<政治サーカス?>
先週木曜日、120議席中、ぎりぎり61議席という、一応、”過半数”での連立政権が立ち上がったが、その後もぎりぎりの綱渡りが続いた。
問題は、ネタニヤフ首相が、連立政権を成立させるため、他党に閣僚のポジションを約束しすぎて、自党リクードのメンバーへのポジションが足りなくなったことである。そこでネタニヤフ首相は、閣僚の数を18に制限しないという法案を提案した。
法案成立に必要な国会での決議は3回である。日曜に一回目、火曜に、2、3回目の決議がとられた結果、3回とも賛成61、反対59という”過半数”そのものの結果となり、法案が法律として適応されることになった。それが今週火曜である。
ネタニヤフ首相はすかさず、その夜のうちに、「翌日水曜の夜7時には国会での就任を行う」と発表した。まだ組閣が終わっていないのにである。
ネタニヤフ首相は、この後、夜を徹して自党リクードの主要メンバーたちとのマラソン交渉に入った。これまでの実績からも、主要メンバーに今までより低いポジションを提示するわけにはいかない。
火曜夜から水曜丸一日かかってもまだ納得しないメンバーもあり、就任式は午後7時から午後9時に変更になった。国会で待機していたメディアは、時間を持て余すことになった。
ネタニヤフ首相が国会に現れたのは午後9時5分前、夫人とともに首相室に入った。しかし、数分後には出て来てすぐに国会入りし、ちょうど9時には、なんとか就任式を始める事ができた。
こうした綱渡りを受けて、イスラエルのメディアは「政治サーカスだ」とちゃかした。
<就任式>
就任式は、招かれた閣僚の家族親族友人(子供たちを含む)が出席する中で行われた。テレビで中継がなされ、国民が見守る中、午後9時から始まった。
始まると同時に、アラブ系議員がやじをとばした。議長が制してもやめなかったので3人が退場となった。続いてネタニヤフ首相が挨拶と閣僚メンバーを発表したのだが、こちらもあちこちから、やじがとんでいた。
続いて野党代表の労働党ヘルツォグ党首が、答弁したのだが、そこまでいうか?と思うほど非常に厳しいものだった。「希望のない政府」ならまだましで、「防衛相のボギー(ヤアロン氏)は恥を知れ」というようなことば使いである。
日本人なら自殺してしまいそうな言葉が並んでいたが、ネタニヤフ首相は動じない。「言うだけ言え」という感じで頭は全く動いていなかった。
イスラエルの国会の政府承認への決議は、電光掲示板ではなく、議長が名前を読み上げて、それぞれ賛成か反対かを返答するしくみだった。国民もテレビで中継を見ているるため、だれが賛成でだれが反対かはだれにでも明白である。
結局、承認61、反対59という”過半数”そのものの結果で、国会承認ということになり、ネタニヤフ首相4期目、閣僚20人による、第34代政府が就任した。
たった1議席だけだが、過半数は過半数。だれかが裏切らない限り、ネタニヤフ首相の意向は通るようである。
<重要ポジションについて> http://www.haaretz.com/news/israel/1.656536
1)外務相(リクード) - 副大臣をリクードから指名。外務相はネタニヤフ首相が兼任
2)防衛相(リクード) - モシェ・ヤアロン氏(前期から留任・リクード)
3)財務相(クラヌ) - モシェ・カフロン氏(クラヌ党党首)ー電話代を下げたことから、国民の期待大
4)経済産業相生(シャス) -アリエ・デリ氏(ユダヤ教正統シャス党党首)
5)法務相(ユダヤの家) - アィエレット・シャキッド氏
5)教育相(ユダヤの家) - ナフタリ・ベネット氏(ユダヤの家党党首)
6)内務相(リクード) - シロワン・シャロム氏
リクードには、大臣を歴任してきた大物が3人いる。シロワン・シャロム氏、ユバル・ステイニッツ氏、ギラッド・エルダン氏。
このうちリクードの選挙名簿では2番目のギラッド・エルダン氏とは合意に至らず、結局どこのポジションもないままとなった。
今回、閣僚となった人物でふさわしいかどうかが懸念されている人物が2人いる。
経済産業相となったシャス党のデリ党首は、2000年に汚職で実刑判決を受け、刑務所に約2年服役している。政治に帰り咲いたのは、2012年だった。汚職で投獄されたいた人物が、今度は経済産業相という、最も汚職の誘惑が大きいと思われるポジションについている。
これについては国会議長が懸念するとの発言をしている。国民もおかしいと感じているのだが、政治のしくみ上、しかたないのである。
法務相には、ユダヤの家党のベネット党首に要求されながらも、最後までネタニヤフ首相が受け入れを拒んでいたアエレット・シャキッド氏。若干39才の女性である。
女性が法務相になるというだけでも、特にユダヤ教界では問題になるのだが、ユダヤの家党を連立にとりこむためにシャキッド氏を法務相に登用しなければならなかったという形での法務大臣である。
ただし、法務相は、通常、最高裁判官の指名に関与する権限を持つところ、ネタニヤフ首相はこれを剥奪することで、ユダヤの家党との取引が取引が成立したと伝えられている。
シャキッド氏は、右派的発言があることでも知られる人物。ベネット党首は、西岸地区の入植地拡大を法的にもすすめたいのこのポジションにシャキッド氏を登用する事を要求したとみられる。
そういう人物が法務大臣になるということで、国の内外で懸念されている。
<前期からどんでん返し、金のかかる政府> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4656405,00.html
今回の政府は、前期からは正反対の性質を持つ政府になっている。
前期第33ネタニヤフ政権は、世俗派ラピード氏が最大議席数を持ち、ユダヤ教政党は、めずらしく野党となっていた。ラピード氏が、世俗派中流層を支援する方針で、住宅問題などの経済改革に取り組む中、まず大きく予算を削減されたのが、ユダヤ教正統派への社会報償や子供手当だった。
ところが、今回は、連立政権を成立させるという理由で、逆にラピード氏が野党になり、ユダヤ教正統派正統シャスや、統一トーラー党が、与党で大きな勢力を持つ形となり、前期とはまったく逆となった。
当然、ネタニヤフ首相は、連立参加の条件として、正統派への社会保障の回復を約束しなければならなかった。
また、ユダヤの家党のベネット氏を取り込むために、宗教シオニストの教育費も約束している。これに加えて、閣僚を2人増やしたので、その分の出費もある。
Yネットによると、今回の新政府は、すでに予算67億シェケルの行き先が決まった状態でのスタートになっているという。この額は、これまでの3期政府の、発足前予定予算を全部足してもまだ多い額だという。
ちなみに、前期は、社会保障を必要としない世俗派労働層が中心となっていたため、連立参加への条件にお金の分配が条件にはならなかった。つまり0シェケルで政権が立ち上がったというわけである。これでは、労働党党首のヘルツォグ氏や、ラピード氏が激怒するのも納得がいく。
いずれにしても、国会120議席のうち59議席がこの政府に反対しているのだから、いくら61議席が過半数とはいえ、民意を反映していると言えるのかどうかは、はなはだ疑問である。
イスラエルの政治については、変革が必要だと言われているひとつの点である。
<石のひとりごと>
イスラエルの国会はギャラリーがぐるりをとりまいている。そこに座って、議会の進行を見ていると、政治家でなくても、政治に加わっている気になる。この国会は、1967年の六日戦争開戦を決めた、まさにその場所である。今も国の大事な決断をしている場所である。
日本で議会中の国会の中には逆立ちしても入れないのに、イスラエルでは国会の一部として、ここに何度か座らせてもらっていることがなんとも感謝だった。日々、イスラエルのためにとりなしておられる日本のクリスチャンたちを思いながら、そこに座らせてもらった。
同時に、その建物の中で主の主権と守りと導きがあるように、ネタニヤフ首相やリーダーたちの上に主の救いと、イスラエルを導く特別な油注ぎがあるようにと祈れたことも感謝だった。
ご無沙汰しております。しゅくらむです。
いつも貴重な情報発信、有難うございます。
大変遅くなりまして恐縮ですが、拙ブログにて、貴ブログのご紹介をさせていただきました。
ご笑覧いただけますと幸いです。
「イスラエル 薄氷の連立政権、組閣の舞台裏」↓
http://syuklm.exblog.jp/24642612/
ずっと気にかかっていた組閣の件、貴ブログの記事を全面的にニュースソースにさせていただき、遅ればせながら書くことが出来ました。有難うございます。
万一瑕疵などありましたらご指摘いただけますと有難いです。
今後も益々のご活躍を願っております!