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ネタニヤフ首相が、13日(月)から、いわゆる「オーバーライド法案」と呼ばれる、司法制度改革案の法案を正式な論議に提出すると発表。
この改革案が成立してしまうと、司法が行政を制止できなくなり、結果的にネタニヤフ政権の独裁に近い形となり、イスラエルが民主主義ではなくなるとの危機感が広がっている。13日は、エルサレム国会前デモや、全国レベルのストの計画が拡大している。
司法制度改革法案:本日から審議開始で国内で危機感:週末デモは20万人強
6週連続となった安息日明け土曜日の反政府デモは、今週、テルアビブだけで14万五千人、エルサレムやハイファなど全国で、8万3000人と、22万人以上が、この法案に危機感と反対を表明するデモを行った。
For the 6th week in a row, mass protests against Netanyahu's plan to weaken the judicial system. According to assessments, more than 100K people are demonstrating tonight across Israel – in Tel Aviv (here in the drone footage👇), Jerusalem, Haifa & a dozen other major cities pic.twitter.com/vFrWhd4jQz
— Barak Ravid (@BarakRavid) February 11, 2023
אלפי מפגינים עולים על איילון צפון וחוסמים אותו באישור המשטרה (צילום: אורן זיו) pic.twitter.com/hCCD29kzEX
— שיחה מקומית (@mekomit) February 11, 2023
また、全国70の自治体市長らが、司法制度改革を決める前に、十分な論議をするべきだと表明した。その中には、西岸地区、最大の入植地(市)の一つ、エフラタのオデッド・レヴィヴィ氏も含まれていた。右派とみられる人物である。
世界の経済学者や、世界規模の経済団体もイスラエルが信頼を失い、経済への影響を懸念すると警告。さらには、世界的なユダヤ人学者、 ノア・ハラリ氏や、イスラエル人ノーベル賞受賞者のアブラム・ヘルショコさんら受賞者7人も、政府に深い懸念を表明する文書を提出した。
ヘルツォグ大統領が警告とともに妥協5項目を提案
こうした状況を受け、通常は政治に口出しをしない、日本でいえば、天皇のような立場にあるヘルツォグ大統領が、先週、司法改革の動きをいったん棚上げにするよう意見していたが、12日(日)夜、「今、法と社会が崩壊の瀬戸際の立っている。これで笑っているのは国外にいる敵たちだ。しかるべき妥協案を論議すべきである。」と政府と国民に対して、強い呼びかけを行った。
ヘルツォグ大統領は、まずイスラエルの司法制度は、確かに多様性に欠けるとして、改革の必要性は認めた。しかし、レビン法相が提出している司法改革案については、国内外から民主主義が危うくなるとしてイスラエルの信頼を大きく損ねていると指摘。
イスラエルの法こそが、イスラエルの栄光なのであり、最高裁判所と裁判官が、イスラエル社会と、イスラエル軍兵士を守ることにもつながっている。その基本を揺るがすことは、個人の権利保護が失われることになっていく。その権利だけは維持しなければならないと強く発言した。
ヘルツォグ大統領はその妥協案として5項目を提示した。その内容を全部解説することは難しいのだが、Times of Israelによると、2項目は、裁判官の数が不足しており、国民の信頼が失われているとして、それを改善する内容になっている。
残りの3項目は、レビン法相の案に反するもので、建国75年を機に、変更が可能な「基本法」ではなく、他国の「憲法」のように、基本的には変更をしない法を立案するというものである。
イスラエルが、「憲法」ではなく、「基本法」である決定的な理由は、国境線が決まっていないので、統一した国としての「憲法」にはできないからである。今もそれを変更することはできないのだが、たとえば、基本法の変更には国会過半数合意を3回ではなく、4回に、さらには、過半数よりもっと幅広い合意を条件にするなど、変更を難しくすることはできるというのである。
また最高裁の裁判官を決める委員会のメンバーを、行政、立法、司法、とすべての分野が、バランスと平等を維持する中で決める形を提案したとのこと。これは与党がほぼ決定権を握る形の委員会構成ではなく、平等とバランスを維持する形である。
ヘルツォグ大統領は、3者が、論議するために、大統領官邸をいつでも解放すると述べた。
www.timesofisrael.com/herzog-sets-out-reasonable-terms-for-reform-but-is-netanyahu-ready-to-listen/
これを受けて、政府が、若干妥協の様相もあるとされるが、まだ明確ではない。
審議開始の13日:エルサレム市内で大規模デモで国会周辺道路封鎖・全国の会社などでストへ
政府が司法制度改革に関する法案を提出するとされるのは、13日(月)正午過ぎになることを受けて、エルサレム市内、国会周辺では、大規模なデモが計画されている。
情報によると、デモ隊が国会周辺道路を朝から封鎖する可能性があるとして、警察が警備体制に入っている。いずれにしてもエルサレム市内が相当な渋滞になるとみられている。
全国で、何百ものスタートアップ会社や、法律事務所や、医師らも数千人がストに入るとのこと。