記憶の継承と世界への発信:エルサレムのホロコースト記念館ヤド・ヴァシェム 2022.1.29

ヤド・ヴァシェム(エルサレム)Wiki

エルサレムにあるヤド・ヴァシェムは、まずはユダヤ人自身がホロコーストを覚え、サバイバー証言を記録している。サバイバーが皆恒例となり、もうすぐすべていなくなることに備え、被害者の身元確認から、記憶が失われないよう、歴史的事実の研究や、記憶継承のための試みが行われている。

サバイバーや犠牲者の詳細や資料を集めて、その名前や家族、遺族の確認を行っている。これまでに約480万人の名前が明らかになったが、大虐殺の中で殺されたまま、まだ名前もわからない人がまだ100万人以上いる。

今でも、離れ離れになり、死んだと思っていた家族が再会することもある。世界中に住む遺族たちが、犠牲になった家族を思い、ここで孫やひ孫の成人式を行うこともある。

当時、自分の命をかえりみずにユダヤ人を助けた異邦人は、義なる異邦人党呼ばれる。助けられたユダヤ人の証言や資料を集め、分かった人には感謝を表明するとともに登録して、その行動を覚える働きもしている。

*義なる異邦人

今生き残っているサバイバーはおそらくは、なんらかの形で義なる異邦人に助けられていると考えられている。ヤド・ヴァシェムではユダヤ人自身の捜索願いを受けて、毎年500人ほどの義なる異邦人を探し出して承認する作業を続けている。これまでに2万8000人(50カ国)になった。まだまだ埋もれている人がいるとみられている。*この中の一人が杉原千畝

www.haaretz.com/jewish/yad-vashem-launches-website-to-commemorate-righteous-among-nations-1.10563987

このように、ヤドバシェムは、まずはユダヤ人にとっては非常に大事な機関で、そのビジョンは、まだ戦争が終わる前からすでにユダヤ人の中にあり、まだイスラエルが建国する前の1946年、テルアビブにオフィスを立ち上げている。

独立して5年後には、ヤドバシェム法という法律を制定して活動を本格的に開始。1957年にはミュージアムを、エルサレムの記憶の丘という、独立の立役者の政治家の墓地、またそれに隣接する戦没者墓地に並ぶような丘に建設した。国家の基盤でもあり、イスラエルを訪問する首脳たちはみな、ヤド・ヴァシェムを訪問している。

ヤド・ヴァシェムは、国家の費用だけでなく、主にユダヤ人たちの献金で成り立っているが、反ユダヤ主義の歴史に大きな責任を負うクリスチャンたちの献金も受け入れている。しかし、コロナ禍で、記念館に来る人が激減したこともあり、経費に苦心しているとみられていた。

政府は今年、国際ホロコースト記念日を前に、920万ドル(約10億円)をヤド・ヴァシェムに計上したと発表した。

www.i24news.tv/en/news/israel/society/1642966756-israel-adds-9-2-million-to-yad-vashem-museum-budget

*ヤド・ヴァシェムのミュージアム・バーチャルツアー(日本語)

コロナ禍で、海外からユダヤ人や観光客も来れなくなっていることから、ヤドバシェムでは、ミュージアム内部のバーチャルツアーを提供している。日本語でも提供できるようになった。興味ある方は、ヤド・ヴァシェムのホームページから、もしくは、筆者に連絡を。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。