アメリカの中東テコ入れ展開中 2013.4.23

<ケリー国務長官、1ヶ月に4回中東歴訪>

先月オバマ大統領がイスラエルを訪問して以来、アメリカが中東へのテコ入れを活発に行っている。

ケリー国務長官にいたっては、オバマ大統領に同行した後、そのまま中東に残留して単独で中東を歴訪。2週間後、再びトルコ、イスラエルを訪問。先週、再度トルコに来て、エルドアン首相とアッバス議長にも面会している。

活発な訪問の目的の一つは中東和平問題の前進と、イスラエルとトルコの和解、シリア問題への対処である。

1)中東和平問題

ケリー国務長官は「イスラエルとパレスチナの交渉は、ここ2年以内になんとかしなければ、和解への道は完全に失われるだろう。」との見解を述べている。しかし、今のところ、めざましい前進は報告されていない。

2)トルコとイスラエルの和解

トルコとイスラエルとの実質的な和解交渉は、まだ成立していない。逆にエルドアン首相は、これまで保留になっていたガザ訪問を5月に行うと発表した。

ケリー国務長官は、「それは、イスラエルとの和解を促進する行為ではない。」として、ガザ訪問は控えるよう、エルドアン首相に要請した。しかし、聞き入れられなかったという。

なお、トルコとイスラエルの関係は、政府レベルでは途絶えているが、民間レベルの両国間のビジネスは実質今も活発に行われている。

3)シリア問題

ケリー国務長官は、トルコにおいて、シリア反政府勢力代表と会談。人道支援物資2億5000万ドルを追加支援すると伝えた。

シリアでは昨日も、政府軍による空爆で市民を含む80人が死亡している。現在、反政府勢力が要求しているのは武器だが、シリア内部にアルカイダなどの過激派がいるので、アメリカが武器を提供することはできないのである。

この点、トルコは軍用車両などの武器を反政府勢力に提供している。

*シリアの化学兵器は・・?

先月、シリア内部で、化学兵器が使われたとの報告が2度ほどあった。昨日、ヨルダンは、シリア内部の化学兵器を監視するイスラエルのドローン(無人偵察機)が上空を通過することに対する許可を出した。

アブドラ国王は、先月オバマ大統領がヨルダンを訪問したときにこのことを決断したという。ドローンは偵察機であるが、攻撃する能力も備える。

また、シリアの化学兵器に対処するため、ヨルダンにアメリカ軍が配備される予定との報告もある。

<ヘーゲル米国防長官訪問、100億ドルの武器を同盟国へ提供>

ケリー国務長官に加えて、21日から、アメリカのヘーゲル国防長官がイスラエルを訪問中。今日はテルアビブでヤアロン国防相と会談している。ヘーゲル氏は、「イスラエルの直面しているイラン問題は、アメリカにとっても全く同じだ」と述べ、イスラエルの現状に対する理解を示した。

ただし「イスラエルとアメリカでは、「いつ」武力行使に踏み切るのかという点で異なっている。」と語った上で、「もしイスラエルが、自己防衛のためにテヘランの攻撃を決断するなら、アメリカがそれを止めることはない」との立場を強調した。

ヘーゲル氏は、イスラエルの他に、サウジアラビア、アラブ首長国連邦と3国あわせて100億ドル分の最新武器を売却する協定を締結する予定だ。

イスラエルは、これに加えて、今年度30億ドル分の武器現物支給も受けることになっている。今回注目されるのは、空中給油機(飛行中の戦闘機に給油する飛行機)と、世界で初めて兵員輸送機オスプレイを購入する点である。

この他にも最新式のレーダーも導入する。これらの装備があれば、地域での戦力を優位に保つことができるとヘーゲル氏。

また、ヘーゲル氏は、イスラエルだけでなく、アメリカに友好的でイランの進出を快く思わない湾岸アラブ諸国に武力支援することで、シリアやイランへの強いメッセージ(核開発の停止要請)であると語っている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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