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WCK(ワールド・セントラル・キッチン)のガザでの働き
ガザ地区で、食糧支援にあたっているWCKは、COGAT(イスラエル軍政府活動調整部)との協力の中で活動をしているNGOである。
8月初頭から、ガザで食糧支援が再開となり、活動が始まっていることから今週、WCKの創始者でありCEOのホセ・アンドレス氏(56)が、ガザの現地を訪問し、自らの考えを語っていた。
*WCK(ワールド・セントラル・キッチン)とガザでの活動について
WCK(ワールド・セントラル・キッチン)は、自然災害や戦時下で、食糧難に陥っている人々に食糧を提供するNGO団体である。2010年にアメリカで設立され、世界各地、また足元アメリカでも活動している。
創設者のホセ・アンドレス氏は、スペイン生まれだが、20代の時にアメリカに移住。有名な料理家になって、アメリカ全国に高級レストランを展開、経営していた。
しかし、高級料理を食べにくる人ではなく、被災地で食事がない人に食事を提供したいと考えるようになり、2010年、WCKを立ち上げた。WCKでは、基本的には、現地の食材や現地人を用いて活動行い、将来的な回復にもつなげることを目標としている。

WCKは、2023年10月、イスラエル南部でハマス侵攻の被害に遭って避難していたイスラエル人、また北部で、ヒズボラの攻撃を受けて避難していたイスラエル人たちの支援活動を行った。
同時に、ガザの人々への支援も開始した。ガザ沖から船で食糧を運び込む方法である。WCKは、国連より、イスラエル軍との協力でこの活動を行なっていた。
しかし、2024年4月に、WCKのスタッフ7人が、イスラエル軍のドローン攻撃で死亡する。イスラエルは誤爆であったことを認め、謝罪した。
mtolive.net/イスラエルが誤爆を正式に謝罪:wck(世界中央キ/
その後WCKの活動は一か月停止したが、再開していたもようである。しかし、今年5月にイスラエルが、ガザへの搬入を2ヶ月半ほど全て停止すると、現地で得られる食材が不足したことから、その2ヶ月後に、活動ができなくなっていた。

8月初頭から、またガザへの物資搬入が再開されたことから、今、WCKもガザの中での活動を再開しているとのこと。
COGAT(イスラエル軍)との協力で、激戦地でもあったデイル・アル・バラに中央フィールドキッチンを設立。ガザ全体の25か所でキッチンを運営している。
WCKによると、8月14日時点で、1日に20万食を提供している他、清潔な飲み水と、地元のパン屋を支援してパンを供給している。
アンドレス氏は、今後1日100万食を目指すと表明している。
ホセ・アンドレス氏のガザに関する考え方
1)ガザの破壊はハリウッド映画か黙示録か

ホセ・アンドレス氏は、2024年4月に、スタッフ7人がイスラエル軍の誤爆で死亡した際、ガザに入り、ハンユニスの現状を見ていた。
続いて今週、再びイスラエルから、ガザに入り、活動の様子を視察した。
アンドレス氏は、ガザの荒廃を見たとき、これは、ハリウッドか、黙示録の後かと感じたという。
破壊の中の道路脇には、トラックがひっくり返って燃えており、マッドマックスの1シーンにも見えたとも語っている。
これだけの破壊を置いて出ていけない。イスラエルも出ていくべきでないと感じたと語っている。(以下は13日前の映像)
2)ガザの食糧不足は現実:銃を持っている者たちは飢えてない
今年5月、イスラエルは、ガザに搬入する食糧は、ほとんどハマスが強奪しており、ハマス存続を助けているとして、その後2ヶ月半ほど、ガザへの食糧搬入を停止した。
アンドレス氏は、これは賢明ではなかったと語っている。食糧を止めて困ったのはガザ市民であり、ハマスではなかったからである。

「5000人を降伏させるために、100万人から食糧を奪ったようなものだ」とアンドレス氏。また、結局のところ、ガザでは今は、強者が弱者のものを取り上げているので、弱者が先に犠牲となり、イスラエルが標的とするその5000人は、最後まで残ることになるからである。
アンドレス氏は、ガザの飢餓は現実問題だと語っている。しかし、WCKは、飢餓を数字で訴えることはしていない。飢餓は数字では定義できないと考えているからである。
一人の子供だけが飢餓だったら飢餓ではないのか。もし10万人だったら?50万人だったら?飢餓と定義づけするのかということである。飢餓の数字を誇張しているとか、していないとかは問題ではないとアンドレス氏は語る。
「イスラエルは今月初頭から、食糧搬入を開始したが、まだ支援は十分でない、満たすまでには時間がかかる」とアンドレス氏。
ハマスによる略奪はまだ深刻で、8月10日から17日までの間にWCKの199台のトラックのうち、189台が強奪された。食糧の実に8%しか届いていなかったという。
これについてどうするか聞かれると、単純に、あふれるほどに搬入するだけだと語った。そして治安問題を解決することとアンドレア氏。
要するに、空腹がなくなれば、略奪もなくなると言っているのである。WCKは、1日に100万食を供給することを目標にしているとのこと。
3)ガザは人類の最低点
ガザの現状を見たアンドレス氏は、イスラエルの人々は、このハリウッド的な破壊を知らない人が多いことに驚いたと語っている。
アンドレス氏は、イスラエルに自衛の権利は認めるが、相手方にここまでの破壊をせずにそれを成し遂げた国も多数あると語る。イスラエルとは協力しつつも、同意できない点もあるということである。
一方、イスラエルで、最も被害が大きかったノヴァ音楽祭現場や、被災したキブツを訪問したアンドレス氏は、ガザの人々もイスラエルの事を知らないと述べ、もしここに来て、被災者の証言を聞けば、ガザの市民も100%共感するだろうとも指摘した。
アンドレス氏は、自分は両方を見た者として、どちらにもつかないと言っている。結局のところ、これは人類の最低点、最低の愚かさだと語っている。
アンドレス氏は、かつて、イスラエルからはガザのビーチへ行っていた時いたことがあると語り、その時代以降からずっとやりあいが続いて、ここまでの崩壊になった。
「我々はこの45年の間、いったい何をしていたのか。あの頃に戻れるのか?それしか道はない」と語っている。共存するしかないということである。
石のひとりごと:人道主義者にわかってもらえない点
アンドレス氏の証言で、ガザの様子が少しはうかがえただろうか。アンドレス氏の飢餓の考え方もユニークだと思った。WCKの働きが祝福され、ガザの食糧不足が少しでも早く改善するように祈る。
しかし、この著名な人道主義者のアンドレス氏が、見ていない点があると思う。それは、ハマスが、イスラエルを亡き者にしようと、ただそれだけのために、存在しているという点である。
イスラエルを壊滅させるためには、ハマスは、同胞の食糧を奪い、同胞が死んでもなんとも思わない。そしてそのイデオロギーは、ガザに深く染み込んでいる。この人々との共存は、アンドレイ氏が考えるほど簡単ではない。それを本当に実感できているのは、おそらく、当事者であるイスラエルだけかもしれない。
しかし、主はすべてを見通しておられる。私たちは人間の正義に流されず、主に目を向けて、そのみこころを基準に、イスラエルのため、そしてガザについても、祈りとりなしていきたいと思う。
