イスラエルでは、28日日没より、過ぎ越しの最終日(祭日)となり、そのまま安息日入りして、30日土曜、日没とともに、今年の種無しパンの例祭が終了となる。今日29日は、エルサレムは静かな朝を迎えている。
今年の過ぎ越しは、直前にバス12番の爆破テロがあり、エルサレムでは3500人もの治安部隊が警備にあたったが、幸い、エルサレム市内で、市民に害が及ぶようなテロ事件は発生しなかった。
エルサレムでのピークは、25日(月)。この日は、嘆きの壁で、ビルカット・コハニーム(祭司の祈り)が行われる日で、広場はユダヤ人だけでなく、東方教会のイースター週でエルサレムに来ているキリスト教徒も含めて、人で埋め尽くされた。
祭司の祈りとは、コーヘン一族を中心と刷る祭司の家系に属する男性数百人が、チーフラビとともに、民数記6章に書かれた3つの祈りを神にささげるもので、この時に祭司とともに嘆きの壁にいることで、大きな祝福を受ける考えられている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4795865,00.html
<緊張の神殿の丘>
過ぎ越しの例祭期間中は、毎年、右派ユダヤ教徒らが、神殿に入ることを試みる。今年もユダヤ教徒数百人が、治安部隊に守られながら、神殿の丘を訪問した。
神殿の丘では、女性も含めてパレスチナ人らが、ユダヤ人に罵声を浴びせかけ、衝突になりかかったが、治安部隊が複数のユダヤ人を神殿の丘から排斥するなどして、大事にはいたらなかった。
<ヘブロンとナブルス>
過ぎ越しの期間中は、ユダヤ民族への思いが深まる時となる。右派系ユダヤ教徒たちは、神殿の丘に続いて、アブラハム夫妻、イサク夫妻、ヤコブ夫妻(ヤコブとレア)が葬られたとされるヘブロンのマクペラの洞窟、さらにシェケム(ナブルス)のヨセフの井戸とされる場所を訪れる。
1)ヘブロン
ヘブロンでは、25日と26日、右派系ユダヤ人たちが、群衆となってヘブロンへと押し寄せた。さらに、そこで六日戦争でヘブロンがイスラエルの手に戻った事を祝うイベントも行われた。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/211396
言うまでもなく、ヘブロンは、テロリストを最も擁するパレスチナ最大の町。上記のようなイベントは挑発になる。この両日は、マクペラの洞窟にはパレスチナ人は立ち入り禁止となり、厳重な警戒態勢がとられた。
*分割された町ヘブロン
ヘブロンは、パレスチナ自治政府が管理するA地区であるが、町の中にはイスラエルの治安部隊が警護するユダヤ人地区がある。つまり、ヘブロンは分割された町である。
問題は、アブラハムの墓があるとされるマクペラの洞窟。アブラハムはユダヤ・アラブ双方の父である。洞窟の上の建物は、ヘロデ大王時代からの者だが、建物の中は、ユダヤ側とアラブ側とに分割され、双方とも相手側には入れないようになっている。今回、ユダヤ教徒が祈りやイベントを行ったのは当然、ユダヤ側でということである。
ヘブロンと同様に、イスラエルとユダヤ人を憎むことでは札付きの町がナブルス(シェケム)である。ここには、ヨセフの井戸と呼ばれる場所があり、ヨセフの墓があると信じられている。ユダヤ教徒にとっては聖地の一つである。
2)ナブルス(シェケム)
ナブルスもパレスチナ自治政府管理のA地区だが、オスロ合意以来、月に一日だけユダヤ人がこの井戸を訪問することを許可するという約束になっている。しかし、昨年10月には憎しみにかられたパレスチナ人に放火された。
それでもユダヤ教徒たちは、今年も27日と28日、大挙してナブルスを訪問した。警護していた治安部隊に、パレスチナ人ユースのグループが、投石するなどの衝突もあったが、幸い、大きな事態にはならなかった。
<国立公園は超満員>
宗教的な人々は、エルサレムや、ヘブロン、ナブルスへ向ったが、一般の家族たちは、ビーチや国立公園に押し寄せていた。そこでバーベキューをしたり、キャンプやピクニックをしてくつろぐのである。一部の国立公園では、来る人数が多すぎて閉鎖するところもあった。
アルーツ7によると、ガリラヤ湖周辺ビーチだけで50万人が訪れ、そこからでたゴミは300トンだという。
普段はお行儀の悪く、そこらじゅうにゴミを捨てるイスラエル人だが、今年は、多くのゴミが、備え付けのゴミ箱からの回収だったらしく、昨年より公園内掃除が楽だと報告されている。
日本でも例年より暑い日になっているようだが、イスラエルでも、火曜日、エルサレムで34度。テルアビブでは39度。その少し南部のスデロットでは、なんと40度を記録した。この日は、テルアビブやガリラヤ湖のビーチに30万人の人出だった。(チャンネル10)
それから後は、例年の気温に戻り、エルサレムでは朝15度前後の非常に快適な気候となっている。
www.israelnationalnews.com/News/News.aspx/211539#.VyMLnKUWnA8
ただし、例年のごとく、悲惨な交通事故は相次いだ。25日はヨルダン渓谷で発生した2つの交通事故で2人が死亡。3人目の妊娠中の女性も重傷。
26日には、南部へホリデーに出かけていた乗用車の事故で、40歳代の父親とその15才の息子の2人が死亡。同じ車に乗っていた12才の少女も重傷となった。
www.timesofisrael.com/topic/car-accidents/
<休みなし・治安部隊>
上記のように、イスラエル市民たちが、休暇を楽しんでいる間も、警察や治安部隊は休みなしだった。過ぎ越し期間中もナイフによるテロが2件発生した。
水曜、エルサレムとラマラの間のカランディア検問所では、パレスチナ人の男女が、ナイフを持って治安部隊に押し迫り、2人は制止への呼びかけにも応じなかったことから、その場で射殺された。治安部隊隊員らは無傷。
パレスチナメディアによると、死亡したのは23才の女性で2人の子供の母でさらには妊娠中だった女性と、その弟で16才の少年だった。無惨に地面に倒れている2人の様子が痛ましい。なぜ、こんな無謀を試みたのかは不明。
www.maannews.com/Content.aspx?id=771309
また昨日木曜夕刻には、ラマラ近郊の国道443号線の検問所に、女性テロリスト2人が治安部隊に近づいて来たが、怪しい動きですぐ察知され、撃たれた。
1人は重傷を負ってイスラエルの病院へ搬送された。もう一人は逃亡を試みたが逮捕された。2人は遺書を持っていたという。パレスチナ・メディアによると2人は未成年少女だった。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4797268,00.html
ガザ地区では、まだ5、6才の子供たちに、衣装もそろえて、テロ現場を再現するスキットをやらせている様子が報じられた。
そのストーリーとは、ナイフでイスラエル兵を襲い、逆に殺されて家族が泣く。しかしイスラエルの刑務所にいるヒーローが解放される、というものである。まだ何もわからない6才ぐらいの子供がおもちゃのナイフをふりかざして、イスラエル兵役の子供に切りかかるのである。
親たちはこれを本気で喜んでいるのか、ハマスにやらされているのかは不明。
www.timesofisrael.com/gaza-kids-put-on-play-about-stabbing-killing-israelis/
<正教徒のイースター>
今年の過ぎ越しは、東方教会(ギリシャ正教などのオーソドックス・キリスト教)のイースター週と重なっていた。25日(日曜)朝、ベン・グリオン空港には、平均年齢75才と思われる数十人の高齢者のグループが到着していた。
小さなちょっと小太りのおばあさんたちがアラビア語で何か書いてあるはっぴを来て、アラビア語で話しながら、うれしそうに並んでいる。聞くと、エジプトからだという。確認はとれなかったが、十中八九、コプト教徒(東方系キリスト教徒)
エジプトは現在、経済的にも政治的にも非常に困難に直面しているが、こうして、イスラエルに空路やってきて、エルサレムでイースターを祝う事ができるということにちょっと感動した。
パスポートの管理に当たっているイスラエル人係官が、大軍のエジプトのおばあさんたちを前に、にこにこと対処におわれているいるのが、なんともほのぼのだった。
アラブ諸国では、イスラエルのパスポート、もしくは、ビザのはんこがあった場合、入国させてもらえないが、イスラエルでは、アラブ諸国であっても、国交がある国ならば、観光客の入国は認める。
エジプトのコプト教徒は、本国では命もねらわれるほどであるのに、エルサレムでは、安全にイースターを祝う事ができる。これは特記すべきことではないだろうか。