15日、ヘルシンキで、世界の2大超大国米ロの首脳会談が行われた。公式会談としては初めてであった。これほどの大きな会談であるのに、準備期間は2週間しかなく、したがって根回しもなく、議題も不明のままの会談で、メディアはかなりふりまわされていたようである。
予想された通り、特に具体的な成果や変化はなかったが、会談後記者会見において、トランプ大統領が、米大統領選挙時のロシアの介入容疑を追求しなかったことで、自国の諜報機関を愚弄したとして大騒ぎになった。
この容疑を不問に伏すことで、ロシアが今後も民主国家の選挙や政治に介入することを容認することになり、やがては民主主義がロシアの社会主義に飲み込まれてしまうというのが、懸念されたのである。
さすがに、ペンス副大統領とポンペイオ国務長官のすすめで、トランプ大統領が、記者会見での発言を撤回修正するに至っている。
また、この首脳会談に先立ち、特にクリミア問題でロシアと対立するNAT0首脳会議があり、トランプ大統領も出席。経費負担でアメリカとヨーロッパが衝突。その後、トランプ大統領が、クリミア問題にも言及せず、プーチン大統領に接近する様子に懸念を持ったEU首脳も多かったと思われる。
イスラエルでは、両首脳がシリア問題において、イスラエルの治安を守ることで一致したというニュースがトップで流されていた。
トランプ大統領によると、アメリカもロシアもイスラエルに協力していることを確認し、共に、1974年以来のイスラエルとシリアの国境を守ることでの合意を確認したとのことであった。余談だが、プーチン大統領はネタニヤフ首相のファンだとトランプ大統領は言った。
www.jpost.com/Israel-News/Trump-and-Putin-praise-Israel-in-Helsinki-diverge-on-Syria-and-Iran-562733
具体的な内容は不明だが、両首脳会談の前に、双方に周到に根回しをしたネタニヤフ首相は、結果に満足していると語っている。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/249087
しかしながら、シリアからイラン勢力を一掃してほしいというイスラエルの要請が、どこまで実現するのかは、まったく不明である。
<会談前日にシリア領内軍施設攻撃:イスラエルか>
なお、この会談の前日、シリア領内アレッポ郊外の空港に近い産業地帯が、空爆を受けて大破した。これにより、シリア人6人と外国人3人が死亡したと伝えられている。アルジャジーラは、死者は22人で、このうち9人はイラン人だったと伝えている。
シリア国営放送は、攻撃はイスラエルによるものと断定。被害は物損のみと伝えていた。
イスラエルはノーコメントだが、シリアでのイランの台頭を抑えたいロシアが、イスラエルの攻撃を黙認。アメリカも黙認したと考えられている。
イランがいつまで堪忍袋を保つのかは不明だが、アメリカの経済制裁が本格的に始まるのを前にすでに経済が打撃を受けていることから、反撃はできないのか、どうなのかは不明。イスラエルとしては、今のうちに、イランをできるdけ無力化しておこうということのようだが、米ロ両首脳もこれを黙認しているということである。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5312137,00.html
INSSの分析:http://www.inss.org.il/publication/trump-putin-summit-emphasis-dialogue-not-outcome/?utm_source=activetrail&utm_medium=email&utm_campaign=INSS%20Insight%20No.%201075
<石のひとりごと:米ロ首脳会談の目的>
今回の首脳会談では、特に具体的な変化はなかったと批判めいた報道が出ているが、両者が公式に出会ったということだけでも大きな成果と言えるのではないだろうか。憎み合っていた過去を忘れ、これからの地球の運営について、前向きに協力する道づくりの入り口を作ったということであろう。
ロシアのハッキング疑惑は、見過ごしてはならない重要な項目である。しかしながら、今世界が直面している問題は、シリア、イラン、北朝鮮、イエメン、ブレキシット(イギリスのEU離脱)、中国との貿易摩擦に、様々な地球気候変動による大災害・・・
トランプ大統領が、「これは良いことだ。」と言っているように、世界で最も核兵器をもつ2大超大国が、いつまでも冷戦もどきの関係を続けている場合ではない。トランプ大統領は、今、米ロ2国を頂点に、世界が秩序を取り戻すといった新しい世界の体制をつくるべきだと考えているという。
世界情勢は実際のところ、政治ではなく、結局のところ、お金の流れで決まるといわれる。こうした実質をかぎわけるビジネスマンのトランプ大統領の考えは、よく考えれば、一利あると思わされることは少なくない。
とはいえ、「予測不能」のトランプ大統領。この先何をしでかすのか、まったく目の離せない大統領である。