ハマスが拉致した人質は、全員がイスラエル人ではない。21日、アメリカのシカゴで、10月7日から320日を覚える集会が行われ、アメリカ人で人質になっているハーシュ・ゴールドバーグ・ポーリンさん(23)の両親が、率直にハマスが捉えている人質が何を意味するのかを訴えた。
母親のレイチェルさんは、まず、ハマスが捉えている人質109人が、イスラエル人、ユダヤ人だけでないことを訴えた。人質になっているのは、ユダヤ人だけでなく、クリスチャン、イスラム教徒、ヒンズー教徒、仏教徒もおり、年齢は1歳から86歳と多種多様で、国籍も23カ国に及んでいる。
このうちアメリカ人は8人。その一人がハーシュさんである。10月7日、ハーシュさんは、誕生日を記念して仲間たちとノバフェスティバルに参加していて、ハマスに拉致された。
その後、ハマスは、ハーシュさんが、きき手の左手が切断された状態で、家族とイスラエル政府にメッセージを呼びかけるビデオを公開していた。
レイチェルさんは、人質の家族たちは、10月7日以来、別の国に生きるようになったと訴え、子供を持つ人なら、私たちがどんな思いでいるか想像していただけるでしょうと語った。
父親のロンさんは、このコンベンションは政治的なことで開催されているが、ハマスに囚われている人質については、政治の問題ではなく、人道の問題だと訴えた。
アメリカ人人質の家族は、バイデン大統領とハリス副大統領と数えきれないほど会談し、二人が熱心に人質解放にむけた努力をしていると語り、感謝を表明するとともに、目の前で人質家族を支えている群衆に深い感謝を述べた。
今人質になっているアメリカ人は8人だが、ハマスに殺害された1200人のうち、45人がアメリカ人だった。アメリカにとっては、確かに他人事ではすまないことだろう。
続いてロンさんは、痛みは双方(イスラエル人とパレスチナ人)であり、どちらの痛みが大きいということでの勝者はないと宣言。ユダヤ教では、一人の人は、全世界を意味すると教えているとして、すべての命を救わなければならないと述べた。
そうして、アメリカが、推している人質解放に向けた交渉で、家族たちが帰ってくる。それでけでなく、戦闘を止め、ガザの悲惨に終止符を打つのだとして、「時は今だ」として、交渉が進むようにと訴えた。
会場は、「Bring them home!(今すぐ人質を取り戻せ!)」という合唱になっていた。
石のひとりごと
ハーシュさんの両親の話を聞いて、改めてハマスが10月7日にしたことの恐ろしさを実感させられる。人質家族にとっては、今行われている交渉が、本当にぎりぎりの希望なのである。ハーシュさんはじめ、人質がなんとか早くガザから解放されるように、祈りが急務である。
しかし、だからこそ、それを最優先にしないでいるネタニヤフ首相への憎しみにも変わりうるかもしれないと、少し、懸念も覚えた。アメリカのユダヤ人社会では、イスラエル離れが問題になっている。ユダヤ人がイスラエルを非難するようにならなければよいがとも感じた
なお、この後、大会での演説で、民主党候補のハリス氏は、この件について、「時は今」と述べて、交渉を支持するしながらも、イスラエルの治安維持を支持すると宣言している。