イスラエル高官として18年ぶり:ラピード外相モロッコ訪問とその意義 2021.8.12

ラピード外相とモロッコのボーリタ外相 GPO

ラピード外相がモロッコを2日間訪問

11日、ラピード外相が、今はまだ正式な国交がないモロッコの首都ラバットに到着。イスラエル高官としては、2003年以来、18年ぶりの公式訪問を果たした。この訪問は、アブラハム合意の中で、急速にすすんだ両国の合意に基づくものである。

ラピード外相は、ラバットに到着後、モロッコのナセル・ボーリタ外相と予定をはるかに超えた時間を費やして会談。その後、外相間の政治的な事柄、文化やスポーツにおける両国の協力について、両国間のフライトの3項目についての合意に署名した。

ラピード外相は、12日にはラバットに外交事務所を開設し、将来の正式な国交にむけた準備も始まる。ラピード外相は、今回の自身のモロッコ訪問に先立つ7月に、ボーリタ外相をイスラエルに招いたとのことで、次には、ボーリタ外相がイスラエルを訪問し、モロッコの外交事務所を開設するみこみになっている。

ただ先行きはまだ容易ではない。ボーリタ外相は、イスラエルが、1967年前の国境線にまで戻る形でパレスチナの国が立ち上がる二国家二民族案を支持すると改めて表明しているからである。しかし、いずれにしても、国交にむけてスタートが切れただけでもイスラエル外交にとっては大きな前進となった。

*これまでのモロッコとの関係

モロッコには歴史的にもユダヤ人が多く住んでおり、イスラエルにもモロッコ系のユダヤ人は少なくない。モロッコには今も大きいユダヤ人コミュニティがある。ラピード外相は、カサブランカのシナゴーグを訪問し、当地のユダヤ人とも交流している。

イスラエルからは1999年に、ダビッド・レビ外相が訪問。その後2000年に、第二インティファーダ(パレスチナ人の蜂起とイスラエルとの衝突)が発生したことから、モロッコがイスラエルとの交流を停止。2003年に、シルワン・シャロム外相が回復を求めて訪問したが国交を回復させることはできなかった。

しかし、その後も、モロッコは、イスラエルのユダヤ人がモロッコを訪問することを認め、水面下では、イスラエルとの協力も続けていたのであった。こうして、2020年にトランプ大統領とネタニヤフ首相がアブラハム合意を推進しはじめると、モロッコもイスラエルと関係回復に乗り出したのであった。

すでに今年7月、両国の間の直行便も就航が始まっている。モロッコの空軍機がイスラエルの空軍基地に着地し、イスラエル軍との国際的な訓練に参加したとの報告もある。将来、UAE、バーレーン、スーダンに続いて、イスラエルと国交正常化に向かうアラブ諸国4ヵ国目になることが期待されている。

www.timesofisrael.com/in-rabat-lapid-holds-lengthy-talks-with-moroccan-fm-who-urges-2-state-solution/

北アフリカでの大きな外交的前進

モロッコとの友好関係は、モロッコ一国に限るにとどまらない。モロッコとの関係改善が進んでいることも先月、イスラエルがアフリカ連合のオブザーバーの立場を認められたことにも関係があるとみられている。

アフリカ諸国は、人口も多く、技術開発や市場という視点でもイスラエルにとっては魅力的な地域である。ネタニヤフ前首相の時代から、アフリカ諸国に対し、様々な支援活動や、農業技術の提供などを行い、イスラエルに対する信頼を培ってきたのであった。その結果が今、花開き始めているともいえる。

さらには、モロッコが地中海に面していることから、モロッコとEUヨーロッパ連合との協力活動や、モロッコとUAEとの開発協力にも足掛かりになる。パレスチナ人との交渉においても、あらたな仲介ルートにもなりうる。さらには、イランが進出するアルジェリアのすぐ隣に拠点ができるので、防衛の視点でも、モロッコとの関係改善は、イスラエルにとっては大きな前進になりうる。

この合意については、アメリカのブリンケン国務長官も、祝福を表明している。今回のモロッコとの合意は、まだ正式な国交ではないものの、イスラエルにとっては、歴史的な大きな一歩になったと言える。

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石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて18年。学校・企業・教会などで講演して15年になります。