘘ではないかと思うほどにお元気である。イスラエル政府プレスオフィスは、ウオルターさんに敬意を払うイベントを行っていた。
日本も敗戦という苦難の中から、日本をたてあげてくれた高齢者たちは、今もまだ健在である。聞けば聞くほどにすごい時代である。その当時の話に耳を傾ける若者たちはいるだろうか。高慢になることなく、祖国への敬意はどうやったら育つのだろうかとイスラエルと見ていて時々思わされる。
まだまだ苦難は続きそうなイスラエルだが、背後におられる(いや、先頭を行く)神さまと取っ組み合いをしながら、皆できっと乗り切っていくだろう。イスラエル、73歳。おめでとう!