目次
アメリカを訪問していたガンツ防衛相は、その足で29日、
両者は、今年が、国交70周年という記念すべき年であるとし、今後もパートナーとして、防衛の分野においても、装備改善や、技術面での協力を行っていくことを確認。合意書に署名した。
www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2022/20220829_isr-j.html
続いてガンツ防衛相は、松野官房長官、秋葉国家治安顧問、在日アメリカ大使のラフム・エマニュエル氏と会談。その後、林芳正外相と会談。
林外相は、日本がパレスチナ問題において、2国家解決(パレスチナ国家設立)を支持する立場を強調した上で、双方の緊張緩和が解決につながっていくことを期待すると伝えた。
www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press3_000911.html
その夜は、レセプションが行われ、その中で、ガザとの戦争中に、「私たちの心はいつもイスラエルとともにある。」とツイッターに投稿して論議になったこともあるなど、親イスラエル姿勢で知られる、中山泰秀元防衛副大臣に、ガンツ防衛省から、「日本・イスラエル友好賞」が手渡された。
DearHE Benny Gantz @gantzbe Thank you very much for this wonderful award. Aspiring for the realization of lasting world peace, I will continue to do my best to further prosper and develop the bilateral relationship between Japan and Israel, which is the cornerstone of that peace. t.co/cucyA5uqr1 pic.twitter.com/qBi8hMQIoV
— 中山泰秀 Yasuhide NAKAYAMA 大阪4区 (@iloveyatchan) August 30, 2022
イスラエルと日本の国交について
1)1952年イスラエル国家承認・1963年フル外交関係開始
1948年5月14日、イスラエルが独立を宣言した時、日本は敗戦国として、アメリカの管理下にあり、主権を持っていなかった。しかし、1951年にサンフランシスコ平和条約(連合国と日本)が締結され、1952年4月28日に条約が発効となり、日本は主権を回復する。当時の吉田内閣は、このすぐあとの5月15日に、イスラエルの独立を承認。この日、イスラエルは東京に、公使館を開設したのであった。
日本はしばらくトルコへの大使が、イスラエルへの公使の役割を兼ねていたが、1955年からテルアビブに公使館を開設。1963年に両国は、外交レベルを上げて、公使から大使を派遣しあうフルの国交が開始となった。ハイファにティコティン日本美術館は、このころの1960年に開設されている。
その後、日本は、石油輸入の必要から、イスラエルを敵対視するアラブ諸国との友好を維持しつつも、中東戦争の際は、基本的に中立の立場を維持した。しかし、1972年には、パレスチナ人を支持する日本人過激派、赤軍派によるテルアビブのロッド空港でのテロ事件が発生している。
2)2006年:パレスチナの経済自立に向けた開発支援
2006年、小泉総理の時に、日本は、パレスチナ人の社会的自立を目指して、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの4者による、ヨルダン渓谷社会経済開発計画を主導した。具体的には、エリコに農産加工団地(JAIP)や、エリコ周辺の観光回廊を作るなどとなっている。
www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/page25_001067.html
イスラエルは、パレスチナの経済が発展することは望むところなので、日本のこうした動きは、感謝していたようである。ただ、現地を見る限り、どれほどの効果があったかは不明。しかし、パレスチナ人たちの間で、日本の支援は、感謝をもって覚えられている。
3)東日本大震災の時のイスラエルからの医療支援
2011年3月11日に東日本大震災が発生すると、イスラエルは、世界で最初に医療支援チーム(医師14人、看護師7人)を日本に派遣。3月29日から4月10日まで南三陸町に病院を設立し、医療機器などはそのまま寄贈していった。
4)2015年:イスラエルとのビジネス関係本格始動
首脳としては、2008年にオルメルト元首相に続いて、2014年にネタニヤフ当時首相が来日して、故安倍首相と天皇にも面会している。その翌年の2015年1月には、故安倍前首相が、ビジネスマンたちを連れてイスラエルを訪問。両国の活発な貿易や技術協力が、実際に動き出した感じであった。
embassies.gov.il/tokyo/Relations/Pages/Basic-Data.aspx
ja.wikipedia.org/wiki/日本とイスラエルの関係#top-page
5)2021年日本からイスラエル投資額過去最高を記録:海外からの投資で日本が15.8%
この年、大阪に新しくイスラエル貿易事務所が開設され、イスラエルのスタートアップが紹介されるようになった。以後、日本からイスラエルへの投資が急速に増加し、2021年過去最高の29億4500万ドル(約3400億円)を記録した。
これは2020年の2.9倍にも及び、投資件数も前年から63件増えて85件であった。これは全世界からのイスラエルへの投資の15・8%を占めていたとのこと。投資ファンドも、NTT、ソフトバンクグループが参入している。
www.nikkei.com/article/DGXZQOGR12CFC0S2A110C2000000/
石のひとりごと
個人的には、日本とイスラエルの関係が進んでいくこと、防衛においても協力する動きを歓迎する思いである。
しかし、まだ憲法9条を維持している日本が、防衛のためには、先制攻撃を厭わないイスラエルと防衛で協力するということである。実際には、どのような関係になるのかがどうにも不明な感じがする。今回、ガンツ防衛相は、イスラエル軍関係者も同行させていたので、多少は軍事関係強化のイメージもなきにしもあらずである。
またガンツ防衛相が、自国の防衛は自国でする時代とはっきり述べていたこともまた、防衛をアメリカに依存する日本として、どうとらえたのかも、なんとなく違和感が残る。
世界の力関係が大きく変動する中、ヨーロッパやアメリカと違って、日本は、ロシアとも中国とも直接、隣接している。さらには、イランからの石油にも頼る国である。そうした中で、イスラエルの防衛相を迎賓として迎え、防衛における協力関係を確認したということである。
故安倍首相がイスラエルに来られた時、イスラム国が、日本人2人の身柄を拘束し、最終的には殺したという事件が発生したことを思い出す。イスラエルとの関係強化は、望ましいことではあるのだが、そうした副作用とか、将来の外交への影響とかも十分加味した方針であったのかどうかとも思わされる。
特に気になったのは、ガンツ防衛相と浜田防衛相が覚書に署名したということについて、イスラエルのメディアでは、この合意に署名という文言がトップに出てくるのに対し、日本の記事では、その文言を探してもなかなか出てこなかったのである。署名ということへの重要性がどのぐらい認識されていのだろうかとも気になった。
誤解なきように。筆者は、イスラエルと日本の関係強化はすばらしいことと考えている。最終的には主の祝福があることもわかっている。ただそのよきことともに、付随するかもしれない、危険性というものを、日本政府がどこまで覚悟しているのかということを懸念するという。。石のひとりごとである。