今年もエルサレム・マラソン 2018.3.11

エルサレムでは、今年も9日、毎年恒例、今年8回目になる国際マラソン大会が行われた。前日までは日中、暑いぐらいの春爛漫だったが、この日は、曇りがちで若干寒く、いわばマラソンびよりだった。

参加者はこれまでで最大の3万5000人。このうち4000人が中国、アメリカ、ドイツ、ポーランド、ポルトガル、リトアニアなど72カ国から参加していた。都市では香港からの参加者が最大、続いて北京となっている。

日本からは、わかっているだけだが、BFPJapanのボランティアで、エルサレムに滞在中の松田ゆうさんと、田畑望さんが、「テロ被害者支援基金」を募るキャンペーンとして、BFP現地本部のチームとともに走った。

マラソンコースはシオンの丘も含まれ、坂も多い。走るとなると、ニューヨークのマラソンなどよりよほどチャレンジである。優勝は今年もケニアの選手。ゲストとして、オリンピック金メダルも受賞したエチオピアの選手も招待で参加していた。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5151784,00.html

www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/242930

<エルサレムはアメリカより安全:バルカット市長>

トランプ大統領が、アメリカ大使館をエルサレムに移動させると発表した後、ハマスをはじめパレスチナ過激組織が、今週中、特に金曜日には、テロに立ち上がるよう、呼びかけていた。イスラエルの日本大使館からも注意の呼びかけが来ていたほどである。

エルサレムでは、朝5時半からマラソンコース周辺の道路は閉鎖。要所に警察官たちが立っていたが、特に治安部隊が増強されていることもなく、いつも通りであった。マラソン大会は、朝6時45分に始まり、午後2時には終了。幸いテロも、事故もなく終了した。

エルサレムというと、特に日本では、危ないというイメージがあるが、バルカット市長は、アメリカよりはるかに安全だとアピールする。

少々悲しい数値ではあるが、町の治安を表す数値として、人口10万人中、殺される人の数というのがあるという。バルカット市長によると、アメリカは全国平均で5人。ワシントンDCは15人。南アフリカは40人。エルサレムは1人。

バルカット市長は、エルサレムはワシントンDCより、15倍安全だとアピール。市長自身もマラソンに参加した。

バルカット市長から日本の皆様へ:https://www.facebook.com/yumi.ishido.3/videos/1755121011205804/

<伸び続けるエルサレムの観光>

バルカット市長はビジネスマンで成功した人物。8年前に、このマラソンを始めたのはバルカット市長であった。市長はパリやニューヨークでのマラソンを見て、「これは町の宣伝になる!」と思い立ったという。

マラソンに参加した松田さんは、「イスラエル独特の風景や街並み、また春の温かくさわやかな気候を思う存分楽しめた。ユダヤ人が話しかけてきたりして、マラソンしながらとても盛り上がったのがイスラエルらしくていいなと思いました。」と感想を語っている。

確かにマラソンに参加することにより、エルサレムの町の良さを披露できているようである。エルサレムには、聖書遺跡という目玉はあるが、スポーツ、カルチャーを取り入れることでも観光を活性化できるとバルカット市長は考えている。

バルカット市長になってから、マラソン大会に限らず、イベントが目白押しで、海外からだけでなく、地方に住むイスラエル人もエルサレムに来るようになった。

意外かもしれないが、世俗的なユダヤ人の多くは、宗教的で政治的にもストレスの多いエルサレムを嫌う傾向にある。

しかし、今はそういう地方のキブツなどに住むイスラエル人グループが、エルサレムの聖墳墓教会とか、イースターのパレードをみるツアーで大型バスに乗ってやってくるようになっている。

時にはどこかの公民館であろう高齢者グループに遭遇することもある。そのひとたちに必死でイスラエル人ガイドが、キリスト教について説明する様子も時にみかける。

スタートアップ企業家の誘致にも積極的だ。エルサレム市では、最近、観光業に関係するスタートアップ起業家のための交流オフィスも設立。昨年、ホテルの部屋数を1000部屋増やしたが、4年以内にさらに4000部屋増やす計画だという。

エルサレム開発委員会のイラニット・メルクワイア氏によると、エルサレムでは2017年前半に、テロ事件が続いたことから、観光業は打撃を受けた。しかし、バルカット市長はあきらめず、様々な対策を取り続けたため、2017年後半、エルサレムを訪問した人の数は、前年に比べ、37%増加した。

観光省のエイヤル・カーリン氏によると、2016年中のイスラエルへの観光客は290万人だったが、2017年は360万人と100万人以上増えた。今年は、ローシーズンと言われる1−2月だけで60万人を記録しているので、年間記録をさらに更新すると期待されている。

イスラエルが、数年おきに大きな戦争やテロもある国であることを思えば、過去10年の間、観光業は伸び続けてきたというのは、驚きだととメルクワイア氏は語っている。

<石のひとりごと>

エルサレムというと、テロや問題も多く、人々は苦しみに打ちひしがれつつ、必死に祈りながら生活しているイメージもあるかもしれないが、どっこい。楽観的で、とにかく明るい町である。その強さの秘訣は、やはり多様性であろう。

ありとあらゆる人々がおり、ありとあらゆる考え方があるので、何があっても驚かない。多様であるがゆえに、起こってくる問題も非常に多様である。しかし、倒れてもまたすぐに起き上がり、さらにそこからまた新しいものを生み出し、世界に発信する。

私たちクリスチャンはエルサレムのためにとりなすのではあるが、ここに住んでいると、逆にエルサレムにとりなされているような気さえする。

とにかく学ぶことばかり。励まされることばかりである。結局のところ、エルサレムは強い。これが筆者の実感である。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。