ハアレツ紙が、2022年の10大ニュースをあげていた。2023年の始まり、また新政権発足が直面する問題として、参考にしていただければと思う。
① ロシアのウクライナ侵攻:イスラエルへの移民急増で対応に追われた。
ウクライナからは、非ユダヤ人も含めて4万人以上が難民として到着した。ユダヤ人のみが移住できたので、3万人近くは、すぐにイスラエルから出国していった。
ウクライナ情勢はまだ悪化を続けており、さらなる移住者、ロシア国内のユダヤ人問題や、ネタニヤフ政権がロシア、ウクライナにどう対応するのか、注目される。
② パレスチナ人ジャーナリスト、アブ・アクラさん死亡
ジェニン近郊で、パレスチナ人たちとイスラエル軍の衝突を取材していた、アルジャージーラ(TV)のジャーナリストでパレスチナ人(アメリカ国籍)のアブ・アクラさんが銃撃に巻き込まれた死亡。銃撃はイスラエル軍によるものであったとして、外交上の大論争になった。
③ パレスチナ人によるテロ増加
パレスチナ人による国内でのテロで、市民29人が死亡。西岸地区にイスラエル治安部隊が乗り込んで、テロリスト逮捕や、密輸武器押収などの際に死亡したパレスチナ人は150人を超える。沈静化の様子はみえていない。
④ 右派左派政権崩壊
右派左派アラブ政党まで混じっての統一政権であったベネット政権が、内側からの離反が相次いで崩壊。その後、首相交代予定であったラピード氏が暫定首相となり、さまざまなことを達成したが、これも崩壊。11月1日の総選挙となった。
⑤ バイデン大統領の来訪
7月にアメリカのバイデン大統領がイスラエルを訪問。ベネット政権が終わり、ラピード暫定首相になった直後のことであった。アメリカとイスラエルの友好関係を確認するとともに、外部にアピールする時となった。
⑥ ガザのイスラム聖戦と戦闘3日間:ハマス応援せず
8月、イスラム聖戦がイスラエルへの攻撃を活発化していることがわかり、イスラエル軍が西岸地区ジェニンへ乗り込んで、指導者を逮捕。すると、ガザのイスラム聖戦が緊急事態宣言を出して攻撃の様相になったため、イスラエルが先に2万5000人を招集しつつ空爆を開始。3日間の攻撃を実施した。
これにより、イスラム聖戦指導者、タイサー・ジャバリが死亡した。イスラエルへはミサイル160発が発射されたが、イスラエル側に犠牲者はなし。エジプトの仲介で停戦になったが、パレスチナ人51人が死亡した。
このガザでの戦闘では、ガザの支配者ハマスがどう出てくるか、神殿の丘で抗議デモが起きるかなどが注目されたが、ハマスはイスラム聖戦を援護せず、神殿の丘も静かだった。このため、パレスチナ人の間で、ハマスのイメージダウンになった可能性が指摘された。
⑦ トルコとの外交再開
トルコのエルドアン大統領は、イスラム化をすすめ、ハマスを支援して、イスラエルに敵対する姿勢を明確にするようになり、2010年のマビ・マルマラ号事件で関係は一気に冷え込んだ。さらに、2018年に、アメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認め、大使館をエルサレム移動すると、外交官を引き上げていた。
しかし、今年5月ヘルツォグ大統領がトルコを訪問。8月には、ラピード前首相と、エルドアン大統領が、駐在大使を交換することで合意。外交関係が回復することとなった。
⑧ レバノンとの海域国境線合意
ハイファ沖に多数みつかった天然ガス油田問題で、イスラエルとレバノンは、正式な国交がない中、海上における国境線を策定し、合意に至った。この時、イスラエルが、レバノンに海域を大きく譲る形となったため、ラピード前首相への反発が大きくなったことは否めないだろう。
⑨ ネタニヤフ首相復帰・強硬派政権誕生
11月1日の総選挙でリクードに、宗教シオニスト、極右政党、ユダヤ教政党たちが加わって、中道左派ラピード陣営を越える64議席(120議席中)という過半数を確保。長い交渉の結果、12月29日に第37ネタニヤフ政権が発足した。
⑩ ワールドカップでイスラエル人3万人がカタールへ入国
11月から12月にかけて、カタール(ドーハ)で行われたサッカーワールドカップ。イスラエルとカタールの間には正式な国交がないだけでなく、シーア派でイランとの関係も深いカタールが、イスラエル人観客を受け入れた。これにより、イスラエル人とパレスチナ人が同乗する飛行機が、サウジアラビア上空を飛んで、カタールへ入国を果たした。その数は、3万人近くにのぼっていた。
しかし、実際には、イスラエル人は、各地でどなられるなど、嫌われたとの報告もあった。