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13日にイスラエルに到着し、48時間を過ごしたバイデン大統領。15日朝、西岸地区ベツレヘムでパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談し、午後にはサウジアラビアへと旅立っていった。
これに先立つ14日夜、サウジアラビアは、条件を満たす、すべての国(イスラエルを含む)の民間機が、サウジアラビア全土上空を通過することを許可すると発表した。
これにより、バイデン大統領は、イスラエルから、紅海に面するサウジアラビアの町、ジッダへ直行できることとなった。アメリカの大統領としては、初めてのことだという。
バイデン大統領の今回の中東歴訪での最大の目標は、イスラエルとUAE、バーレーン、モロッコからなるアブラハム合意の流れに、サウジアラビアも加わっていく足がかりを作ることである。その大きな一歩になりうると期待が高まっている。
サウジアラビアがイスラエル含む外国機の領空通過開放へ
サウジアラビアは、イスラエルと正式な国交がない。そのため、バイデン大統領一行を乗せたアメリカの飛行機が、イスラエルを出発して、ジッダまで直行できるのかどうか注目されていた。サウジアラビア領空を通過する必要があるからである。
これまでのところ、サウジアラビアは、イスラエルとUAEの旅客機が、両国の移動の際に、一部サウジ領空を飛ぶことを許可している。(地図)しかし、ジッダ(江海に面する南部の都市)を含む全土領空については、まだ許可を出していない。
サウジアラビアが、用件を満たすすべての国の旅客機が領空を飛ぶことを許可すると発表したのは、バイデン大統領到着の24時間前であった。
これにより、バイデン大統領は、アメリカの大統領専用機エアフォースワンから乗り換えることなく、イスラエルを出発し、サウジアラビアに入ることが可能になった。
おそらく、今回のバイデン大統領中東訪問計画が成立した時点で、今回の発表になることは、もう決まっていたのだろうと推測されるところではある。
これにより、今後、インドやタイ、中国、韓国や日本(?)など東アジアからの旅客機が、サウジアラビア上空を突っ切って移動が可能になる。非常に画期的で、歴史的な変化である。
イスラエルは、イスラエルにいるイスラム教徒が、サウジアラビアのメッカやメディナへ直接旅行できるようにとの要請をサウジアラビアに出している。これについては、まだ明確にはされていないが、今後、サウジアラビアが、移動の要所として開かれていく可能性がみえはじめている。
エジプトが紅海の2島をサウジアラビアへ返還の見通し
サウジアラビアが領空通過の開放を受け入れた背景には、水面下で、エジプトが、紅海に浮かぶ2島、チラン島とサナフィル島を、サウジアラビアに返還する交渉が成立する方向にあることがあげられている。
2島は、アカバ湾と紅海の境目にあるチラン海峡に位置しており、貿易や治安維持においても重要な位置にある。メディアによって説明が若干ちがっているのだが、今この2島を管理しているのは、エジプトではあるが、イスラエル、アメリカも治安関係者を置いているもようである。
Times of Israelによると、この2島は、1979年の合意の際に、イスラエルからエジプト引き渡された。しかし、完全撤退ではなく、治安関連の拠点の一部は、残されていた。アメリカも治安維持のための監視的な部隊を置いていたようである。
しかし、今、サウジアラビアからシナイ半島への橋を建設する案があるなど、2島をサウジアラビアへ返還する交渉が進められていた。その経済効果は大きいとみられ、イスラエルは、この2島がサウジアラビアに返還されることについては、賛成を表明したとのことである。アメリカも撤退するとのことで、エジプトが、サウジアラビアに返還に合意する流れになっている。
もし、これが実現すれば、アメリカと同盟国イスラエルと、アブラハム合意の国々、エジプトヨルダンにサウジアラビアが加わっていく流れの大きな一歩になりうる。
今回、バイデン大統領がサウジアラビアにおいて、この2島について、また今後について、サウジアラビアとどこまで合意が引き出せるか、注目されている。