歴史的ベネット首相がバーレーン公式訪問:イランにイスラエルが孤立してないことを強調か 2022.2.22

ベネット首相の歴史的バーレーン訪問:今この時に

アブラハム合意の国の一つ、バーレーンは、小さいが、イランと関係のあるカタールに近く、本家イランからも目と鼻の先にある国である。イスラエルにとっても防衛上、非常に重要な位置にある。また、東西の物流においても、位置的にその入り口として重要な国である。

2020年に締結されたアブラハム合意に基づき、2021年9月、ラピード外相が、首都マナマにイスラエル大使館を開設。今年2月3日には、ガンツ防衛相が、バーレーンをサプライズ訪問し、ハリファ国王と、互いに安全保障覚書に署名した。この訪問は、ウイーンで行われているJCPOAの交渉中に、予想外に行われたのであり、イランに釘をさす狙いがあったとみられている。

これにより、中東でイスラエルとの互いの治安に配慮すると考えられる国が、エジプト、ヨルダンに加え、アブラハム合意による、UAE、バーレーン、モロッコ、スーダン(?)となった。

www.timesofisrael.com/gantzs-bahrain-visit-signals-to-iran-the-alliance-against-it-is-growing-and-public/

それから約2週間後の2月15日、ベネット首相が、バーレーンへの初公式訪問を果たした。世界に両国の関係をアピールした形である。ベネット首相はこの時、マナマのシナゴーグでユダヤ人社会の人々に会った他、アメリカの第五艦隊副総督のブラッドフォーク・クーパー司令官にも会い、この地域において、軍事的にもアメリカとの親密な関係をアピールしたのであった。

www.timesofisrael.com/in-bahrain-bennett-pledges-to-aid-country-in-fight-against-iran/

なお、この時期、アメリカからは、15日、民主党下院議長のナンシー・ペロシ氏(81)が、イスラエルを訪問した他、21日には、アメリカのAIPAC(親ユダヤロビー団体)主催で、共和党議員27人と、民主党議員14人が、イスラエルを訪問している。

www.timesofisrael.com/dozens-of-us-lawmakers-descend-on-israel-with-aipac-affiliated-trip/

トルコの関係改善も?:ヘルツォグ大統領が3月にトルコ訪問決定

エルドアン大統領になってから、トルコは、ハマスを支援するなど、極端な反イスラエル路線になり、両国の関係は、政治的にはかなり冷え切ったといえる。しかし、水面化でのビジネスや民間レベルでの交流はそれなりに継続されてきたと言われていた。

しかし、今、トルコがまた親イスラエル路線に軌道修正しようしているかのニュースが続いている。イスラエルの大統領オフィスは、3月9-10日にヘルツォグ大統領が、トルコへの公式訪問することが決まったと発表した。

数日中に、訪問の調整を行うとして、エルドアン大統領の最高顧問である副外相たちがイスラエルを訪問するという。あれほどイスラエルを憎む声明を出していたエルドアン大統領だが、ヘルツォグ大統領の訪問を歓迎すると言っている。この訪問が、両国の関係改善を象徴づけるものになると期待されている。

トルコは最近、イスラエルよりのサインをだしていたが、イスラエルはなかなかこれを信じなかったようである。しかし、昨年11月には、トルコで防衛上問題のある写真を撮ったとして逮捕したイスラエル人夫妻を、解放したりしていた。

背景には、トルコの経済がかなり悪化していることが考えられる。イスラエルとギリシャやキプロスが協力している地中海の天然ガスパイプラインにも関わっておらず、逆に地域で孤立する状態に陥っているといえる。

さすが、生き残り問題となると実質を追う中東。態度をころっと変えても悪びれることもなさそうであるし、イスラエルも、治安に有利であるとなると過去の問題に、こだわり続けることはなさそうである。

石のひとりごと:ヤコブのぬかりなさ

イスラエルは、いろいろ非難されるが、その技術力や発想力で世界に役立つことを発信し続けている。また、世界の祝福になろうとする考え方で、災害支援には、我先に手を挙げる。嫌われているようで、実質的な目でみれば、イスラエルとのつながりを持つ方が得策だと考える国は意外に多い。

また、イランという強敵を前に、アメリカを最大友好国に持ちながら、ロシアもそれなりに味方についけているイスラエル。ぬかりなく、外側を固めつつ、イランへの攻撃も行なっている。その攻撃もまた、ただ攻撃するというのではなく、鍵となる人物や、危険になる可能性のある基地だけ早めに叩いておく。無駄な動きはない。

もちろん声明は、ほとんど出さず、できるだけ世界の話題にならないようにする。市民の犠牲が出ないようにすることは言うまでもないことである。その先鋒に立っているイスラエルの諜報機関は、今、世界がどんどん動いている中、情報集めにはんぱなく動いていることだろう。

このぬかりなさ、聖書のヤコブを思い出させる感じもある。さらに、今のベネット首相は、正統派として、イスラエルの神を心と生活の中心に据えている人物である。イスラエルとイスラエルをとりまく動きから目が離せない時代に入っている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。