ガザ北部でハマス対戦車指揮官他複数死亡:1日4時間の戦闘停止は5日から実行中とイスラエル 2023.11.10

IDF forces in the northern Gaza Strip seen in a handout photo released October 11, 2023 (Israel Defense Forces)

10時間の戦闘でハマス第17前哨基地制覇:戦死者1人

ガザ地区北部で、ハマス拠点やトンネル破壊を続けるイスラエル軍は、ガザ市中心部にむけて進軍中である。9日朝には、10時間に、ジャバリヤ難民キャンプの西にあったハマス主要拠点、第17前哨基地で10時間に及ぶ戦闘の末、これを制覇したと発表した。

9日朝の戦いで、ハマスの対戦車誘導ミサイル作戦を指揮していたイブラヒム・アブ・マグシブと複数の司令官レベルの戦闘員が死亡したとイスラエル軍は報告している。

www.timesofisrael.com/idf-captures-terror-stronghold-as-troops-said-closing-in-on-shifa-hospitals-hamas-hq/

また、これにより、重要な資料や武器、広大なトンネルルートを制覇することができたと。それらは幼稚園にまでつながっていたという。

しかし、この戦いでイスラエル兵がまた一人戦死した。ギラッド・ローゼンブリット軍曹(21)第401師団戦闘衛生兵だった。

*子供部屋ベッドの下にトンネル

ガザへ取材に入ったTimes of Israel は、イスラエル軍は、トンネルの出入り口が、子供部屋のベッドの下にあり、それが、二手に分かれている様子を報告している。

子供のベッドの下にあることも驚きだが、海岸沿いのかなりリッチなマンションであることにも驚かされる。ガザにいるのは、貧民だけでなく、かなり裕福な人、おそらくはハマス関係者もいたということである。

www.timesofisrael.com/inside-a-gaza-bedroom-soldiers-searching-for-tunnels-find-how-low-hamas-can-go/

ガザ市内:シハ病院近くの軍事基地で戦闘中

イスラエル軍は、10月7日の攻撃の中心地であったと考えられるハマス司令室があるとされる、シハ病院に近づいている。IDFによると、だい162師団が、シファ病院(1500床・職員4000人)近くの軍事基地で戦闘を続けているという。以下はその地理的な位置の様子。

1日4時間の戦闘停止について:何も新しいことはないとイスラエル

ホワイトハウスが、イスラエルが1日に4時間の戦闘停止(3時間前にその場所と時間が発表)に合意したと発表したことで、日本でも各国でも大きなニュースになっている。

しかし、ネタニヤフ首相は、イスラエルは5日からすでにこれは行っているとして、新しいことはなにもないと発表した。確かに、イスラエルは、昨日も朝10時から午後2時まで(3時まで延長)の間、民間人が北から南へ避難する間、空爆をしていなかった。それは、本日も実施されており、さらに民間のパレスチナ人が南へ向かっている様子が報じられている。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/pms-office-rebuffs-white-house-statement-that-israel-agreed-to-daily-4-hour-humanitarian-pause/

イスラエル軍の作戦の原則:イタマル・ヤエルIDF退役大佐

スクリーンショット
イタマル・ヤアル氏

イスラエル軍の退役大佐イタマル・ヤエル氏によると、今回のハマスの攻撃はイスラエルにとっては、そのタイミング、その規模と計画性(周到な準備)すべてにおいて驚きであったとのことである。

今、イスラエル軍の行っているハマス殲滅作戦の基本は、次のように段階を追っている。①ハマスの軍事能力を破壊する、②ハマスの民間人への支配を終わらせる、③人質をとりもどす

IDF

具体的には、①イスラエルへのロケット攻撃機能を殲滅する(まだ終わってないが、だいぶ達成)、②イスラエル軍への攻撃に使われる可能性のあるビルを破壊する。トンネルを破壊する(トンネルには入らずに破壊するのでブルドーザーがかなり有益)、

③武装ハマスを殺害、または拘束する、④人質を救出する

③についてはおそらく、シハ病院付近にいるとみられており、イスラエル軍は、シハ病院とコンタクトをとっているという。大きな戦闘までには、病院にいる人々をすべて、病院から出てもらう予定である。

今は、まだ①の段階だが、市民を南部へ避難させており、②に移行しつつあるのかもしれない。いずれにしても、民間人の犠牲を少しでも防ぐとともに、IDFの戦死者も防ぐというのが、イスラエルの基本である。無計画にガザ市民への無差別攻撃をしているという非難は正しくないことがわかる。

ハマス殲滅後のガザをどうするかについて、ヤエル氏は、イスラエルが関わらない形でのコントロールが必要と考えている。しかし、ハマスを殲滅したことで、世界中のイスラム原理主義が立ち上がる可能性があり、隣国エジプトはじめ欧米諸国も恐怖を共有することになる。

一番よいと考えられるのは、湾岸アラブ諸国による統治と回復だが、その際は、イスラエルが、ガザ民間人たちに、パレスチナの国という明確なビジョンを見せなければならないと語る。民間人とはいえ、多くはハマスの教育を受けているからである。

今はまだ、戦闘で手一杯だが、その先のこともじわじわ論議されはじめている。

最後に、ガザの外の海外にいるハマス指導者をどうするのか質問すると、方法はわからないが、必ず死ぬことになると言っていた。

石のひとりごと

northern Gaza Strip, November 7, 2023. (Emanuel Fabian/Times of Israel)

ガザの海岸ぞいの建物が、銃撃の穴だらけ、ぼろぼろになって残っている様子からは、以前、津波で流されずに残っている残骸の建物を思い出してしまった。

イスラエル軍は、トンネルの中には入らず、それを強力なブルドーザーで破壊し、罠や爆弾を処理してから歩兵が入る方策をとっている。このため、ガザの海岸通は、広大な平野になっている。それもあって、津波の後のイメージなのかもしれない。なんとも・・・

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。