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25日、国会で司法制度改革法案の始まりとなる、合理性基準に関する法案が可決され、基本法に加えられた。26日から正式な法律として施行となった。最高裁は、政府が出してくる人事や政策をこれまでのように、却下することはできないということである。
この朝、イスラエルでは、有力紙すべてが、「イスラエルにとって暗黒の日」と題して、一面を黒一色の新聞を発行していた。これについては、“黒人”であるエチオピア系住民たちが、苦情を出すという一面もあった。
בוקר קשה לדמוקרטיה, אבל הקטר של ישראל לעולם לא יוותר.
מודעות שפרסמנו היום. pic.twitter.com/BGIgtX7rBn
— מחאת ההייטק (@Techrael1) July 25, 2023
あれほどの反発を受けながら、ついに法律として成立したということだが、しかし、基本法は、まだ憲法ではないので、これを覆すことはまだ不可能ではない。今の大きな焦点は、今後、高等裁判所がどう出るのか。デモはつづいていくのか。国の分断はまだ拡大していくのか。
世界のイスラエルへの評価や、経済界の反応はどうなのか、イスラエルの敵たちはどう反応するのかといった点である。
*憲法と基本法の違いについて
憲法と基本法の違いは、憲法は、国を定義するもので、基本法は基本的には、皆が守るべき法律というレベルであるという点である。
憲法は、国の定義でもあるため、たとえば日本の憲法9条のように、これを覆すことは不可能に近いほど難しい。一方、基本法は、基本的に法律なので、まだまだ変化が可能ということである。
今回の問題を受けて、イスラエルでは、まだ司法とは、政府とは、国会とはという定義がないということが明らかになった形である。野党代表ラピード氏は、イスラエルもそろそろ憲法が必要だと言っている。
そういうわけで、今回、激しい物議の中、かなり無理のあるゴリ押し状態で可決したこの法案を、司法が覆す、破棄することもありうるということである。ただし、もしそうなった場合は、イスラエル史上初めて基本法が破棄されるということで、簡単なことではないだろう。
バハラブ・ミアラ司法長官の反撃と連立政権リクード議員らの反反撃
この法案が可決されると、バハラブ・ミアラ司法長官は、現在、汚職疑惑で刑事裁判の途中にあるネタニヤフ首相が、この法案に関わることは、違反にあたる可能性があるとして、可決された合理性基準に関する法律は、却下すべきであると、高等裁判所に申し立てた。
どういうことかというと、昨年12月にネタニヤフ首相が、首相として復帰する際、ネタニヤフ首相は、汚職と背任等で刑事裁判中であった。それにも関わらず、首相として復帰できたのは、最高裁が、「ネタニヤフ氏がその罪を逃れうるような法案には関わらないこと」を条件にこれを許可したからであった。
しかし、政権が発足すると、政府は、まもなく、最高裁が、現職首相に解任を命じることはできないとする法案を可決させた。これにより、ネタニヤフ首相がポジションを失うことがなくなった。その後、急にネタニヤフ首相が、司法制度改革の先鋒に立ち始めたという経過があった。
これに対し、連立のリクード党議員3分の1にあたる11人が、司法長官の閣僚に対する司法権を剥奪する法案を提出した。しかし、これがあらたな反発になる可能性を懸念してか、リクードは、これを「個人によるもの」であり、党としての方針ではないと発表し、却下させた。
高等裁判所は急がず:公聴会は9月と発表
こうした中、高等裁判所の出方が注目されていたが、意外にもすぐに新法却下に動き出す様子はみられていない。逆に、この法律に関する公聴会は9月に行うと発表し、急がない方針を明らかにした。この機会には、次の課題である司法選考委員会に関する論議も行われることになる。
これは、ちょうど今期国会が昨日で終わったことや、ティシャベアヴに入ったこともあると思われるが、とりあえず、熱くなっている国内を鎮火させることにしたのか、もしかしたら、このまま政府に妥協していく可能性もあるともいわれている。
今後、デモ活動がどの程度続いていくのかなど、注目されるところである。
イスラエルの信用格付けは?経済界の反応は?
株の世界には、国や組織、企業などの信用格付けというものがある。ムーディーズが行っているもので、この格付けが上がるか落ちるかが、株価にも大きく関わってくる。ムーディーズは、4月、司法改革で混乱しているイスラエルの信用見通しを、ポジティブから安定に格下げしていた。
争いの中で新法を可決した今、ムーディーズは、26日、イスラエルについて、「行政と司法のバランスが予測不能となっている、社会的安定に重大なリスクがある。」という見方を明らかにした。
また、イスラエルのスタートアップ企業の80%が、イスラエルではなく、海外で登録することを選んでおり、イスラエルへのベンチャーキャピタル投資も減少していると指摘した。これを受けて、テルアビブ証券取引所最高責任者のイタイ・ベン・ゼエブ氏は、ネタニヤフ首相と、スモトリッチ経済相に、このままでは、イスラエルの経済に悪影響がおよぶとの警告を発した。
しかし、ネタニヤフ首相らは、ムーディーズの評価は一過性であり、落ち着けばすぐに回復すると、この警告を受け入れなかったという。
イスラエルの敵たちの反応
イスラエル国内がこれほどに分断する様子、またイスラエル軍も予備役たちが反旗を翻して、その対応能力が落ちている可能性が出ているのを見て、イランや、イスラエルに敵対する組織たちは何を考えているのだろうか。
Times of Israelによると、イランとハマスは、非公開の会議を行い、今イスラエルを攻撃すれば、再び国が一致しようとして、ネタニヤフ首相に有利になるとの判断から、攻撃を控えることにしたとのこと。放っておいてもイスラエルは潰れるとの判断である。
北部国境で、イスラエルへの挑発を続けているヒズボラも大きな動きには出ていない。イスラエルの国の分断が、逆に外からの敵を抑えたという、妙な構図、言いかえれば、守り、というところか。