トランプ大統領が、先週金曜、またもや爆弾を落とした。2月にティラーソン元国務長官が約束したシリア復興のための支援金2億ドルを凍結するという。
同時に、「シリアのアメリカ軍(2000人)をすみやかに撤退させる。ISをすぐにも壊滅して撤退する。あとは他の国にやらせたらいい。」と言った。理由は、今まで相当な大金を使ってきたが、アメリカには何の益もなかったからということだが、実際には11月の中間選挙への対策ではないかとも言われる。
トランプ大統領のこの発言には、ペンタゴンはじめ、側近もすべてが反対を表明。ISはまだ壊滅したわけではないし、中東での影響を維持するため、たとえ小規模でもアメリカ軍を残留させるべきだと主張した。
これを受けて、トランプ大統領は、「いましばらくは駐留させる。」といい、今の所、具体的な撤退のめどは明示しなかった。
しかし、この一連のことで、アメリカが、シリアに関して明確なビジョンを持っておらず、近い将来、本当に撤退する可能性もあるということは、中東諸国と世界に、十分示した形になった。
<ロシア、イラン、トルコ3国サミット>
トランプ大統領のシリアからの撤退発言は、イラン、トルコ、ロシア3国の首脳サミットの直前であった。3国首脳は先週火曜、トルコのアンカラに集まり、シリアのこれからについて話し合った。
この3国がシリアに関するサミットを開くのはこれが2回目。前回も今回もアメリカはカヤの外だった。
アメリカは、軍事超大国であり、現在もシリア領内に2000人規模の軍隊を置いている。それにもかかわらず、このサミットに含まれていないということは、アメリカの足がすでに中東から半分出ているということであり、すでに影響力は失せていることを表している。
トランプ大統領のシリア撤退発言が、このサミットの直前のことであったことから、トランプ大統領は。これら3国にシリアを任せることに同意しているのではないかと疑う分析もある。
ややこしいのは、ロシアとトルコはシリアにおいては、立場上敵同士であるという点。ロシアが、シリアのアサド政権を支持しているのに対し、トルコは反政府勢力を支援する立場である。
しかし、トルコは今、シリア北部アフリーンのクルド人地区を占領するなど、独自の動きを始めており、アメリカやNATOからはみ出す傾向にある。このため、ロシアはトルコを引き込もうとしているのである。
Yネットによると、トルコは、先週、ロシアとともに原子力発電所建設を開始した。200億ドルの取引だという。ロシアは、トルコがアメリカとNATOと決別することを推進しようとしているとの分析もある。
www.jpost.com/International/Fallout-from-the-Turkey-Iran-Russia-meeting-549022
<ネタニヤフ首相がトランプ大統領と緊急電話会談>
シリアからアメリカが撤退し、ロシア、イラン、トルコの3国が支配するシリアの誕生は、イスラエルにとっては非常に危険である。Yネットによると、ネタニヤフ首相は、先週火曜、トランプ大統領に緊急の電話をかけ、電話会談を行った。
この3国の支援を受けて、シリアのアサド政権は、勢力を急速に回復しており、もうすぐシリア南部やゴラン高原(シリア側)にいる反政府勢力の制圧にかかるとみえ、ゴラン高原の非武装地帯に戦車を並べはじめたという。
これは、ヨムキプール戦争後の1974年に、イスラエルとシリアが合意した内容に反するため、イスラエルは、これについてUNDOF(国連兵力引き離し監視軍)に申し立てをすると予想されている。
www.timesofisrael.com/assad-regime-places-tanks-artillery-in-buffer-zone-with-israel-report/
またイランは、テヘランから、シリアを通って、地中海へ抜ける高速道路の建設を行っているが、シリアに駐留するアメリカ軍の存在が妨害となり、イランは、道路のコースを変更を余儀なくされた。
しかし、もしアメリカが撤退すれば、この道路も一気に完成してしまうだろう。これはイスラエルにとっては非常に危険である。
ネタニヤフ首相とトランプ大統領の電話会談の詳細は明らかではないが、トランプ大統領はイスラエルの治安維持には必ず協力すると約束したとのこと。