ネタニヤフ氏が連立交渉終えたと報告:来週(1/2)にも新政権就任見込み? 2022.12.24

ヘルツォグ大統領に、政権樹立みこみの電話をかけるネタニヤフ氏 リクード

ネタニヤフ氏:一応・・政府樹立の見込みはたったと大統領に報告

ネタニヤフ氏(リクード)は、連立樹立のための交渉期限であった22日0時のわずか12分前に、ヘルツォグ大統領に電話をかけ、交渉を終えて連立政権の形ができたと報告、国内外に発表した。順調にいけば、1月2日までに新ネタニヤフ政権が立ち上がる・・・みこみである。

まだみこみ・・と書いたのは、ネタニヤフ氏は確かに一応、政権樹立で予想与党参加党たちとは合意したようではあるが、まだ最終合意に署名した党はないのだという。今はまだ、細かい合意内容に交渉を続けているというのが現状なのである。

イスラエルから流れてくるニュースを読む限りでは、ネタニヤフ氏による新政権樹立はほぼ間違いないのか、まだひっくりかえる可能性はあるのか、どうにもはっきりしない、どう伝えたらいいのか困惑するといった難しさがつづいている。

時期政権と見られる政権が、イスラエル史上、比べ用もないほどの右派政権なので、いったいこれからどうなっていくのか、イスラエル国内でも困惑が拭い取れないということなのである。

新ネタニヤフ政権が国内外に及ぼしうる懸念

1)国内に関する物議

物議の要点は、①これまで以上の警察の権限を問題ある極右政治家に与えるみこみ、①宗教シオニスト政治家に西岸地区の入植地拡大政策を黙認するみこみ、③ユダヤ教宗教派にイスラエルの教育、IDを左右する権限を与えるみこみ(ユダヤ教正統派の教育支援倍増・従軍義務免除・LGBTQを認めないなど)

一言で言うと、これまでの左派右派共同の統一政権から、強硬右派政権に180度方向転換する様相にあるということで、特に、国内でのパレスチナ人テロリストの取り締まりが強化され、死刑もありうるようになり、西岸地区をイスラエルに合併する方向へ向かうという形である。

また、超正統派が権力を握る形であり、超正統派意外のユダヤ人をユダヤ人と認めないようになると、海外からイスラエルへ帰還できないケースが増えてくる。アメリカのユダヤ人団体は、新政権のあり方を固唾を飲んで注視している。

ネタニヤフ氏は、11月1日に行われた総選挙で、国会過半数議席となる64議席を獲得したが、この勝利は、極右政党オズマ・ヤフディとノアム派、やはり強硬右派の宗教シオニスト党、ユダヤ教政党(シャス党、統一トーラー党)の協力があってのことであった。そのため、新政権ではこれらの党が満足するポジションを与え、その主義主張が通るような法案を出すことまで受け入れなければならなくなっている。

さらには、これらの党の言うことばかりを聞くネタニヤフ氏の様子に、足元のリクード党内からの不満にも対処しなければならない。このため、期限までに連立を立ち上げられるのかといった先行き見通せないといったニュースも出ていた中での、今回の発表ということである。

www.timesofisrael.com/no-ban-on-racist-mks-annexation-yeshiva-funding-11-key-netanyahu-coalition-plans/

2)外交における懸念:時期政権はロシア寄りになる?プーチン大統領がネタニヤフ氏に祝電

ネタニヤフ氏がヘルツォグ大統領に、政権樹立の見込みを報告したその翌朝、プーチン大統領が、ネタニヤフ氏に祝いの電話をかけてきた。

プーチン大統領は、総選挙でネタニヤフ陣営が過半数の勝利を獲得した際にも、ネタニヤフ氏に祝電をかけていた。ネタニヤフ氏は12年以上も首相としてプーチンで大統領と向き合ってきた。二人の間には個人的な関係もあると言われている。

21日、ゼレンスキー大統領がアメリカを電撃訪問し、バイデン大統領と会談。アメリカは、ウクライナに、パトリオットミサイルを含む18億5000万ドル(2400億円)規模の武器供与する約束し、これからのウクライナ情勢のゲームチェンジャーになりかねない動きに出た。プーチン大統領はこれに反発し、対決する構えである。

こうした中、イスラエルに、国際社会が懸念する極右で、パレスチナ人に厳しい方針になりそうな政権、しかもプーチンよりとも考えられる政権になると、世界でのイスラエルの立場も微妙になってくる。ネタニヤフ氏が、プーチン大統領との個人的関係を用いて、ロシアとウクライナの仲介に出るのではとの見方もあるが、どうだろうか。新政権のあり方は、国際社会におけるイスラエルの立場にも影響してくる問題である。

www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2260T0S2A221C2000000/

www.timesofisrael.com/7-weeks-after-election-win-putin-finally-calls-to-congratulate-netanyahu/

なお、アメリカは、ネタニヤフ氏が、バイデン大統領とはライバルだった共和党の前トランプ大統領とかなり近い関係があったこと、逆に民主党のオバマ前大統領とは、明らかな不仲であったという現状がある。

しかし、ブリンケン国務長官が、ネタニヤフ氏に祝電を送り、「アメリカは、人ではなく、国の方針に基づき、イスラエルとの友好関係を維持する」と語っている。

www.timesofisrael.com/candid-conversations-with-israel-will-continue-blinken-congratulates-netanyahu/

ラピード首相:次期政権は民主主義を破壊すると批判

GPO

ネタニヤフ氏が大統領に、次期政権樹立に成功したと報告した直後、ラピード首相は、「この政府は、ネタニヤフ氏が考えたものではない。“彼ら”(右派とユダヤ教政党)だ。この政府は、危険で過激、無責任な政府になる。」と語った。

また、「次期政権は、民主主義にも法律にもコミットしていない。そのため、イスラエルの教育システムを堅持せず、超正統派教育への不平等な支援を行うだろう。

経済を失速させ、軍を政治利用することで、西岸地区は大暴発する。国際社会でのイスラエルの地位を低下させ、アメリカとディアスポラ社会との関係を崩壊させるだろう。」とも述べた。

ラピード首相は、右派で宗教的な政権になった場合、世俗派ががんばっているイノベーション、スタートアップの機運が低下するとの懸念も語っている。

www.timesofisrael.com/lapid-new-government-not-committed-to-democracy-dismantles-foundations-of-society/

石のひとりごと:クリスマスの夜に

ourists take pictures with the Christmas tree in Manger Square, Bethlehem, Saturday, Dec. 3, 2022. (AP Photo/ Mahmoud Illean)

日本では、記録的な大雪で北海道、東北、日本各地で被害が、深刻な被害が発生している。被害地域におられる方々の無事を心よりお祈りしたい。しかし、この寒波。アメリカでも警戒が広がっているという。異常気象という私たちにはどうしようもない、現実が目の前にある。

こうした中、今日は、日本ではクリスマスイブである。各地教会では今日、明日と、様々なイベントが企画されていることだろう。時差があるので、本家、西岸地区のベツレヘムで行われるクリスマスイブのミサは、日本の明日朝7時ごろだろうか。

一方、イスラエルでの今夜は、ハヌカの第7夜目で、明日が最終8日目になる。今年はしっかりクリスマスとハヌカが被った形である。したがって、この記事のような、政治的なことを考えている人は、日本でもイスラエルでも、ほとんどないと思われるが、とりあえず、おさえておく動きではあると思い、お伝えさせていただいた。

ところで、クリスマスは、サンタクロースの日ではなく、イエス・キリストが生まれた日である。

ベツレヘムのパレスチナ人で、オリーブの木でクリスマスの木彫りを掘るアーティストが次のように言っていた。「この時期、ベツレヘムに来る人々は、この日、赤ちゃんで、“笑顔”のイエス、マリアとヨセフの3人の木彫りを買いにやってくる。ちょっと複雑。皆この3人のことばかりに目を向けていて、十字架のイエスは見ないのだ。」と語っていた。

イエス・キリストは、救い主と言われる。なぜ救い主なのか?人は皆、罪を犯しているので、死んだ時に神の元へ帰れない、地獄へいかなければらならないという現状がある。救い主というのは、その罪の罰を代わりに受けるとして、あの苦しい十字架刑で死んでくれたのがイエスだからである。

さらに死んだだけで終わらず、3日目によみがえり、そのイエスに実際に会った人々がいた、証拠があると聖書は書いている。死に勝利したということである。

それから2000年経った今も、世界中がこれを信じているとうことに不思議を感じていただければと思う。これはイエスが天地創造の主ご自身であったからこそ可能なのではないだろうか。時間を超え、地域を超え、全ての時代の全ての人の罪をカバーできるのは、神ご自身でなければできないことだ。

だからこそ、そのイエスの身代わりを感謝して信じる者は、裁かれることなく、天におられる神の元へ帰れると言うことなのである。だから、救い主なのである。そのイエスが生まれた日を記念するのがクリスマスなのだ。

日本ではほとんどの人は、これをただの宗教の一つと考えている。危険な宗教と思っているかもしれない。なんと、なんと、もったいない。この救いは、神から私たちへのプレゼントなのである。

この記事とは全く関係ない話になってしまったが、どうか、今日、明日、お近くの教会に行ってみてはいかがだろうか。もしくは聖書を読んでみることをおすすめしたい。

今日ダビデの町(ベツレヘム)に、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ、主キリストです。(ルカの福音書2:11)

神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。(ヨハネ3:16)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。