イスラエル政府が正式に発表したところによると、世界的なキリスト教系チャリティNGO団体ワールドビジョンのガザへの献金のうち、60%が、ハマスに横領されていたことがわかった。その額年間720万ドル(約7億2000万円)に上る。
この情報はすでに今年4月の段階でメディアにも暴露されていたが、その首謀者で、ワールドビジョンのガザ地区代表を努めていたモハンマド・エル・ハラビが、6月に逮捕され、本人の自白とさらなる調査の結果、イスラエル政府から、改めて公式に発表されたものである。
イスラエル政府が、この件を世界に公表し、ガザへの支援活動について、警告するキャンペーンに出たということである。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4837771,00.html
その報告によると、エル・ハラビは、若いころからハマスのメンバーで、父親が国連職員であることから信頼を得て、2005年からワールドビジョンで働くようになっていた。
2010年には、同団体のガザ地区部門の責任者にまでなり、献金の横領をあらゆる部門で行っていたもようである。つまり、少なくとも5年近くは、大胆な横領をやっていたことになる。
資金については、貧しい人々の支援に使われるはずの400万ドル(約4億円)が、毎年ハマスの地下トンネルの設営や武器の購入に充てられ、150万ドル(1億5000万円)が、ハマス戦闘員の給料として毎年テロリストやその家族に支給されていた。
エル・ハラビが白状したところによると、時にはハマス幹部が大金を横領していくこともあったという。
物資については、貧しい人々に行き渡るようにと搬入された食料や医療物資は、ハマスメンバーとその家族が受給していた。その際、ハマスの倉庫をワールド・ビジョンの倉庫と偽って、物資を搬入させていた。
グリーンハウスを立ち上げるプロジェクトでは、実際にはグリーンハウスとしての機能ではなく、地下トンネルの掘削作業を隠す建物として機材が使われていた。
報告書類などは、当然偽造である。驚くようなハマスの横領は他にもいろいろあるが、ここまでくると、ワールドビジョンの監督のずさんさにも驚かざるとえない。なお、ワールドビジョンは、この不正への関与を否定している。
イスラエル外務省ディレクターのドール・ゴールド氏は、ワールドビジョンのような大きな組織で、これほどの無監督状態にあったとすれば、他の団体も同様にハマスに利用されているかもしれないと、さらなる調査の必要性を訴えた。
オーストラリアは政府から公式にワールドビジョンを通じてガザへの支援を行っていたが、この件が明るみに出て以来、支援を保留にしている。
<ワールドビジョン・エルサレム、西岸地区、ガザ地区部門について>
ワールドビジョンは、アメリカが中心となり世界100カ国の貧しい人々への支援活動を行うキリスト教系の支援団体。スタッフは46000人に上る。1950年、アメリカの宣教師ボブ・ピアスによって始められた。
日本でもワールドビジョン・ジャパンとして活動。イスラエルでは、エルサレム、西岸地区、ガザ地区の支部として、40年にわたって活動している。
そのホームページでは、6月のエル・ハラビの逮捕については、違法であるという考えとともに、同団体(部門)は、エル・ハラビの側に立つといった記載がなされていた。
8月4日の記事は、エル・ハラビの行為が証拠立ててあきらかにされた事を受け、調査をした上で、公正で法的な手続きを求めると記載している。
www.wvi.org/jerusalem-west-bank-gaza/pressrelease/statement-world-visions-staff-arrest