ネタニヤフ首相は、2日汚職問題(ベゼック関連*)で、先週、警察の尋問を夫婦そろって5時間も受けた。
しかし、首相業は続く。尋問の翌日の先週月曜、ネタニヤフ首相は、毎年恒例のAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会/最強の親イスラエル・ロビー団体)での演説のため、サラ夫人とともにアメリカへ向かった。
*ベゼック汚職問題
ベゼック(電話通信会社)の筆頭株主であるエロノビッチ氏が、同じく株を保有していたメディアに、ネタニヤフ首相に都合のよい報道にするよう働きかけを行い、その見返りに、政治的経済的な利益を得ていたという疑い。
ネタニヤフ首相にはこの件を含め、4件の汚職疑いがかけられ、国内では不信感が高まりつつある。
<トランプ大統領と会談> www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5146126,00.html
本国では針のむしろのネタニヤフ首相だが、アメリカでは、ホワイトハウスでトランプ大統領夫妻に暖かく迎えられた。5月のアメリカ大使館のエルサレムへの移動式典の際には、大統領自身もエルサレムへ行く”かも”という発言も得ている。
また、AIPACでは、演説に先立ち、ベネズエラのモラレス大統領とも会談。モラレス大統領は、アメリカの大使館がエルサレムへ移動した2日後、つまりは、5月中にベネズエラの大使館をエルサレムへ移動させると約束した。
これについて、後にエルサレムポストが、パレスチナメディアの報道として伝えたところによると、アラブ同盟がモラレス大統領に、大使館のエルサレムへの移動をキャンセルするよう要請したとのことである。
しかし、アメリカに続いて大使館をエルサレムへ移動させると表明している国々は、グアテマラ以外にも10カ国ほどあるという。5月にならないとわからないが、米大使館が実際に移動すれば、いもづる式に次々と諸国の大使館が移動してくるかもしれない。
走り出した列車は、もう止められないといった様相でもある。
<AIPAC演説:世界を変えるイスラエル> https://www.timesofisrael.com/full-text-of-netanyahus-2018-address-to-aipac/
AIPACでネタニヤフ首相演説は、自分が汚職で警察の尋問を受ける立場にあることはまったく気にもしていない様子で、ますはアメリカの軍事支援やトランプ大統領のエルサレムへのコメ大使館移動について、はでに感謝した。
続いて、イスラエルの強い軍、強い経済など、ポジティブなイメージを連発。何度もスタンディングオベーションを受けた。またイスラエルのテクノロジーがアフリカやインドの農業を変えたことや、世界のサイバーセキュリティにおけるイスラエルの役割を強調。
アジアやアフリカ、南アメリカでイスラエルの技術が求められ、いまやイスラエルと関係を持とうとする国々が160以上あると地図を見せながら語った。イスラエルは孤立していると言われるが、そうではなく、逆にイスラエルを憎む国がボイコットされるだろうと豪語した。
危機については、イラン、イラク、レバノンが結びついて地中海に続き、イランがイスラエルを攻撃しやすくなっていると指摘。そうはさせないと強く語った。
同時にイラン国内では、イスラム政権と違って自由を求める市民たちがいる。彼らに敬意を表する。今の過激な政権が倒れたら、この人々とイスラエルはよい関係も可能だと語った。
イランは、かつてプリムの話の時代はペルシャであった。今のペルシャはハマンだが、やがて、クロス王もでてくるはずだと語った。
ネタニヤフ首相の演説では、首相自身が汚職問題で、刑事尋問を受けるほどあやうい立場にあるにもかかわらず、そのことには全く触れず、むしろイスラエルに関する良さを豪語したため、アラブメディアは「傲慢」と報じたという。
<ネタニヤフ首相の国内での立場:連立存続の危機>
アメリカで相当もちあげられたネタニヤフ首相だが、イスラエルへの帰国は、まさに針のむしろの中へ戻るようなものである。
今一番問題になっているのが、連立政権存続の危機。
現在、連立政権に加わっている超正統派政党の党首、ヤアコブ・リッツマン氏(統一トーラー党)、アリエ・デリ氏(シャス党)が、超正統派ユダヤ教徒のイシバ神学生には兵役を免除するという法案を通さないなら、2019年度の予算案を支持しないと発表した。
続いて、リッツマン氏は、「この法案を通さない政府は存続する意味がない。」として、連立を離脱する可能性まで示唆した。
なんとか折り合いをつけるため、超正統派側は、イシバ学生の従軍はないにしても、なんらかの妥協をもりこもうとしているが、リーバーマン防衛相は、これを一蹴。イスラエル軍が提出する法案しか認めないと言っている。
超正統派政党を失うと、今のネタニヤフ政権は立ち行かなくなり、国会を解散・総選挙するしかない。しかし、そうなると、政府は暫定政権となり、イスラエルは国会が不在であるために、1年近く、大きな決断はできないということになる。
これは5月にも米大使館がエルサレムへ移動しようという時であり、北部での戦争が懸念される今、総選挙はだれがみても、今は時ではない。金曜にアメリカから帰国したネタニヤフ首相は、土曜夜からさっそく、リッツマン党首など超正統派政党との交渉に入る。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5152625,00.html
しかし、国会解散以前に、ネタニヤフ首相自身が、汚職問題で、尋問を受けている最中であり、マンデルビット司法長官の決断しだいでいつでも逮捕されるかもしれないという状況にある。
イスラエルの内政は、なかなか厳しい状況にあるといえる。