ガザから南部へロケット弾の雨:6人負傷 2018.8.9

8月8日夕刻からガザから、スデロットなどイスラエル南部地域に向かって、ロケット弾が夜中になってもまだ発射され続けており、イスラエル市民に負傷者も出て、緊張が高まっている。イスラエル軍はガザへの空爆を行っている。

<9日深夜までの経過>

8日夕刻18:00、ガザから、国境で対地下トンネルの防護壁を建設機材に向けて砲撃があった。これを受けてイスラエル軍戦車がガザへ砲撃を行った。

続いて19時半ごろ、ガザからロケット弾8発がイスラエル南部に向けて発射され、2発はアイアンドームが撃墜したが、少なくとも2発が、スデロット市内に着弾。家屋2軒と車数台を破損した。

これにより、男性(34)が、飛び散ったガラスの破片で負傷。もう一人の男性は、別の場所で、破片にあたって負傷。負傷者は、13歳を含む少なくとも6人となっている。このほか、妊娠中の女性など15人がショックで病院に搬入された。

現場では、上空で、ロケット弾を迎撃する様子を市民が撮影しており、大きな爆音で、付近にいた子供達が悲鳴でパニックになって、シェルターへ走る様子が伝えられている。

その後、22時ごろから、再び、ホフ・アシュケロンを含む南部広範囲で、立て続けにサイレンが発動なり続けた。深夜0時までにロケット弾70発がガザから発射された。これまでにアイアンドームが4発迎撃し、その他は、空き地に着弾している。

イスラエル軍は、ガザのトンネル関連地域やコンクリ工場、ハマス基地関連など12箇所への空爆を行った。現在、リーバーマン防衛相と幹部は緊急に対策を検討している。

www.timesofisrael.com/idf-strikes-hamas-posts-in-gaza-as-fresh-rocket-sirens-sound-in-south/

この一連の攻撃は、昨日7日、ガザからイスラエル側へ発砲した2人が、イスラエル軍戦車の反撃で死亡したことへの反撃とみられる。ハマスは、反撃を予告し、「今夜イスラエル人は寝られないだろう」と言っていた。

www.timesofisrael.com/idf-shells-gaza-post-after-soldiers-come-under-fire-2-hamas-men-said-killed/

<ハマス:イスラエルとの長期停戦合意は最終段階と発表>

ガザとイスラエルの衝突がエスカレートしているが、この4ヶ月、エジプトと国連(後の情報ではトルコとカタールも関与)は、ハマスに対し、イスラエルとの長期停戦に応じるよう交渉を行ってきた。

先週、ハマスの海外指導者アル・アロウリもガザ入りし、なんらかの動きがあるとみられた。8日15:00ごろ、ハマスは、合意の最終段階に入ったと発表。試験的に2週間ほどの停戦を実施し、今月末までに、5年間の停戦合意に持ち込むと伝えられた。

合意内容の詳細はまだ正式発表されていないが、ハマスがイスラエルへの攻撃を5年間停止する代わりに、ガザとエジプト、イスラエルの国境を開放することと、ガザへの経済支援策などがあげられている。

自分から始めた暴力をやめるといって、その見返りを要求するというのもおかしな話だが、イスラエルが、これに少し傾いているのは、この合意に、ハマスにとらわれてままになっているイスラエル人2人と、2014年以来のイスラエル兵2人の遺体を返還することがふくまれているからである。

しかし、ハマスは、イスラエルに収監されているハマス・メンバーら多数を交換に開放することも要求しており、イスラエルがそうたやすく応じるとは考えにくい。

www.timesofisrael.com/hamas-treating-egyptian-ceasefire-proposal-with-open-mind/

ハマス指導者たちは、8日午後、最終の合意に向けて、カイロへ向かった。同時にハマスが拠点を移動させる動きがみられたため、イスラエル軍は、ガザに近い南部地域の一部道路を閉鎖して警戒態勢に入っていたところ、ロケット攻撃が始まったということである。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5325237,00.html

ガザからの一連の攻撃を受けて、ネタニヤフ首相は、明日朝、治安閣議を招集し、ハマスと進んでいるとみられる停戦合意を見直す方向とみられる。

<パレスチナ組織の不一致>

いつものことながら、ハマスがイスラエルとの停戦合意をすすめることについて、ハマス海外指導者のアル・アロウリが、他組織とも意見を一致できるよう、働きかけていたが、結局、一致できなかったようである。

ハマスとイスラエルの停戦合意に反対する組織が合意を妨害している可能性もある。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。