強硬右派政権になってから、国内の既存のキリスト教会やその聖職者らへの嫌がらせなどが相次いでいるが、イスラエルを支援するプロテスタント、特に福音派団体への圧力もじわじわと始まっている。
福音派団体で最大は、ICEJ(International Christian Embassy Jerusalem)で、日本でよく知られたBFP(Bridges for Peace)もその一つ。長年にわたって、イスラエルや、ユダヤ人の祖国帰還を経済的にも支援して来た団体である。
こうした団体は、現地に長期滞在して事務や運営を担うスタッフを置いている他、実際の支援活動を行う人々が1年から数年間、ボランティアとして滞在し、活動を継続している。中には子供含む家族ぐるみで、イスラエルに来ている人も少なくない。ボランティアたちは、ボランティアビザでの滞在だが、母国で牧師であった人は、聖職者ビザでの滞在が許されていた。
ところがここ数年の間に、ボランティアビザの制限が厳格化され、富裕国とみなされる国からきた個人のみとされ、家族連れのボランティアビザは拒否されるケースもある。すでにイスラエル国内にる家族たちは、ビザの延長ができなくなり、予定より早く帰国を余儀なくされるといった事態になっている。
一回、ボランティアビザを取得した人が再入国を許されるのは、60日以上後であるため、実際のところ、いったん出国してまた半年後にボランティアとして戻ってくるというのは、難しい。内務省はこれを30日に縮小するという妥協案を出したが、あまり大きな効果は期待できないとみられる。
また、特に大きな問題は、組織の中核を担う人々が、長期間滞在できなくなることで、組織の運営事態が難しくなるという点である。ICEJのデービッド・パーソンズ代表は、この現状を政府に伝え、改善策を要求しているが、3年経った今も、大きな変化はないとのこと。
ICEJやBridges for Peaceも今はまだ聖職者ビザや現地人スタッフなどで、運営を継続できているが、エルサレムポストは、いつまで活動が存続できるのか、もしかしたら、クリスチャンたちのイスラエルからの「エキソダス」が始まるのではないかといったタイトルで、この問題を報じている。
www.jpost.com/christianworld/article-755788
<親福音派のネタニヤフ首相も動かず?>
キリスト教徒の中でも福音派と呼ばれる人々は、聖書に書かれていることを軸に、イスラエルが再建されたことは神のみこころであると考え、これを支持する立場にある。このため、福音派は、個人差はあるものの、右派ネタニヤフ首相を支持する人が少なくない。
このため、ネタニヤフ首相は、福音派との関係を維持し、親福音派と目されていたトランプ前大統領ともよい関係にあった。
トランプ大統領が、アメリカ大使館をエルサレムへ移動するという大胆な政策を実施した背景には、アメリカの福音派たちの支持と後押しも一因とみられている。
ネタニヤフ首相としては、多少恩義もあるといえるかもしれない、福音派たちが今、課題に直面しているのだが、ネタニヤフ首相は、この件についてもほどんと動いていない。
今のネタニヤフ首相は、これまでのネタニヤフ氏とは全く違う人物になっていると、専門家が分析しているが、この件においてもその一旦が見えるようでもある。
要は、強硬右派政権の核心にあるのは、イスラエルをユダヤ人の国にするということなのだろう。