エルサレムはイスラエルの首都?:どうするトランプ大統領 2017.12.3

アメリカでは1995年の議会で、イスラエルの首都をエルサレムと認め、大使館をエルサレムに移動するという法案が通過し、これを1999年までに実施するということになった。

しかし、エルサレムについては、肝心の現地イスラエルとパレスチナがまだ合意しておらず、アメリカが、先にエルサレムを首都と認めて、大使館を移動すると、著しい治安の悪化を招く可能性がある。

このため、歴代大統領は、期限切れごとに、これを延期するという大統領令に署名するというのが、伝統になっている。期限は半年ごとに来るため、トランプ大統領もすでに6月に署名している。

その半年がまたやってきたたらしく、先週から、ペンス副大統領が、トランプ大統領は、イスラエルのアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに、近々移動させること検討していると語るなど、この問題に動きがあるとして、メディアが騒ぎ始めた。

トランプ大統領は、アメリカ大使館のエルサレムへの移動を公約にあげていた。また、大統領が代表を務める共和党と、福音派キリスト勢力からの圧力もある。

さらに今年、4月に、ロシアのプーチン大統領が、突然、西エルサレムについては、イスラエルの首都に認めるとの認識を、明らかにしたこともあり、トランプ大統領としては、先を越された形で、アメリカがこの問題に何もしないわけにはいかないという流れにもなっている。

www.timesofisrael.com/in-historic-first-russia-recognizes-west-jerusalem-as-israels-capital/

しかし、イスラエルの同盟国アメリカとしては、ロシアのように、無難に西エルサレムだけを首都と求めるわけにはいかず、東西統一したエルサレムを首都として認めることが求められている。無論、これは、パレスチナだけでなく、アラブ社会全体を敵にまわすことを意味する。

世間が騒ぐのを受けて、トランプ大統領は、大使館は移動せず、「アメリカはイスラエルの首都はエルサレムと認める」という認識を発表することを検討しているという流れになっている。

しかし、たとえ大使館は移動しなくても、この宣言をすることは、現地の当事者どうしが決める事だとするアメリカの立場を大きく変える事になり、大きな動きになる。最終的な結論は、早ければ、今週水曜にも発表があるとみられる。

<パレスチナ・アラブ社会の反応>

これを受けて、まっさきにパレスチナ自治政府の交渉担当エレカット氏が、「アメリカがイスラエルを首都と認めることは最後通告になる。危険な火遊びだ。」とコメント。アッバス大統領府スポークスマンは、「和平交渉を破壊する行為だ。」と述べた。

アッバス議長については、3日、ヨルダン、エジプト、フランス、カタールに、トランプ大統領にエルサレムに関する発表をとりやめるよう圧力をかけるよう要請する動きを始めたとの情報が入っている。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5050918,00.html

アラブ同盟も、「このアメリカの動きは、平和ではなく、過激派の暴力につながる。」とのコメントをHPにアップした。このコメント通り、ハマスは、「インティファーダを再燃させる。」と豪語した。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5050831,00.html

<国連総会:イスラエルのエルサレムへの権利を否定>

上記のような事態を受けて、ニューヨークの国連総会(193カ国)では、イスラエルとエルサレムの関連を否定する採択が行われ、賛成151、反対6、棄権9で、可決された。

www.jpost.com/Israel-News/UN-disavows-Israeli-ties-to-Jerusalem-515730

<それどころではない!?トランプ政権の違法ロシア接触疑惑>

大事な決断を迫られているトランプ大統領だが、足元には火がついている。

トランプ政権は、政権担当前にロシアと接触していた疑いがかかっていた件で、この度、その中心人物とみられるフリン元大統領補佐官が、自らの虚偽罪を認め、捜査当局にロシアとの接触に関する証言に応じていることが明らかとなった。

アメリカでは、政府関係者以外が他国政府関係者と接触することは違法なので、もしこれが証明された場合、トランプ政権が違法行為をしていたということになる。これが、トランプ大統領に実際に、どう影響してくるかは不明だが、大きなスキャンダルには違いない。

トランプ大統領は、こうした疑惑をまっこうから否定している。このようなときに、トランプ大統領は、エルサレム問題のような重要な問題について決断するということである。

www.bbc.com/japanese/42202810

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

コメントを残す

*