アメリカとイスラエル同盟再確認:ラピード首相と会談・ヘルツォグ大統領訪問・2I2Uサミット 2022.7.15

https://jiss.org.il/en/lerman-toward-new-model-u-s-israel-relationship/

13日から48時間という短い間に、バイデン大統領は、アメリカとイスラエルとの同盟関係に変わりがないことを、かなりアピールしていった。

これを土台に、15日からは、サウジアラビアを訪問し、GCC+3(湾岸諸国とエジプト、ヨルダン、イラク)の首脳会談に出席する。イラン(背景ロシア)に対抗しうる強力なブロック体制を確立するためである。

以下は短い間にバイデン大統領の動きである。79歳と高齢だが、時差ぼけもまったく加味されない、ハードなスケジュールであった。

バイデン大統領とラピード首相の2者会談:エルサレム宣言に署名

14日、バイデン大統領はラピード首相と2者会談を行った。緊張するイラン情勢など、イスラエルの治安に関する問題を話し合い、その後、共同で記者会見を行った。

ラピード首相は、「外交では、イランの核兵器開発を止めることはできない。イランには、もし核兵器開発を続けたら、非常に重い支払いをすることになるという軍事的な脅威が必要だ。」と主張。アメリカは、具体的な軍事的脅威を提示するべきだとの意見を表明した。

エルサレム宣言 バイデン大統領とラピード首相の署名

一方、バイデン大統領は、「あくまでも外交で解決できると信じる。」と表明し、2人は、あえて意見の違いがあることを明らかにした。

これは、今回、ラピード首相が、バイデン大統領に方針転換を説き伏せられなかったということを意味する。

しかし、両首脳は、「イランが核保有国に絶対にならないようにする。」という点については合意したとして、それを明記したエルサレム宣言にそろって署名した。意見は違っても、目標は同じだという姿勢を記者団の前に明らかにしたということである。

しかし、実質的には何も動かないということなので、共同宣言だけに終わったことに、危機感をつのらせる記事もある。

またこの首脳会談では、ラピード首相から、サウジアラビアに向かうバイデン大統領に、イスラエルは、エジプトがチラン島とサナフィ島をサウジアラビアに返還することに合意するという意向を伝えたとのことである。

サウジアラビアが、条件があうなら、すべての国(イスラエル含む)の民間機が、領空を通過することを容認するとの画期的な発表を行ったのは、この後のことであった。

この他、ラピード首相は、サウジアラビアでの中東首脳会議に出席するバイデン大統領に対し、イスラエルからのメッセージを首脳たちに十分伝えてほしいと語った。

サウジアラビアでの会議の前に、イスラエルの考えを、バイデン大統領に直接伝えることができたことは、イスラエルにとっても有難いことであったと思われる。

www.timesofisrael.com/diplomacy-wont-stop-iran-from-going-nuclear-lapid-tells-biden-in-press-conference/

ヘルツォグ大統領官邸で名誉メダル贈呈

ラピード首相との会談の後、バイデン大統領は、ヘルツォグ大統領官邸を訪問。官邸では、イスラエル人の子供たちが、イスラエルとアメリカの旗を振る歓迎を受けた。

また、両国の友好関係に感謝して、ラピード首相やブリンケン国務長官らが見守る中、ヘルツォグ大統領から、バイデン大統領に、栄誉のメダルが授与された。

ヘルツォグ大統領は、コロナ危機、ウクライナ危機、気候変動など世界が不安定になる中、バイデン大統領のリーダーシップの元、中東地域が一致して、対策を発進をしていくことが可能になるとして、バイデン大統領の働きに期待を表明した(次項記事)。最後に主がアメリカとイスラエル、両国を祝福してくださるようにと祈りで締めくくった。

バイデン大統領は、イスラエルへの深い愛を表明し、イスラエルは一人ではないと語った。またヘルツォグ大統領を、ホワイトハウスへ招待した。

www.timesofisrael.com/in-warm-address-alongside-herzog-biden-says-israel-will-never-be-alone/

2I2Uサミット:人類が直面する深刻な課題への対応

バイデン大統領は14日、イスラエルから、ラピード首相と共に、オンラインで、2I2U(イスラエル、インド、UAE,アメリカ)サミットに出席した。

2I2Uとは、イスラエル(ラピード首相)、インド(モディ首相)、USA(バイデン大統領)、UAE(ザイード大統領)のことで、それぞれ、イノベーションで世界に、新しい技術を発信している国々である。

4首脳たちは、国際的にも解決が、急がれる重要な課題、食料安全保障、水、エネルギー、運送、宇宙問題などについて、実質的な解決を提供するための実質的なシステムや投資について話し合った。

この会議に、バイデン大統領が、イスラエルにおいて、ラピード首相と共に出席したことで、ある意味、イスラエルの株が上がった形である。

 

UAEは、このプロジェクトの一環として、インド各地に、食料廃棄削減、淡水の貯水、再生可能エネルギーの利用などを行っていく拠点を作る。そのために20億ドルを投資する。

Avishag Sha’ar-Yashuv (GPO)

アメリカとイスラエルは、今、食料供給の不安定に陥っている南アフリカや中東諸国に対し、それぞれの国の企業が、食料保存などの技術を提供していくことを奨励していく。

UAEの企業は、そのアメリカとイスラエルの推奨に従い、さらなる投資先を探していく。

またこのプロジェクトでは、太陽光発電など、脱炭素開発でクリーンエネルギーに取り組み、2030年までにインドで、500GWの非化石燃料の達成を目指す。アメリカは、これに3億3000万ドルを計上するみこみで、UAEも、投資を検討する。

こうした中、4首脳は、今年3月にイスラエルで行われたネゲブサミット(イスラエル(ラピード外相)世話係、UAE、バーレーン、モロッコ、エジプト、アメリカ)の重要性を上げ、イスラエルが、中東地域にもっと受け入れらえることの重要性を確認したとのこと。

なお、ネゲブサミットでは、パレスチナ自治政府はまったくおいてきぼりであったことが指摘されていた。今回の2I2Uでも、その印象が再び強まった形である。

www.timesofisrael.com/israel-india-us-uae-unveil-joint-food-security-energy-projects-at-virtual-summit/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。